映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』(公開中)で主人公プスの元カノ、キティ・フワフワーテの声を担当している土屋アンナさん。家事の手抜きは難しくて苦手という土屋さんは、6匹のネコと4人のお子さんに囲まれる生活をどう過ごしているのでしょうか。

家事の手抜きは難しくて苦手

── 本作をお子さんにも見せたいとおっしゃっていましたが、普段からご自身が関わった作品などは積極的に見せたりしますか?

 

土屋さん:特にテレビとかは自分から観せることはあまりないけれど、声で気づくことはよくあります。映像を観てなくても、テレビから私の声が流れてきたら「ママだ!」ってなります。

 

声には敏感かもしれないです。つい先日も、一番下の娘がテレビから私の声が聞こえた瞬間に反応して、テレビの声に向かって話しかけてました。「ママ、何やってるの?」って。今回の映画もキティのかっこよさやアクションはもちろんだけど、私の声で好きになってくれたらすごくうれしいなって思います。

 

── 6匹のネコと4人のお子さんとの生活はいかがですか?

 

土屋さん:命がいっぱいの環境です(笑)。

 

── 数だけ見ると圧倒されますが、命と考えると尊いですね。

 

土屋さん:そうなんです。

 

土屋アンナさん
「命がいっぱいの環境」6匹の猫と4人の子どもと暮らす土屋さん

── シンプルに数だけ見てもいろいろと大変なのではと思いますが、うまくこなすコツはあるのでしょうか?

 

土屋さん:うまくはこなせないって思うこと、です。こなせないを前提にどう手抜きをするかを意識しています。

 

実は私、手抜きができないタイプなんです。自分でやっちゃえば早いし、自分でやりたいと思ってがんばっちゃうから、友達や母親から「もうちょっと手抜きすれば?」と言われることが多くて。

 

ごはんとお味噌汁は用意して、コロッケは買って帰ろう、みたいなことができなくて。特に家事の手抜きはすごく難しくて苦手なんです。

家事のかわりに手を抜くところ

── 母親になる前から、家事の手抜きは苦手?

 

土屋さん:性格なんでしょうね。自分で全部やっちゃえばいい。大変な思いをするのは自分だけだし、やったほうが早いからやっちゃうけれど、そこまでやらなくていい、上手に手抜きしたほうがいいと言われるから、手抜きできるところは手抜きをするようになっていきました。

 

でも家事の手抜きは苦手だから、そこじゃない部分で手抜きをするようにしています。

 

── たとえば?

 

土屋さん:子どもが持って帰ってきたプリントを見て、期日までに準備するものが書いてあったりすると、「うん、わかった。いついつまでにね。じゃ、いったん置いておこう」って(笑)。

 

あえて言うなら、母親としての手抜きは上手かも。子どもには「こうしなさい」みたいなことは一切言いません。自主的にやればいいかなって。部屋の片づけをしてなくて本当に汚いときくらいかな、イライラっとするのは。

 

── 見すごせる?それとも見すごそうとしている?

 

土屋さん:やるのは本人だからと思えば、目に入っても気にならないようになっています。「嘘つかないでね」と言っても、発見するまではそれが嘘なのかどうかって分からないですよね。「嘘つかないでね」と言い続けるとこっちも疲れちゃうので、ポイントポイントで言うようにしています。

 

たとえば、「勉強やった?」って聞いて「やった」って返ってくる。「本当に?」って確かめると「本当」って言う。でも本当に勉強したかどうかは、監視でもしてない限り本人にしか分からない。なので、「本当」って言ったら「そっか、OK!テスト楽しみだねー」って言います。

 

実際にテストが戻ってきて、あまりにも点数が低かったときに「やってないってことだよね。結果がついてきたね」って言います。それでも怒ることはないですね。「このままじゃヤバイね、次だね」って流れになる感じです。

「すごく難しいけど」子どもに期待すること

── どんなときに怒りますか?

 

土屋さん:自分より力の弱い子を傷つけてしまったときかな。昔、長男が小さいときに、自分の近くに彼より小さい子がいることに気づかずにぶつかって転ばせてしまったことがあったんです。

 

そのまま走り回っていたときにはめちゃくちゃ怒りました。「はーい、ちょっと巻き戻って!」って。自分より弱い人、困っている人がいるかどうか、ちゃんと分からないとダメ。人が転んだのに気づかないのはダメだって。

 

── 子どもには難しいですよね。大人になってもできていない人もいますし。

 

土屋さん:子どもにはすごく難しいと思います。でも、うちの子たちにはそこに気づくような人になってほしい。

 

ここには自分よりちっちゃい子がいるからぶつかったら危ない、場所を変えて遊ぼうって考えられる子に育ちました。悪気がなくて困らせるのは仕方のないことだけど、悪気があって人を困らせるのは絶対ダメというのは、わりと小さい頃から言ってきました。私、よく「今日はブチギレたな」とか口にしてるけど、意外と怒ってない気がします(笑)。

 

土屋アンナさん
「子どもには自分より弱い人、困っている人に気づける人になってほしい」という土屋さん

──「ブチ切れた」と言うだけで、自分のなかで消化してるんですかね。

 

土屋さん:もともとそんなに怒るタイプじゃないんです。あとは、人の心が崩れるようなことをしてはいけないというのも、子どもにはよく言ってきたかな。嘘はみんなついちゃうものだけど、いい嘘と悪い嘘がある、という話もよくしてきたし。自分に返ってくる嘘ならしょうがないね、で済むけれど、そうじゃない嘘はダメだよって教えてきたつもりだし、それがちゃんと理解できる子に育っています。

 

── 映画は“願い星”を探す旅に出るお話ですが、土屋さんはお願いごとをするタイプですか?

 

土屋さん:お願いごと、したことないかも。この前も神社に行ったけれど、何もお願いしなかったです。とりあえず「ありがとうございます」って言うかな。やって欲しいことを訊かれたら、もちろんないわけじゃないけれど、神様に頼むことではないなって。お願いするなら「宝くじが当たりますように」とかかな。自分では叶えられないことだから(笑)。

 

PROFILE 土屋アンナさん

モデル、歌手、女優。1984年生まれ、東京都出身。主な出演映画は『下妻物語』(04)、『さくらん』(07)、『パコと魔法の絵本』(08)、『Diner ダイナー』(19)、『ALIVEHOON アライブフーン』(22)など。

 

取材・文/タナカシノブ