特別養子縁組にて、44歳で第1子を迎えたタレントで女優の武内由紀子さん。2年後に2人目を迎え、家族がさらに増えました。きょうだいとして成長していく子どもたちと生活しながら、特別養子縁組を経験した武内さんが思うことは(全5回中の5回)。

「同じ環境のきょうだいは心強い」は思い込みだった

── 2018年に長男さんを、2020年に長女さんを特別養子縁組で迎えています。2人目を迎えようと思ったキッカケなどはありますか?

 

武内さん:特別養子縁組で1人目を迎えたとき、同じく養子縁組で2人目を迎えている家族がいることを知ってからですね。

 

最初は、同じ環境の子がきょうだいとしていると心強いのかなと思ってたんですよ。きょうだい同士で支え合ってくれるかなって思って。でも、実はこれって親の思い込みだということがわかったんです。

 

「2人の子どもの母になりました」と特別養子縁組について話してくれた武内さん

── 子どもの側からしたら、見え方が違うのでしょうか?

 

武内さん:特別養子縁組の家族で、血の繋がらないきょうだいと話す機会があったんですよ。彼らはもう大人なんですけど、話を聞いたら普通のきょうだいとなんら変わりはないなって。

 

きょうだいで話すことといえば、親の文句だったり、きょうだいげんかしたこととか。血の繋がったきょうだいとなにも変わらない。

 

唯一、血が繋がらないことで話をしたのが、自分たちが成人したときに遺伝がわからないから、がん家系なのか、その病気の関係がわからないということ。1回調べたほうがいいかもねという話だったそうです。

 

それを聞いて「同じ境遇の子がいたほうがいいよね」と思っているのは、親の勝手な考えであって、子どもたちにとってはなにもかわらないんですよね。

静かな兄と口達者な妹の関係

おそろいの洋服で、公園にある子ども用の車で仲良く遊ぶきょうだい

── 実際2人目を迎えて、1人目と違ったことはありますか?

 

武内さん:1人目はいつも寝ていてラクだったけど、2人目はよく動くので大変です。それぞれ個性があるので全然違いますよね。それに下の子のほうがやっぱり強い(笑)。でも、これはどこの家庭も一緒なんでしょうか?

 

女の子っていうのもあるし、下の子の成長のほうが早い。全部が早い。寝返りも、ハイハイも、おしゃべりもすべてが早い!2歳近く離れてますが、学年的には年子なんですよね。

 

今年から長男が幼稚園に通っていて、来年から長女も幼稚園に通います。長男のときは、入園面接で先生にいろいろ聞かれてもダンマリで、「僕は何も答えません」っていう感じだったんです。

 

それが、つい最近、下の子を面接に連れて行ったら、なんでもハキハキと回答するんです。先生に「これはなんですか?」といわれたら「リンゴです!」と答える。ほかにもあれこれ聞かれてその都度、しっかり答えてました。

 

── きょうだいがいるとそれぞれの個性がよくわかりますよね!

 

武内さん:1人目と2人目、男女の違いはいっぱいあります。一緒にいるからか、日に日に似てくるんですよね。血は繋がっていないけど、やることも、考え方も、なんなら表情なんかも、すごくきょうだいで似てきたなって。

 

── 長男さんは、長女さんを迎え入れたとき、赤ちゃん返りはしましたか?

 

武内さん:最初「この子は誰?」みたいな感じで、見ていたんです。その後、「赤ちゃんにママを取られちゃう!」みたいな感じで、だんだん赤ちゃん返りする感じもありました。でも、今やもう、お母さんいらないっていうので2人で遊んでたりとかしてくるので、そうやってきょうだいになっていくんだなって。

家族の形は、人それぞれ

お菓子を頬張る姿が微笑ましい、武内さんの長男と長女

── 養子縁組をされて、一番よかったなっていうのはどんなときですか?

 

武内さん:一番よかったこと…私は子どもを産めなかったのに家族が持てたことは、本当に幸せなことだったなと思います。もうそれが一番かな。家族ができたっていうのは本当によかったです。

 

自分が特別養子縁組をしたからかもしれないけど、「新しい家族の形」という言葉をわりと聞くようになりました。劇的に何かが変わったかと言われれば、そうでもないかもしれない。でも、徐々に特別養子縁組について知ってくれる人が増えてきたのかなという気はしています。

 

特別養子縁組ときくと、どこか特殊だと思う人もいるかもしれませんが、ほかの家族となにも変わりません。いろんな家族の在り方があって、これもひとつの家族の在り方だと思います。

 

PROFILE 武内由紀子さん

タレント、女優。「大阪パフォーマンスドール」としてデビュー。2013年にパン職人の夫と結婚。特別養子縁組を経て、現在男の子と女の子2人のママ。

 

取材・文/間野由利子  撮影/坂脇卓也