西山茉希さんは、SNSに2人の娘との食卓の様子をアップしています。見た目は“映えない”ですが、とてもおいしそう。気負わず、おいしく。“西山食堂”のこだわりとは。
子が食べなくても「まずは大人がおいしそうに食べる」
── Instagramには、お子さんとの食卓の様子を「#西山食堂」として載せていますね。「茶色多め上等」というのも共感しました。
西山さん:なんか茶色になりますよね(笑)。
── いつもすごくおいしそうです。忙しいときはどう乗りきってるんですか?
西山さん:私は、基本的に料理する時間が好きなんですよね。もちろん「またごはん作らなきゃ…」みたいに思うときもありますけど、時間にゆとりさえあれば毎日作ることが苦なタイプではないんです。
ただ、時間にゆとりがないときもあるじゃないですか。そういうときは「帰ってからバタバタするぐらいだったら、早起きしておかず仕込んでいたほうが、気持ち的に楽だな」と思うタイプ。
24時間をどう使うか、自分が苦じゃない方法って選べると思うんですよ。
寝る前に「今日寝つけないかも。いろいろ考えごとしそうかも」って思ったら「じゃあ煮込みみたいなやつを作ってから寝れば、明日楽だよね」みたいな。同じ眠れない時間でも、無駄にグダグダしている2時間を過ごすなら、料理して次の日のために動いたほうが良いよねと考えるタイプなんです。
── お子さんの偏食に悩んだりはなかったですか?
西山さん:ありますよ。葉っぱの野菜を出しても食べないし、好きなものも明確に決まってる。でも「給食、きちんと食べてるし」みたいな(笑)。
1日学校や保育園を頑張って、お昼ごはんに出てきたいろんな食材を、ちゃんと食べることはできている。なのに、夜ごはんまで「あれ食べろ、これ食べろ」って嫌だよねって思うタイプなので。
私は食べさせるよりも、大人がおいしそうに食べることが大事だと思うんですよ。私自身もそうだったんですけど「なんかママっておいしそうに食べるよな、あれ食べてみたいな」と思って手を出したりとか。
目の前で食事をする人がおいしそうに食べていたら、大人同士でも「それ、そんなにおいしいの?」ってなるじゃないですか。だから、私はおいしく食べる姿を見せ続けることのほうが、苦手を克服できる食育なのかなと思ってます。
── うちの子が偏食でつい「食べ物を無駄にしないで」と怒っちゃうんです。そういう怒りの気持ちは湧かないですか?
西山さん:それは湧くんですよ。でも、自分が小学校のとき、給食の時間にたとえばわかめご飯が残っていて、それを先生がちっちゃいおにぎりにしてくれて。それがすごくおいしそうに見えて、お腹いっぱいだったはずなのにまた食べられたりした記憶とかがあるんです。
── ありますね。
西山さん:だから子どもって、ご飯の時間を「怒られる時間」って思ったら、きっとどんどん楽しくなくなるし、食べなくなると思うんです。だからそこは食べさせようとしている自分の脳が怒りを生んでいるだけで、別に彼女たちは悪気ないよね、とグッととこらえて。
「なんでこんなに毎回怒ってんるだろう」って自分でも思うじゃないですか。だから私は、ごはんのときは自分もとにかくおいしくごはんを食べて、自分を満たす。
で、残されたら、傷つくし、怒りたくなるけど「はい、じゃあもういいのね」って言って1回下げてみたり。
あとは残ったご飯をちっちゃいおにぎりにして置いておいてみるとか。絶対にお腹は空きますから。おにぎりに手をつけ始めてたら「しめしめ」みたいな。そういうやり方ですかね(笑)。
疲れて寝落ちする母に、娘がそっと布団を…
── まずは自分が楽しむんですね。素敵です。
西山さん:いえいえ。私、「疲れてる」とかも、全部子どもに言うんですよ。「ママ、今週疲れてるのね。早く寝たいから協力してくれるかな?」みたいな。「その代わり週末にどこか連れていくから、今週はお願い」とかお願いしたり。
ごはんが終わって、片づけにたどり着く前にちょっとゴロンとしたらそのまま寝ちゃったりするときもあるんですよ。でもそうすると、知らないうちに布団をかけてくれてたりとか。
── 娘さん、優しい‥‥。
西山さん:ありがたいなって思って。またこういうことをしてもらえるように私も頑張ろうと思います。
家族って、人間同士の共存ですからね、いくら子どもでも。調子良いとき悪いときはあるから。誰かが調子が悪いときに、やさしくし合えるメンバーではいたいなと思います。
「注意しても『今パックしているから~』」
── 上の娘さん、9歳だと早い子だとそろそろ反抗期に入るのでは。
西山さん:いや、本当に!今、育児9年目で初めて「育児が大変」と思ってるかも。私にとってはイヤイヤ期のほうがよっぽど良かった。今は人間対人間、みたいな感じ。
対等に腹が立ってしまうことが、いちばん自分にとっては苦ですね。
── ちなみにどういうところで腹が立つんですか?
西山さん:娘は美容に目覚めて、パックやトリートメントも自分専用のものを持っているんです。
放課後に友達と遊びに行くのもお買い物なんですよ。100均で美容アイテムを集めてコレクションしたり。
ただ、学校の宿題とかやるべきことをやって楽しんでいるなら良いけど…。忘れものを頻繁にしたり、反省が全然見えないんですよね。私もよく「調子に乗らないで」って言っちゃうんだけど。学校の先生からも「何回も同じことで注意されるのが増えてますね」といわれたり。
なので、私も「ルールというものが、世の中にはあってさ…」みたいに伝えるじゃないですか。そうすると、娘は「ちょっと待って、今パックだけやるから」みたいな(笑)。
「絶対的に安心できる人と対で生きていきたい」
── 娘さん、強い(笑)。
西山さん:男の子のやんちゃな感じは、のちに笑い話になったりするかもだけど、今の世の中だと、まだ女の子はある程度常識的なところを備えていないと、後に彼女たちが損をしてしまう。
ただ、娘は身体的にも精神的にも成長している時期だから、彼女的にも、もしかしたら今はこれまで向き合ったことない精神状態なのかもしれない。すると、なおさらこっちは、どこで怒るべきなのかもわからない、という感じですかね。
シングルだと、こういうときにアメとムチを1人でやらなきゃいけないのが、結構しんどいですね。ママがめっちゃ怒って嫌われても、パパがキャッチャーになってくれるというのはいいな、と。「なるほど、ここでもう一役ほしいな」って思いました。
── 突っ込んだお話ですが、今後は再婚も視野に考えているんでしょうか?
西山さん:再婚するかどうかというよりも、自分が365日、親として懸命に生きようって思ったら、心が折れそうなときがあったり、ひとりの人間として自分も甘えたい時間があったりもする。
そしたら私は「ひとりでいい」とは言えないなって思って。
自分も娘たちにとってはママという絶対的な存在であるように、私も絶対的に安心できる存在の人と、対で生きていきたいなって思いますね。
PROFILE 西山茉希さん
モデル・タレント。1985年生まれ。2005年より雑誌『CanCam』の専属モデルを務め人気を博す。13年に結婚し、2人の娘を出産。19年離婚。2023年エッセイ『だいじょうぶじゃなくてもだいじょうぶ』を上梓。
取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美