クラフトビール「よなよなエール」が実施のサービス「隠れ節目祝い」が話題に。サービス誕生の背景について、広報担当者のジンさんと企画責任者のまるちゃんに聞きました。

「彼氏卒業」「裸眼卒業」などさまざまな節目をお祝い

──「卒乳」や「イヤイヤ期卒業」など、個人的な節目にスポットライトを当て、応募した人に卒業証書付きのビールをプレゼントするというサービス「隠れ節目祝い by よなよなエール(以下、隠れ節目祝い)」(2023年12月まで応募可)が話題です。この企画が生まれたきっかけを教えてください。

 

よなよなエールの期間限定サービス「隠れ節目祝い」。よなよなエール2缶ビール2本と卒業証書が付いてくる
よなよなエールの期間限定サービス「隠れ節目祝い」。よなよなエール2缶と卒業証書が付いてくる

まるちゃん:弊社は2007年からクラフトビールの「定期便」を実施しているのですが、お客さまから「妊娠したので解約したい」とご相談をいただくことがあって。そのたびに、「おめでとうございます!」と解約をお受けしてきましたが、「何かできることはないかな」と社内で話題にはしていたんです。

 

それが今回の企画につながりました。「卒乳」は、お酒を控えていたママさんがまたお酒が飲めるようになる大きな節目ですし、「卒イヤイヤ期」とか「卒弁(お弁当)」とか、それぞれの節目をお祝いできたらいいな、と。

 

「卒乳してビール飲めるね」セット。卒業証書ならぬ卒乳証書付き
「卒乳してビール飲めるね」セット。卒業証書ならぬ卒乳証書付き

成人のお祝いや結婚記念日など、ハレの日にももちろん飲んでいただきたいですが、「よなよな」というネーミングのとおり、日常の中にあるプライベートな節目といいますか、「公にはしないけれど、個人的にはとても大事」というところに寄り添いたいな、と思っています。

 

ジンさん:昨年からは、月ごとに契約できるサブスクリプションを始めたのですが、それまでは年契約だったんです。だからこそ生まれたサービスといえるかもしれません。

 

── やはり「卒乳」の方からの応募が多いですか。

 

まるちゃん:そうですね。全体の半分くらいが卒乳の方です。本人からはもちろん、パートナーの方からの応募も目立ちます。

 

「なかなか母乳が出ないときもがんばっているのを見ていたので、がんばったね、と言ってあげたい」とか「一緒に断酒していたから、ふたりで乾杯したい」とか。

 

「世の中にはこんなすてきなパートナーがいらっしゃるんだ!」と読んでいて感動しちゃいました。

 

卒乳のタイミングって、お母さんが決めるばかりではなくて、お子さんのほうから卒業してしまうケースも多いんですよね。そうなると、「あれが最後だったの!?」とちょっと寂しい気持ちになるところを、ビールを飲みながら自分なりの区切りにしてもらえたら嬉しいですね。

 

── 反響はかなり大きかったのでは。

 

まるちゃん:はい、当初は5000セットを用意していたのですが、3月16日時点で2万件ものご応募をいただいて、びっくりするとともに、とてもうれしく思っています。

 

ジンさん:SNSに「届いたよ」という投稿も溢れていて、嬉しいですね。予想以上に反響をいただいたので、4000セットを増産することにしました。

 

── ほかには、どのような節目での応募がありますか。

 

まるちゃん:心に残っているのは、「彼氏卒業」です。結婚が決まって、これからはパートナーになるから、と。すてきですよね。

 

「妊活を卒業して、これからもふたりでの生活を楽しみたい」という方もけっこういらっしゃいます。

 

ジンさん:ほかにも、「イヤイヤ期卒業」「おむつ卒業」「PTA役員卒業」「確定申告卒業」「治療をして花粉症卒業」「裸眼からの卒業、眼鏡学園老眼鏡科入学」という方も(笑)。

 

「離婚」や「定年退職」の節目に応募してくださった方もいらっしゃいます。

 

まるちゃん:離婚を、「結婚を卒業して、新しいスタート!」と、前向きに捉えている方もいらっしゃいました。

 

──「イヤイヤ期」は、卒業のタイミングがわかりづらい気がしますが…

 

まるちゃん:そうなんです。数組の親子を招いて「卒業式イベント」をしたのですが、そのときも「卒イヤイヤ期」で来てくれたお子さんがグズっちゃったり(笑)。だから、イヤイヤ期だけは「(たぶん)卒業」としています。子育ては一筋縄ではいかないけれど、ひとつの節目としてお祝いしてもらえたらいいな、と。

 

終わりの認定が難しいけど「イヤイヤ期卒業乾杯セット」(卒イヤ証書付き)も!
終わりの認定が難しいけど「イヤイヤ期卒業乾杯セット」(卒イヤ証書付き)も!

イベントでは、てんちょ(社長のニックネーム)から卒業証書を授与させてもらって、みんなでビールで乾杯しました。

「ニックネーム呼び」「育休取得率100%」の企業文化が生んだ企画

── 社長もニックネームで呼ばれているのですね。

 

ジンさん:そうなんです。私たちの「ジン」、「まるちゃん」という名前も社内のニックネームです。基本的にニックネームは自己申告制なのですが、社長は就任前にECの店長をしていたことがあるので、「てんちょ」と呼ばれています。

 

「より成果を出すために、フラットな組織文化をつくろう」ということで社内で始めた試みなのですが、私たちの企業文化とニックネーム呼びは相性がいいと感じています。イベントなどで、お互いをニックネームで呼び合うところをお客さまにも見てもらえますし。

 

── 社内の雰囲気が伝わってきますね。

 

ジンさん:余談ですが、弊社は「男性の育休取得率が高い」という特長がありまして。2022年度は、男性も女性も育休取得率が100%でした。

 

もちろん、無理に取ってもらうわけではないのですが、てんちょ自身も育休を取得していますし、育休の社員が「育休っていいよ!ぜったいに取ったほうがいいよ!」とどんどん発信しますし、取りたい人が取得できる雰囲気はあると思います。

 

まるちゃん:弊社は子育て中の社員が多いので、今回の企画でもパパ、ママの視点でアドバイスをたくさんもらいました。

 

「卒乳」ってプライベートなことだから、「できれば誰のことも傷つけたくないな」と思って、「こういう表現はどうかな」と相談したんです。そうしたら、みんながどんどん赤入れをしてくれて、助かりました。自分の卒乳体験を涙ながらに語ってくれた社員もいました。

 

──「隠れ節目祝い」も、そういう企業文化から生まれた企画なんですね。今後も新しいサービスを予定されていますか。

 

まるちゃん:年に2回は大きなプロモーションをやりたいと考えていて、絶賛企画中です。

 

戦略上は「新規ファンを増やすこと」が目的ですが、現場のスタッフとしては「ビールを通じてささやかなしあわせをお届けしたい」という思いがいちばんにあります。

 

ジンさん:社内では、自分たちがやっているのは「ビールを中心としたエンターテインメント事業」だという位置づけが浸透しています。「ビールを通じて、世の中に楽しいことを提供したいよね」と。

 

まるちゃん:私たち、ビール会社なのに「ノーベル平和賞を取りたい!」と本気で掲げているんです。最初、てんちょが言い出したときは「酔っぱらってるのかな?」と思ったんですけど(笑)。ビールを通じてたくさんの人に幸せな気持ちになってもらえることを、これからもやっていきたいですね。


取材・文/林優子 写真提供/株式会社ヤッホーブルーイング