「自分の部屋が欲しい」と言われても、子どもたちの寝室はあえてひとつにしたと語る、荻野目洋子さん。長女だから、末っ子だから、それぞれの立場で思うことや、子どもに対して決めているルールがあると言います。
自分の部屋が欲しいと言われても
── 3人のお子さんの子育てで、夫婦で決めていることがあるそうですね。
荻野目さん:兄弟のなかで、「お姉ちゃん」と呼ばせていなかったです。親が子どもに対して、「お姉ちゃんだからやってもらいなさい」「お姉ちゃんだから我慢しなさい」みたいな会話ってありがちですよね。でも、うちはやめようねって。一人ひとりの名前を呼んで、「お姉ちゃんだから」っていう役割はつくらなくてもいいねって、決めてました。
── 長女の人は、「お姉ちゃんだから」で、嫌な思いをした人もいそうですし。
荻野目さん:逆に私自身は、姉2人、兄1人のは4人きょうだいの末っ子で、子ども時代は自分の部屋が一度もなかったんです。常に誰かと一緒の部屋で、洋服も必ずお下がり。制服とか鞄とか…、自分でも新しいものはいらないって親に言ってたし、使えるならそれでいいと思ってたんですけど。洋服はやっぱりね、新しいものが欲しかったです。新品が羨ましいって思ったこともあって。
でも、そのおかげでコーディネート力が上がった気がするんです。あるもので、どう着こなすか。それはのちのち役立ちましたし、自分が将来いいものを買えるように頑張ろうって、逆にそういった気持ちになれたので。
── 励みになるような。
荻野目さん:3人の娘たちも、一人ひとりの部屋がないんです。勉強するスペースは、夫の部屋とか別の部屋で、各自やってますけど、寝室はずっと同じ部屋です。夫が、一人ひとり部屋を持てるように引っ越そうかって提案したときもあったんですけど、私が広い家に行かなくてもいいんじゃないかって言ったんですよ。自分の部屋が欲しいなら、独り立ちするように頑張ればいいし、そう思えるきっかけになったほうがいいだろうと思って。
── お子さんから「自分の部屋が欲しい」って言われたことはありますか?
荻野目さん:普通に言われてましたけど、「じゃ、頑張ってね」って。子どもたちは、3人で3段ベッドで寝てましたね。
── 3段ベッドは、天井までの高さも必要そうですね?
荻野目さん:高さは2段ベッドで、一番下は、ベッドの下からスライドのように横に引き出せるんです。寝るときにいちばん下のベッドを出して、起きたらしまえる感じです。
── 朝起きてきたとき、寝ぼけて踏んじゃったり…?
荻野目さん:そういうのもありますね(笑)。いちばん上が長女、次女が下のスライドがいいと言って、3番目が真ん中で寝ていました。
LINEは禁止だった
── ほかにも、旦那さんがアスリートだった経験からいくつかルールがあるそうですね。
荻野目さん:たとえば「食事中は、会話を盛り上げる」とか。要は、場の空気を悪くするのはやめましょうっていう意味なんですけど。今日は気分がのらないとか、ちょっと疲れていたとしても、みんなで楽しく会話できるようにしましょうっていうのは、子どもが小さいときから言っていますね。
── 旦那さんは、テニスプレイヤーとして活躍されましたね。
荻野目さん:テニスの選手って、国内に世界にと、いろいろな場所に試合しに行くんですけど、試合ごとに、現地で練習場所や練習相手を自分で見つけないといけないんです。ある程度トップ選手になったらコーチが帯同して、コーチが練習相手もやってくれますけど、そういったことは、トップレベルの選手ができることで。
宿泊しているホテルでも、スタッフの人と仲良くなったらすごくサービスしてくれたとか。そういった経験を夫はたくさんしてきたので、コミュニケーションの必要性とか、会話ができるようにしなさいっていうポリシーがあるようです。
── 他にも、挨拶にも力を入れているとか。
荻野目さん:挨拶は絶対にしなさいって言ってます。以前住んでいたマンションで、挨拶をしてもときどき返してくれない…っていうこともあったんですけど、そういう人もいるけどやっぱり挨拶は絶対にしたほうがいいので、ずっと言い続けています。
── 以前はLINEが禁止だったそうですね。
荻野目さん:子どもたちが小学生時代は、周りでLINE交換が流行っていましたが、私の子どもたちはやってなかったですね。今は、子どもも大きくなったのでLINEは使っていますが、食事中はよほどのことがない限りLINEは見ないです。
今は子どもたちも、アルバイトやサークルとか、それぞれのペースがあるし、食事もバラバラのことも多いです。いちばん下の娘も高校生ですし、みんなLINEも自由にやってますが、当時伝えてきたことは、伝わっているといいなと思っています。
PROFILE 荻野目洋子さん
1984年デビュー。1985年シングル「ダンシング・ヒーロー」が大ヒット。2017年は大阪府立登美丘高校ダンス部とのコラボレーションで話題を呼んだ。4月に本人作詞作曲「Bug in a Dress」アナログレコード版が発売しライブも開催。
取材・文/松永怜 撮影/阿部章仁