特別養子縁組で迎え入れた2歳と4歳のお子さんを育てている、タレントで女優の武内由紀子さん。初めてのお子さんを家族に迎えるまでの気持ちは、不妊治療で妊娠するのを待つのと同じくらい不安なこともあったといいます。

特別養子縁組の団体の決め方は?

── 4年にわたる不妊治療を経て、特別養子縁組を考え始めたそうですね。

 

武内さん:44歳まで不妊治療を続け、その後、特別養子縁組について真剣に考え始めました。特別養子縁組についてまったく知識がなかったので、ひたすらネットや本で情報収集しました。

 

特別養子縁組は、行政と民間団体、それぞれがあっせんを行っているので、まずどちらでお願いするか決めます。次に、見学や面談などに行き、代表やスタッフと話して自分とフィーリングが合うか、考え方に共感できるか、信頼できそうな人かなどを確認します。

 

というのも、特別養子縁組をしたあとも、子どもが大きなけがや病気をしたとき子どもが生みの親について知りたいと言ったときなどに、団体を通して話をすることになります。将来に渡り、関わりは続いていくからです。

 

44歳のときに養子縁組を決めた武内由紀子さん

── 武内さんはどのように決めたんですか?

 

武内さん:私の年齢が44歳だったこともあり、特別養子縁組の申し込みができるのは2団体しかなかったんです。どちらも素敵な団体でしたが、そのうちのひとつは、自分の感情に寄り添ってくれているのが伝わってきて。

 

これまでツラかったこと、不安に思っていたことを話しているうちに感情があふれ出してしまい…。話を聞いてもらったことで癒やされたし、救われた気分になれました。結果的に、その団体にお願いすることにしました。

保育園研修などを経て本登録に

夏休みに家族でお出かけする武内さん。子どもたちはお昼寝中

── 特別養子縁組でお子さんを家族に迎える前に研修を受けるそうですね。

 

武内さん:夫婦そろっていろんな研修を受けました。たとえば、ミルクの作り方、赤ちゃんの沐浴のさせ方、保育園で子どもたちと一緒に遊んでレポートを書くというのもありました。

 

── 保育園研修では何を?

 

武内さん:保育園に行って、子どもたちと一緒にお散歩に行ったり、給食を食べたり、寝かしつけをしたり。よく保育園で園児のパパやママが「1日先生」になって、自分の子どものクラスの子みんなと遊ぶことがあると思いますが、そんな感じですね。

 

子どもたちと触れ合うことで、「子どもってこんなことをするんだ!」と驚いたり、ワクワクしたり。私は幼稚園教諭の資格を持っていることもあり、小さい子の扱いには慣れていたんですが、夫は身近に小さな子がいないからどう接していいかわからなったみたいで。でも、子どもたちと遊べたのがとっても嬉しかったと話していました。

 

── 研修が終わって本登録へ。

 

武内さん:本登録したあと、「次に連絡があるときは、赤ちゃんをお迎えするときですよ」とのことでした。まだかな、まだかなってワクワクしながら待っていました。

 

しかし、そんな気持ちも1か月過ぎるころには「本当に赤ちゃんはうちに来るんだろうか」と少し不安になって。そのうち連絡が来るだろうと気持ちを落ち着かせながら待っていました。

 

そんなある日、特別養子縁組の親子イベントに参加したことがありました。みんな子ども連れで、子どもがいないのは私だけ。不妊治療で、自分だけ妊娠できなくてものすごくツラかったことがトラウマになっていて、ちょっと思い出してしまった瞬間でした。

 

その2、3日後。「赤ちゃんが生まれました」と連絡がきました。特別養子縁組の本登録をしてから半年がたったころだったと思います。

赤ちゃんがきた!

布団の上で仲睦まじい姿の武内さんの長男と長女

── 連絡をもらったときはどんな気持ちでした?

 

武内さん:携帯電話の着信に、スタッフの方の電話番号が表示されたときは「まさか!」という感じで。この電話が来たということは、ついに私のところにも赤ちゃんがやってくる。そう思ったらただただ嬉しくて「わかりました…」しか言えなかったですね。

 

一度落ち込んでからの連絡だったので、なおさらだったのかもしれません。

 

ただ、もうそこからが大変!赤ちゃんが病院から退院するまでの3、4日間で自宅に迎え入れる準備をしないといけないので。

 

── 生まれたばかりの赤ちゃんが来るっていうのはわかっていたのですか?

 

武内さん:私が申し込んだ特別養子縁組のあっせん団体では、赤ちゃんが家にいつくるのかはもちろん、赤ちゃんの年齢や性別も連絡が来るまでわからないんです。

 

団体は、まず、赤ちゃんが生まれて、産んだお母さんに「本当に特別養子縁組をしていいかどうか」の確認をします。もともと養子縁組に出すと決めていても、いざ産んでみたら気持ちが変わって「自分で育てたい」となる人もいるようです。

 

私たち夫婦のところには、そういった生みの親と団体の気持ちが意志、確認が取れた状態で連絡が来ているはずです。

 

── しかし、あっせん団体から連絡がきて、すぐに準備するのも大変ですね!

 

武内さん:急すぎますよね。ただ、あっせん団体のスタッフの方から「急に連絡が来るのはもうしょうがないですよ。ある程度準備をしておいてくださいね」とあらかじめ言われていて。ベビーグッズや洋服など、お下がりをいっぱいもらっておいて。赤ちゃん用のふとんやオムツ、ミルクなどは、大急ぎで用意しました。

 

赤ちゃんを迎える直前、たまたま夫がパン屋をオープンしたばかり。かなり忙しい時期だったんですよ。正直、連絡が来る直前は、もうちょっと先のほうがいいなと思っていたくらい(笑)。でも、「今赤ちゃんを迎えることになったら、私の仕事を誰にお願いするか」など、あらかじめ決めておいたから、仕事も子どもの受け入れもスムーズにいきました。

 

PROFILE 武内由紀子さん

タレント、女優。「大阪パフォーマンスドール」としてデビュー。2013年にパン職人の夫と結婚。特別養子縁組を経て、現在男の子と女の子2人のママ。

 

取材・文/間野由利子  撮影/坂脇卓也