仕事に家事に子育てに、日々邁進するイラストレーターの横峰沙弥香さん。自宅が仕事場だからこその楽しみや苦労、仕事を捗らせる工夫などを、ちょっと笑えて癒やされるイラストとともに紹介します。今回のテーマは「運の引き寄せ方」。母と同じ漫画家の道を目指す?息子とのやりとりでの気づきを語ってもらいました。

プライドが邪魔して空回りする息子に「それいっちゃん良くない」

「SNSを利用して自分の作品を周知させるにはどうすれば良いか」というような質問をときどきされることがあります。SNS発信でイラストレーターになるという夢が叶ったわけですから、やはりそこには何か特別なノウハウだかコツだかがあるのかもしれない、ということなのかも。


それで言うと、私は作戦を立てる頭もなく、誰もが目をとめる素晴らしい絵が描けるといった特別な才能もないので、今まではぼんやり「運とタイミングかなあ…」としか答えることしかできませんでした。ところが最近その“運とタイミング”を掴むためには何かしらの条件が揃っている必要があるんだなと実感することがありました。

 

息子のまめと話しているととみに感じるのですが、自分の作品を人前に出すことを恥ずかしがるのです。そのくせ賞賛を欲しがるものですから「まずは評価を恐れずに人前に出すのだ」と言い含めるも、プライドが邪魔して発表ができない。

 

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横峰さん連載64話_2
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でもその気持ち、私もよくわかるんだよ。

 

人前に出す、特に不特定多数の人間が目にするSNSに作品を放つということはどんなリアクションも甘んじて受けなければならないということです。正直、しんどいこともかなり多い。

 

もちろん心ない意見に胸を痛めたり、自分で検索をかけて探しに行ってまで傷つく必要はまったくないのです。が、「私にとって心地よい評価だけお願いね」なんてことがまかり通る世界ではありませんから、まずここで折れない心が必要。

 

「もっと上手になるまで」なんて言わず、下手くそなうちからどんどん人前に出していくこと。そして想定外のリアクションに心が折れたとしても続けること。

 

しつこく、とにかくしつこく続けていれば、1回や2回は何かしらのチャンスがあります。そこでうまく乗っかる図太さがあれば大丈夫。もしそこで躊躇してチャンスを逃してしまっても、後悔の気持ちがあるなら次のチャンスが来るまでまたしつこく続ければいい。

 

「本気でやりたきゃ執念しかないよ、プライドが邪魔している時点でまず勝てない」そう言った私の言葉を熱心に赤ペンでメモしていたまめ。「描いたから、見て感想を言って」と漫画を持ち込んでくる頻度が異常に増えました。

 

またしてもわざわざ手間のかかるほうに誘導してしまった。

 

でもそのしつこさ最高。

横峰さん連載64話_5

文・イラスト/横峰沙弥香