歩んできた道を選び直したいという思いと、選んで失敗したら積み上げたものが消えるのではという不安感がぶつかる分岐点に現れる「40歳の壁」。『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』の著者・ワーママはるさんこと尾石晴さんが考える壁の乗り越え方とは?(全3回の1回目)

 

尾石さんは音声メディア「Voicy」で4000万回再生超えを記録するトップパーソナリティの一人。40歳の壁には、キャリアに関することだけでなく、「夫婦の壁」もあるそう。夫婦の不満も積み上がる時期ですが「モラトリアム期間と考えて、決断せず、夫婦お互いの情報を収集する期間」にすると言います。

 

40歳の壁は「無理」が積み上がり、ぶつかるもの

──  そもそも40歳の壁ってどんなものだと思われますか。

 

尾石さん:「40歳の壁」は、急に現れるのではなくて、30代のときのライフイベントを通じて、できてきた石が40歳周辺で、「結構これは分厚いぞ」と気づく感覚かと思います。ライフスタイルの変化に応じ、それまで無理してやってきたものが、無理がきかないものとして見えてくるのではないでしょうか。

 

壁がいつ現れるかも、人によるんです。30代後半や40代前半で壁を感じる方もいらっしゃいます。多くの人は40歳前後までの人生で、結婚や出産などライフスタイルの変化が起きることで、思い通りにいかなくなることが増えてくる。これが、多くの方がぶつかっている「壁」だと思います。

夫婦関係の壁は「モラトリアム期間」と捉えて

── 夫婦関係の壁もそこには含まれると著書で書かれていらっしゃいました。

 

尾石さん:私は質問箱を開いていて、お悩みをいろんな方からいただいており、これまでその回答をVoicyなどでしていて、1000件以上の相談に乗ってきました。質問内容を見ていると、夫婦関係のお悩みが多いんです。でも、私たちのような共働き世代はものすごく忙しい。夫婦間のモヤモヤのメンテナンスまでしていると、正直、生活は回りません。

 

だから、今は「モラトリアム期間としてお互いの情報収集をする期間にしませんか」というご提案をしています。子どもが小学生ぐらいになるまでは夫婦間の間に積み上がってきた「石」、つまりモヤモヤする気持ちを巨大化させないよう、その都度、話すなどメンテナンスはする。しかし、離婚など決定的な決断はしない。視座を高くして、長期スパンで相手との関係を見ることが、40歳の壁に当たったとき、大事なことかなと思っています。

 

── 夫に「家事手伝わない、仕事ばかりしていてずるい、不満がある、離婚だ!」となるのではなく、「今はモラトリアム期間。ちょっとこういうことがあったなと記憶しておこう」と考えるんですね。

 

尾石さん:そうです。たとえば、家事を手伝わない、仕事ばかりでほとんど家にいない夫だと、石(不満)がたまりますよね。うちもワンオペです。では、夫は家にいない代わりに何を出すのか、そこが大事ですよね。うちは代わりにお金を出してもらい、家事代行を頼んでいました。大切なのは、「私はあなたが仕事でいない間、こういうことを家庭のためにしている」ということを伝えること。そうしないと相手はこちらが何をしているかわからないので。

 

そのうえで、「あなたは家族の一員として何が出せますか」と聞いてみてはどうでしょう。「俺は仕事が忙しいから無理」と言ってきたとしたら、この人は家族を構築する意思がないということだと思うんです。でも、そこですぐ離婚していたら大変だから、その言葉を胸に刻んでおく。自分の思い、言うことはちゃんと言う、でも相手から考えが返ってこなかったら記憶しておいて、情報収集期間だと思っておく、という考え方です。

 

夫から意見が返ってこないときは、夫本人にどうしたらいいか知恵がない場合もあります。うちの場合は、私が提案して「じゃお金を出して。家事代行を頼むから」と言ったら了解してもらえました。いちばん良くないのは何も言わずに、我慢しておくことです。夫に「金なんてない。知らん」と言われた場合はそれも記憶しておきましょう。離婚がチラついてもすぐには決断しない。もう少し子どもが大きくなって、自分の収入をしっかり確立してから考えてもいいんじゃないかなと思います。

小1の壁に重なる時期でも

── 夫婦の石がたまる時期だからこそ、決断せず、モラトリアムと考えるんですね。子どもが小学校1年生になる、「小1の壁」に当たる人も多い年代だとも言われています。

 

尾石さん:ええ、保育園ってありがたいことに、とても手厚いんですよね。延長保育もあるし、ご飯も食べさせてもらえます。でも、小学生は自分で学童に行き、帰ってくる。親は宿題をフォローしなくてはならない。土日どうするかの問題もあります。そうなると、1年目は保育園より手がかかるんです。そこを壁と感じる方も40歳前後の方には多いと思います。

 

── どう乗りきるのでしょう。

 

尾石さん:私の場合ですが、考え方として、子どもに寄り添ったほうがいい期間だと思っています。子どもに寄り添うために、夕方6時ごろからご飯を食べさせて、宿題をみて、彼らも疲れていると思うので、話を聞きました。

 

特に小学校1年生の1学期は大事だと思っていて、家事をどう減らすか、夫とどう分担するかを話していきました。そのうえで、アウトソーシングできるものがあればしました。ご飯を作る時間がないなら、その時間はご飯は作り置きにしたり、掃除の時間がないなら、シルバー人材センターを頼んだりとかもできるかもしれません。そういう戦略的に乗り越えることが大事になります。夫としっかり話し合って壁を乗り越える必要がありますね。

 

PROFILE 尾石 晴さん

外資系メーカーに16年勤務。長時間労働のなか、子持ち管理職を経験し、ワンオペ育児の合間に音声メディア「Voicy」で「ワーママはる」名義で発信をスタート。SNSの総フォロワー数は17万人に上る。文筆業なども行い、2020年に会社員を卒業して使徒用途を決めない学びの休暇、サバティカルタイムに入り、2022年からは大学院に進学している。

 

取材・文/天野佳代子 写真/PIXTA