2月14日はバレンタイン。IT企業の管理本部長を務めながら、副業で「ラブレター代筆屋」を営んでいることで話題の小林慎太郎さんに、これまで出会った不思議な愛の告白文を伺いました。
予想外に相次いだ依頼、その4割は…
会社員と並行し、9年前からラブレターの代筆を始めたという小林さん。これまでに約180通ものラブレターの代筆をしてきました。
代筆の金額は1通1万円。始めた当初は「依頼なんて来ないだろう」と思っていたそうですが、予想外にラブレターの依頼は相次ぎました。
「依頼内容は、復縁を希望するラブレターが実は多いんです。かつて、おつきあいなり、結婚をしていたパートナーと別れたものの、忘れることができないからラブレターを書いてください、といった方が実は4割ほどいます」
小林さんに相談してくる前には、自分で相手に連絡を取ってみたり、友人に相談したりしたものの解決せず、ツラい状態になって相談してくる人も多いと言います。そんななか、小林さんは親身に相手の話を聞き、文章をしたためます。
しかし、切ない結果が多いと言います。
「ほとんど、復縁は成功しないですね。一度離れているので、簡単に戻ることは難しいです」
元通りをゴールにしない
小林さんは手紙を書くときにあることに注意しています。
「白か黒かで判断される手紙は書かないということです。ラブレターで元の関係に戻ることをゴールにはしません。
相手に連絡しないでほしいと言われている状況の方もいるので。まずは久しぶりに相手と会って食事をすることを目指すとか。近いところにゴール設定をして、文面を考えています。
相手の心が離れているので、強く追うほど引かれてしまう。未練がましくならないように書くことを心がけています」
結果がうまくいかないときははがゆさを感じるも、依頼者から「話すだけですっきりしました」「とりあえず、手紙に落とし込んでもらった時点で、整理がつきました」と言われるとやりがいも感じるそうです。
でも、なぜ現代に、あえて不便な手紙を書くのでしょう。
「手紙はいい意味で効率が悪いと思っています。便箋、封筒を買うところから始めて、形を考えないといけない。文字にする時間もかかり、返事をヤキモキ待つ効率の悪い時間があります。
それだけ、長く相手のことを考えていられるのは、何かを考えて、区切りをつけるうえでも、ひとつの意味を持つと思います」
幸せだけではない愛の形を支えるために、今日も小林さんは筆を持ちます。
取材・文/天野佳代子