特別養子縁組で0歳児を迎えたタレント・武内由紀子さん。子どもや周囲には、どのタイミングで家族の形を伝えていったのでしょうか(全5回中の4回)。

産んでくれたママがいるんだよ

── 子どもに特別養子縁組であることを伝えるタイミングについて、どう考えましたか?

 

武内さん:うちは、長男が3歳になったときに伝えました。

 

長男が3歳になったころ、いろいろとおしゃべりをするようになったんです。意思疎通がちゃんとできるようになってきたなと思ったので、3歳の誕生日の日に伝えました。「産んでくれたママがいるんだよ」って。

 

ただ、伝えたところで、3歳なので、当然のことながら、まだ理解はできていないですよね。

 

── 伝えたのは一回のみですか?

 

武内さん:その後も、夜、寝ながら話をすることはあります。でも、やっぱりまだ小さいですし、こっちが「実はね」と言ったところで理解するのは難しいですよね。

 

だから、「なんとなく覚えておいてくれたらいいな」くらいの感じですね。「あなたを生んでくれたのは◯◯ちゃんだよ。あなたが生まれた後に、私たち、お父さんとお母さんのところに来たんだよ」と伝えています。

 

上の子は今4歳になって、下の子は今2歳半になりました。下の子は上の子に話しかけているのをなんとなく聞いている感じです。

 

産んでくれたママの話は何度も伝えているという武内さん

── もしお子さんが成長して、産みの親のことを知りたいといったら?

 

武内さん:私が知っている情報は、全部伝えるつもりです。会いたいといえば、全力でサポートします。

園で「みんなは誰から生まれてきたの」と言われたら

砂場でバケツとスコップを持って、熱心に遊ぶ武内さんの長男と長女

── 幼稚園の先生には、どんな感じで伝えていますか?

 

武内さん:幼稚園の先生には入園前に伝えています。教室で「みんなは誰から生まれてきたの?」という話になった場合、うちの子は「誰々ちゃん」って違う人の名前を多分、言うだろうと。

 

そのときに「そうなんだね」と肯定してあげてください。ほかには、特別な気づかいはいらないですと言っていますね。

 

── ママ同士のお付き合いは、どこまで伝えるべきか迷いますね。

 

武内さん:私は、普段から会話をする親しい人に言っています。別に隠しているわけでもないし、とりたてて言って回ってるわけではなく。聞かれたときに「そうなんです」と伝えるくらいです。

 

── 他の特別養子縁組の家族と交流などはありますか?

 

武内さん:実は、全国に、特別養子縁組の会がいっぱいあるんですよ。関東の人たちで来られる人は集まって遊んだり、実家の九州に帰るときは、九州にいる特別養子縁組の人たちに連絡して、そこで集まるという感じです。普通のお友達と遊んでるのとほぼ変わりません。

 

それぞれ同じ事情を持った家族の集まりなので、子どもたちが一緒に大きくなっていってくれたらいいよねと。成長とともに、親に言いにくいことなども出てくるだろうし。そういったとき、同じ境遇の子とつながっていられたらいいかなという気持ちもあります。

 

あとは、「特別養子縁組で迎えた家族でもこんなに普通の家族なんだよ」っていうことが伝えていけたらいいなと思って公表しました。

誰かのきっかけになれたら

家族で買い物に出かけたときの1枚。武内さんの夫に肩車されている長男

── ちなみに世間に公表しようと思ったのっていつぐらいですか?

 

武内さん:1人目の子どもを特別養子縁組で迎えてすぐです。私自身が芸能のお仕事をしている関係で、隠し通せることではないので。それに隠すことでもないし。私が特別養子縁組について調べたとき、情報が少なかったこともあって。特別養子縁組について知るひとつのきっかけになったらいいなっていう思いもあります。

 

あとは、「特別養子縁組で迎えた家族でもこんなに普通の家族なんだよ」っていうことが伝えていけたらいいなと思って公表しました。

 

PROFILE 武内由紀子さん

タレント、女優。「大阪パフォーマンスドール」としてデビュー。2013年にパン職人の夫と結婚。特別養子縁組を経て、現在男の子と女の子2人のママ。

 

取材・文/間野由利子  撮影/坂脇卓也