「ずっとひとりで遊んでいる子どもでしたね」と話すのは、芸能活動10周年を迎える三戸なつめさん。モデルや歌手、女優として活躍し、ファッションやメイクなどを発信しているSNS、YouTubeチャンネルでのビデオブログ「なつめと、」も人気です。子ども時代のことやポジティブになれた理由、結婚観についてなど、お話を聞きました(全3回中の2回)。
泥団子や人形遊び、秘密基地もひとりで
── 小さいときは、どんなお子さんでしたか?
三戸さん:家の近所には同級生がいなかったせいもあって、泥団子をつくったり、人形遊びをしたり、マンションの駐車場に秘密基地をつくったり、ひとりでできる遊びを飽きずにやっていました。
小学校高学年くらいには『名探偵コナン』のコナンくんに憧れて、スケートボードを始めたのですが、それもひとりで練習していましたね。
土・日の休みは、姉が家にいたので一緒にホットケーキをつくるとか。
── 絵が得意ですけど、そのころは描いてなかった?
三戸さん:絵は物心つく前から、気づいたら描いていました。
祖母が週に1度、絵画教室を開いていたんです。その場に一緒にいたのですが、大人が題材にするような花などは興味がなくて、人物を描くのが好きでしたね。小学1年生から漫画雑誌の『ちゃお』(小学館)を買いはじめて、好きなキャラクターをよく描いていました。
── おばあさまの家が、近所にあったのですね。
三戸さん:父が会計士で単身赴任していた時期もあったし、母は美容師でショーの仕事もあって出張が多く、両親とも不在がちだったので、ほぼ近所の祖父母の家で暮らしていました。
祖母も美容師で、絵画教室は美容室の2階でやっていたのですが、なぜ絵画教室をやっていたのかは、そういえば聞いたことがないですね(笑)。
漫画の世界の人間じゃないか確かめていた
── 性格は、今とあまり変わらない感じでした?
三戸さん:すごくネガティブでした。今でも鮮明に覚えている場面があるのですが、祖父の部屋でコタツに入って、アニメの『ドラゴンボール』シリーズを観ていたんです。
クリリンがフリーザに浮かされ、バーンって爆発して死ぬ…。そのシーンがすごく衝撃的で、小学校低学年くらいのことでしたが、そこから「自分も死んだら、パッと消えてしまうのか?」など、死についてすごく考えるようになりました。
「自分は漫画の世界の人間じゃないか?」というのも心配で…。漫画ってカラーでも輪郭が黒い線で描かれるから、手を見て黒い線で描かれていないか、めちゃくちゃ確認していましたね。
── クリリン爆発のシーンがショックで、アイデンティティが揺らぐというか、自己の存在を疑ってしまうような、衝撃があったわけですね。
三戸さん:とにかく「死」が怖い。死んだらどうなるのか?をすごく考えてしまって。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んで、「いいことをしなきゃいけない。悪いことをしたら、地獄に行くんだ」とか、そういうことばかりを漠然と考え続けていました。
祖父の部屋の様子まで、今もはっきり思い出せるくらい強烈に刻まれている記憶だし、子ども時代にネガティブだったことを遡ると、この爆発シーンに行きつきます。現実のことじゃないし、アニメのなかのことだけど、クリリンの死がすごく身に迫ったんだと思いますね。
── 小学校低学年で死について考えたり、自分の存在を不安に思ったりだと、なかなか前向きに考えにくい。
三戸さん:全然しんどくないのに、すぐ保健室に行きたがる子。ちょっと嫌なことがあると、もう悲劇のヒロインのように「私は不幸」みたいな感じなっちゃう。
本当に、すごくネガティブでしたね(笑)。
ポジティブに考えられるようになった「気づき」
── 今はさまざまなことに前向きに取り組んでいて、ポジティブな印象です。
三戸さん:本質的には今もネガティブだと思いますが、ものごとを楽しむ方向に、ポジティブに考えられるようになりました。
悲劇のヒロインのようにシクシク泣いていても、幸せになれない。漫画と違って現実では、シクシク泣いていたら「奇跡が起きる」なんてことはない。子どもながら冷静に振り返って、「幸せになるような奇跡が起きたことないな」と気づいたんです。
それからは悲劇のヒロインを見て、反面教師というか「こうはならないぞ」と思うようになりましたね(笑)。
── 気づいただけでは、なかなかそれまでの考え方を変えるのは、難しい人も多いですよね。ちなみに変わったのは、いくつくらい?
三戸さん:10代になってからですね。自分で気づいたこと以上に、私は友達にすごく恵まれたおかげだと思います。
なにか悪いことが起きたとしても、笑い飛ばしてくれたり、笑いに変えてくれたりする友達がたくさんいて。嫌なことも笑いに変える友達をカッコイイと感じたし、今も暗い気持ちになったときは、友達が道標のように照らしてくれるんです。
そのおかげで、自分で自分の機嫌をとる方法や、ポジティブに考えるコツをつかめた気がします。
結婚願望はなくても「寂しい」と感じること
── 自分で自分の機嫌をとれるという面も大きいかもしれませんが、YouTubeチャンネルなどでも「結婚願望はない」と話しています。
三戸さん:落ち込んだら友達に会うなど、自分から動くことで、マイナスな気持ちを解消するようにしています。
そんな感じだとどうしても、「ひとりがラク」って思ってしまうところがありますね(笑)。
── どんなときに「ひとりがラク」って気分になります?
三戸さん:家でリラックスして、ソファでダラダラしているとき「ひとりがいいや」って気分になります。
ただ二人姉妹で姉が結婚してもう三戸ではなくなり、今、三戸姓なのが母と私の二人だけ。私で三戸家が途絶えてしまうのは、「寂しい」と感じているんです。
父が亡くなったとき「お墓はいらない。寺に散骨してほしい」と言って、その通りにしたので三戸家の墓はなくて。私が死んだら世話をする人がいなくなるから、お墓がほしいというわけでもないのですが、そういう形あるものを、残したいという気持ちはありますね。
PROFILE 三戸なつめさん
1990年奈良県生まれ。関西でモデルとして活動後、2013年上京しモデル、歌手、女優、絵本作家として活躍。YouTubeチャンネル「なつめと、」ほか、SNSでさまざまな情報を発信。今年芸能活動10周年を迎える。
取材・文/鍬田美穂 撮影/二瓶彩