東京の下町・台東区の谷中から、世界でたったひとつの美の世界を発信する夫婦がいます。帽子でもかつらでもない、頭飾品「マキシマクラウン」。海外のファッションショーでもモデルたちの頭を華やかにしたその美の秘密を、創始者の巻島京子さん、経営や技術を担当する巻島幸三さんにお聞きしました(全2回中の1回)。
「ひまわり社」時代の「あったらいいな」を形に
── マキシマクラウンを生み出されたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
京子さん:第二次世界大戦の戦後まもなく、女性誌『それいゆ』や『ひまわり』を発刊された中原淳一先生の「ひまわり社(当時ヒマワリ社)」で働いていたころ、「あったいいな」と思ったものが、マキシマクラウンの原点です。
当時はお店で洋服や人形などを販売していましたが、帽子やかつら、リボン、造花といった飾りではなくて、ヘアスタイルを兼ねたものがあるといいなと思ったんです。それがあるだけでトータルファッションが決まるようなものです。
半世紀をかけて生み出した「マキシマクラウン」は、シルクの糸・化学繊維糸を成形して手作りした被りもの。どんなふうに被っても自然と馴染み、その方の美しさを引き出してくれます。
── ひまわり社を退職後、美容師を経て、マネキン人形のかつらをつくるのと並行して開発を進められていたそうですね。
京子さん:今でもうちには、フランス人彫刻家・ダルナのシリーズのものがありますが、ボディを扱うのが難しい。わたくしはそれをうまく扱えたということで、マネキンのかつらをたくさん頼まれたんです。
幸三さん:それからは糸で織りなすマキシマクラウンの創作と研究を続けてきました。60年経ちますが、まだ現在進行形です。