今回は、発達障害のお子さんを育てていらっしゃる親御さんからのご相談です。学校の先生と面談した際に中学受験を勧められ、お子さんの小学校卒業後の進路について悩んでいるそうです。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生がアドバイスします。

【Q】発達障害の子に中学受験を勧められました…

小学校3年生の男子の母です。子どもが発達障害で、学校や学校の行事に参加するのを渋りつつも、なんとか通っている状況です。学校の先生との面談で「公立の中学はなかなか厳しいし、ちょうど思春期の時期ですし、もしかすると不登校になっちゃうかも。私立の受験も考えたほうがいい」とやんわりと言われました。

 

現在、息子は学校のテストの成績はいいのですが、テストの点数よりも勉強への積極性や意欲などが評価されているため、通知表の評価はよくありません。同様に、中学に入ると、内申点があるから高校受験で不利になるのかなとも感じています。発達障害の子が中学受験をするメリットがあれば教えてください。

 

「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」P1
「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」(1/7P)

 

「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」P2
「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」(2/7P)※漫画の3P以降は本文の後に掲載しています

なぜ学校の先生は「私立受験」を勧めたのか?

ご相談者様は、学校の先生のアドバイスにびっくりされたと思いますが、私は親身な先生だと感じました。

 

実は、公立校は「子ども理解」のレベルが自治体によってだいぶ異なります。心理学やコーチングなどをきちんと勉強するなど、アップデートを怠らない先生や、見識の高い首長あるいは教育長がいる地域もあれば、内申点で子どもたちを縛ることに疑問を持たない不勉強な人ばかりが集まる地域もあります。残念ながら、居住地域によって当たりはずれがあるのです。

 

そのため、発達の特性が強い人の凹凸を受け入れ、「得意なことがあるのだから、苦手な部分はそんなに頑張らなくていいよ」と、応援するスタンスで関わってくれる公立校もあれば、古い教育観で抑え込み、マイナスの評価しかできない公立校もあります。

 

こうしたなか、ご相談者様のお子さんが通う学校の先生は、「この地域の学校は凹凸を理解してくれない可能性が高いですよ」と正直に教えてくれたわけです。立場上言いにくかったと思いますが、お子さんの数年後を考えて伝えてくれたのではないでしょうか。

 

選択肢として私立中学校の受験まで勧めてきたということは、学区域の公立中学校には、お子さんの不登校がイメージできてしまうほど、頭の固い(古い)校長や教頭がいるのかもしれません。小学校3年生は、受験勉強を始めるのにもちょうどよいタイミング。それも踏まえて助言してくださったのだとしたら、かなり親切な先生です。

中学受験のメリットは「特性に合った学校」を選べること

発達特性が強い子にとって、私立中学校を受験することは、自分に校風が合った学校を選べるという点が大きなメリットだといえます。

 

テストの点数はよいけれど、積極性や意欲などが評価されにくいとのことですが、お子さんにはASD(自閉スペクトラム症)の傾向があるのかもしれませんね。仮にこだわりが強いなどの特性があるなら、その特性が生きる学校を選べばいいのです。そういった私立中学校は全国にあります。

 

突出して得意なことがあるのなら、一芸に秀でていることを推奨する学校が合うかもしれません。あるいは、公立校のように何事もまんべんなくできることを要求する学校であっても、個別相談などのサポートが充実していて、ゆるやかに寄り添ってくれる学校もあります。

 

もうひとつ、受験を経て入った学校は、知的レベルや知的関心の度合いが似た子が集まっていることもあり、理解し合える友人と出会える確率が高く、居場所を見つけやすいというメリットもあります。公立中学校は多様性に富んだ環境で生活できる点が大きなメリットではありますが、特定ゾーンの強みがある子は逆に疲れてしまう場合があります。

 

また私立中学校は、内申点でレッテルを貼られる期間がないぶん、のびのびできるでしょうし、中高一貫校なら6年間、大学の附属校なら10年間という単位で親御さんもゆったりお子さんの成長を見守ることができます。

 

そんなふうに「特性に合った学校を選んだほうが、息子さんのよさが生きるのではないか」と考え、学校の先生も受験を勧めてくれたのではないかと思います。

 

もちろん、必ず中学受験をしなければいけないということではありません。ただ、公立中学校を検討するのであれば、学区域の中学校について、いったいどういう子が潰されてしまうのか、どういう子が活躍して楽しく通っているのかといった実態をお調べになることをお勧めします。

 

地域によっては越境入学も可能なので、居住する自治体の公立中学校の入学条件なども調べてみるとよいでしょう。小学校の先生や教育委員会などを通じて中学校の先生を紹介してもらい、早めに相談しにいくなどの環境づくりも取り組めることかと思います。

 

そのうえで、「これは無理!」と思ったら、中学受験を考えるとよいのではないでしょうか。今回のお話が、お子さんに合った環境選びの参考になりましたら幸いです。

 

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「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」(3/7P)
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「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」(5/7P)
「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」P6
「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」(6/7P)
「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」P7
「発達障害の小3息子に『中学受験を勧めてきた教師』の真意」(7/7P)

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!