アメリカで生活しながら3人のお子さんを育てる野沢直子さん。子どもたちが小さいときは全米ツアーに出かけた子どもたちも、やがて反抗期を迎えて──。(全5回中の4回)

5大都市ツアーで圧倒的な自然を満喫

── 野沢さんは、ご主人のボブさんと一緒にアメリカで全米ツアーを開催されていましたね。ツアーのあいだ、お子さんはどうしていたのでしょうか。

 

野沢さん:全米ツアーに出かけたのは、上の子2人がまだ小さいときでした。ツアーには、私の友達にベビーシッターをお願いして、ライブをしているあいだは子どものお世話をお願いしていました。ライブといっても、30分か40分で終わるので、前後1時間くらいをシッターである友達に子どもの面倒を見てもらっていました。夜はモーテルに泊まったり、車中泊をしたりしながらの移動で、とても楽しかったです。今考えると車中泊とか危ないんですけど。

 

── ツアーではどんなところを回ったのでしょうか?

 

野沢さん:ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ニューオリンズなど、アメリカの五大都市を中心にまわりました。ニューメキシコとかアリゾナに行ったときは、一面砂漠地帯で、生えている植物はサボテンだけ!よく西部劇などに出てくる風景が目の前に広がっていて、大自然を満喫することができました。

 

内陸部は、行けども行けども畑が続いて、それもまた「アメリカならではの景色」ということで、目に焼きついています。なにもない道路をただひたすら走り続けるだけ。ただそれだけなんですが、とても印象的でした。

 

キッチンで料理をする野沢直子さんと娘さん

── ツアーも楽しいけど、アメリカの圧倒的な自然に癒やされた、という感じでしょうか?

 

野沢さん:本当にそんな気分でした。この全米ツアーにかけた時間は、人生のなかでとても貴重な時間だったと改めて感じています。ただ残念なことに、子どもたちは小さかったこともあって、ツアーのことはまったく覚えてないみたいです。

親なんて報われない生き物

昔は反抗期もあったという3人のお子さんと野沢直子さん

── お子さんは3人いますが、反抗期もあったとか。反抗期はいつくらいから始まったのでしょうか?

 

野沢さん:長女と次女は14歳~16歳、末っ子の長男は17、18歳くらいでした。本当に大変でした(笑)。家に帰ってきては暴れる。学校に行けば暴れる。これまでは仲良くなんでも話していたのに、話してくれなくなる。

 

アメリカでは洲によって「12歳以下はひとりで外出してはいけない」という法律があります。しかし、子どもが12歳以上だったらとくに問題はありません。それもあって、うちの子は16歳のときには毎週友達の家に遊びに行って帰ってこないということが何度もありました。

 

── 誰とどこにいるかだけでもわかれば、ひとまず安心できそうです。

 

野沢さん:それが連絡もつかないんですよ。携帯に連絡してもまったく出てくれないから。そんな時期がエンドレス(笑)。反抗期も三人三様でちょっとずつ違うので、対応が難しくて。

 

子育てって本当に大変なことだなと思って思いました。芸能活動やバンドなど、いろんなことをやってきましたが、いちばん大変な仕事は「子育て」だったかなっていう。そのときの目標は、「とりあえず全員が生きていればそれでいい」という感じでした。親子で戦ったりしました。

 

── どんなことで戦うんですか?部屋片づけなさい、食器洗いなさい、宿題やりなさいとか。そんな感じですか?

 

野沢さん:それくらいのことだったら全然怒らなかったと思います。こっちが怒らなくても、子どものほうから突っかかってくるんですよ。

 

たとえば、食事中、子どもが部屋のなかをうろうろしていたから「座って食べなさない」と声をかけたんです。そしたら「なんで座らなきゃいけないの?説明してくれる?」って言われて。「ちゃんとした答えがないのだったら、座りなさいと言わないで」とかね(笑)。

 

── それはキツイ…。

 

野沢さん:ほかにも、学校の授業中、勝手に抜け出してひとりでどこか行ってしまうこともあったらしく、学校から連絡から連絡が来るんですよ。子どもに「なぜ教室を抜け出したの?」と聞くと、「天気が良かったから。教室にいなきゃいけないの?」みたいな。とにかく何をいっても突っかかってきてましたね。

 

私や学校の先生が言ったこと、つまり大人から何か言われたことに対して「ちゃんとした理由を説明できないんだったら、従わない!」みたいな。顔を合わせても口を開かない。もうほんと、会話をしてくれなくなってしまって…。

 

飼い犬相手によく「親なんて報われない生き物よね」と話しかけてました(笑)。

反抗期は誰のせいでもない

── 子どもが2、3歳のころの反抗期は、イヤイヤ言っていても基本的に「ママ大好き」という感じで、まだよかったですね。ティーンエイジャーはとりつく島がない。

 

野沢さん:子どもが小さいときは、抱っこしたり、追いかけたり、食事を食べさせたり、洋服を着替えさせたりと、肉体的に大変でしたよね。子どもが成長し、思春期を迎えると私が何かひと言でも娘たちの言動について注意したら、100くらい返ってきて、普通に会話をするのも大変だったときがあります。

 

でも、今考えると反抗期があってよかったと思います。反抗期は、よく考えれば自我の目覚めというか、うちに秘めた熱い情熱を外に出したい。うまく表現できないモヤモヤを何とかしたい。そういう強い気持ちがあるからこそ起こるものかなとも思うんです。

 

── たしかに、突っかかってこられるのは大変ですが、突っかかる情熱がないのも心配になります。

 

野沢さん:そう考えると、反抗期がないよりかは、あったほうがいいのかなと思っているんですけどね。

 

私、これまで育児書を読んだことがなかったのですが、反抗期のとき、初めて本を読みました。その本に「反抗期っていうのは親が悪いわけでもない子どもが悪いわけでもない。全部ホルモンのせいだ」と書いてあったんです。

 

── 「ホルモンのせい」だと考えれば、いくぶん気持ちも楽になるかも?

 

野沢さん:子どもが暴れたり、家出をしたり、口をきいてくれなくなったりすると「私の育て方が間違っていたのかな?」「子どもが悪い」「家族の誰かが悪い!」と思うことって、あると思うんです。でも、誰かを責めても答えはでないし、迷宮入りですよね。

 

そんなとき「反抗期はホルモンのせいだ」と思えば、「それは自分でコントロールするのは難しいから仕方がない」と思えるんじゃないかと。実際に、私はその話を聞いて、ストンと府に落ち、あまりイライラしなくなりました。反抗期はホルモンのせい。だから自分も子どもも責める必要はないのかなと、思います。

 

PROFILE 野沢直子さん

東京都出身。超人気コント番組『夢で逢えたら』などに出演。人気絶頂期に渡米を決意。アメリカ人の彼と国際結婚し現在アメリカ在住。長女は格闘家の真珠野沢オークレアー。『老いてきたけど、まぁ~いっか。』(ダイヤモンド社/野沢直子)

 

取材・文/間野由利子