個性あふれる5人家族の日常を描いたマンガ、『ご成長ありがとうございます』シリーズ。2020年に単行本化され、先日待望の5冊目『おさわがせ編』が刊行されました。朝ドラ女優・永野芽郁さんもファンだという作品の魅力は、日常を幸せな笑いに昇華させる作風。秘訣は、作者・三本阪奈さんの日々の人間観察にあるようです。(全2回中の2回)

子どもの失敗は手出しせず観察する

── お子さんの失敗を独自の視点で「幸せな笑い」に昇華されています。失敗の途中でつい口や手を挟んでしまうことはないのでしょうか?

 

三本さん:子どもの失敗には口や手を出さずに、しばらく観察しますね。たとえば、子どもが公園で転んだら、「泣いちゃうかな?好きな女の子が近くにいるから、1人で立てるかな?」って、しばらく見ています。

 

── そうしたとき、周りの視線が気になる保護者も多いと思います。三本さんは、周りの視線は気にならないですか?

 

三本さん:周りの視線が気になる気持ち、めっちゃわかります。ただ、昔からつい人間観察してしまうタイプで、叱るより観察がまさってしまうんですよね。

 

普段から自分の子どもに限らず人間観察しちゃうんですが、周りの視線を気にして子どもを叱るお母さんもよく見かけます。

 

── 自分がそうなのでドキっとします。周りを気にしていること、バレてますか…?

 

三本さん:バレてますね(笑)。そんな場面に遭遇したときは「あぁ、きっと周りを気にして叱ってるんやな…気持ちわかるで」と共感してます。

 

── よくある光景ですが、三本さんの頭のなかではそんな観察が繰り広げられているのですね…。

 

三本さん:他人の視線を気にして叱っているのって意外に周りからはバレてます。だからそんなに周りに気を遣って子どもを叱ることはないのかなって思います。

 

もちろん、自分の子どもが人に迷惑をかけるようなことをしたら叱って教えないといけませんが、「よそ見したら転ぶ」とか、身をもって経験しないとわからないこともあると思うので。できるだけ口や手は出さずに見守っていきたいと思っています。

 

自身がラーメンに悪戦苦闘した様子も漫画に (c)三本阪奈/新潮社

子どもの優しさを見逃さないために

── 人間観察が好きだからこそ、お子さんのさりげない優しさに気づいて、作品に表現できるのかもしれないですね。

 

三本さん:いつも子どもを観察していますが、いいところってたくさん見逃してしまっている気がします。

 

あと、子どもの優しさを、うまく受け取れないときもあって。たとえば、子どもから似顔絵や手紙をもらったけど「いま手が離せないのに、ちょっと面倒やな」っていうこと、ありませんか?

 

── あります…!そんなときはどうされていますか?

 

三本さん:自分にスイッチを入れて、めちゃくちゃ喜んで褒めて、抱きしめます(笑)。「もっと褒めてあげればよかった」っていう後悔をしたくないので、めっちゃ頑張って切り替えるんです。難しいときもあるんですが、できるだけ子どもの優しさは素直に受け取りたいなと思っています。

「家事も運動も苦手」多忙な日々で意識すること

── 多忙な日々だと思いますが、仕事と家庭の両立は、どうされていますか?

 

三本さん:マンガは、いちばん下のユキが幼稚園に行っている14時半までに描いています。終わらなかったら、子どもたちが寝た後に描いていますね。

 

家事は、夕飯作り以外は手を抜いています。洗濯物は取り込んだ後、畳まず置いたままになることも多いですが、「できるときに畳む」と割りきっています。掃除も簡単に済ませられるように、できるだけ物を減らしたり。

 

苦手なことは苦手だと割りきって、できるだけ簡単に済ませられるように工夫していますね。

 

── 自分のために意識していることはありますか?

 

三本さん:私の場合、放っておくと1日中家でマンガを描いて、全身バキバキに凝り固まってしまうので、1日1回は外を散歩するようにしています。外に出るだけで気分や体調がよくなります。

 

運動は苦手なのでジム通いや筋トレは無理だし、家事も得意じゃないので掃除で体を動かすとかも考えられなくて。だからちょっと遠くのスーパーまで歩きながら、人間観察しています(笑)。

 

家族以外の観察はいい気分転換になります。そういえば学生時代は非の打ちどころのない友達をよく観察していました。可愛らしい仕草や、人知れず努力しているところを発見するたび「可愛い!」と、ときめいていました(笑)。

 

体調を崩しそうなときは、ゆっくりと1人でお風呂に入ります。お母さんにとっても、1人で何も考えずにぼーっと過ごす時間は大事だと思います。

日常のひとコマに笑顔になってもらえたら

── 2019年にインスタに投稿し始めた5人家族の日常マンガが、4年で5冊の単行本を出版するまでになりました。読者に伝えたいことはありますか?

 

三本さん:4年前にインスタを始めてから、老若男女問わずフォロワーさんが増えて、本当にありがたいなと思っています。

 

なかでも、同年代の30~40代の女性のフォロワーさんが多いんですが、更新がいつもより少し遅くなったときも、「三本さんのペースで更新してくださいね!」とか、「今日も笑わせてくれてありがとう」とか、気遣い溢れるコメントが多くて励まされています。

 

毎日、「わが家の日常のひとコマに共感したり、笑ったりしてくれたらいいな」と思いながらマンガを描いています。離れて暮らす家族やご自身の小さな頃を思い出して、懐かしむきっかけにもなれば、すごく嬉しいです。

 

PROFILE 三本阪奈さん

関西在住、3児の母。2019年1月より5人家族の日々を描いたコミックエッセイをInstagramに投稿、たちまち大人気に。2020年2月よりWEB漫画サイト「くらげバンチ」で連載開始、『ご成長ありがとうございます~三本家ダイアリー〜』(新潮社)として単行本化。最新作はシリーズ5冊目の『ご成長ありがとうございます おさわがせ編』。 

取材・文/笠井ゆかり