保護者の関心を独占できる一人っ子ですが、「価値観がアップデートできていない家庭においては、どんなに優秀な子どもであっても、自己肯定感はどんどん下がっていく」と進学塾VAMOS代表の富永雄輔さんは話します。『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)の著者でもある富永さんに「一人っ子を苦しめる保護者」について聞きました。

「古い価値観」が一人っ子を苦しめる

近年、中学受験が増えているのは、受験を経験した保護者が増えていることも一因です。

 

自分がやって良かったことを子どもにしてあげたいと思うのは自然なことですが、保護者の経験が弊害になっているケースもあります。保護者が自身の経験から、勉強法や学校選びについて、アドバイスをする場面もあると思いますが、それがもう古いことが多いのです。

 

「古い価値観が一人っ子を苦しめる」P1

自分の頃は気合いを入れて家庭学習をしていたかもしれませんが、共働きが増え、家庭学習の比重を下げたカリキュラムを組んでいる塾もあります。

 

そもそも受験で出る問題の傾向も「知識」より「思考」重視など、トレンドが変わっている。それを理解できず自分の古い経験からグチグチ指摘して険悪になる。

 

超有名校しか知らず、そこを目標にしたために子どもの自己肯定感が下がり生涯引きずる。子どもの個性に合った学校を認めず、子どもが成長する機会を損失している。

 

世の中を見ても分かる通り、時代は大きく変化しています。

 

たとえば30年前はほとんど知られていなかったApple社。今、Apple社に勤めていると言えば誰もが「超優秀だ」と思うでしょう。

 

人気の就職先も学歴に対する価値観もどんどん変わっていくなかで、中学受験が30年前と変わらないなんておかしいですよね。

 

二人目以降の子どもの場合、保護者は一人目の失敗から学び、子育てのマイナーチェンジをしていきます。それができない一人っ子の保護者は「自分の古い価値観は通用しない」と自戒して、情報をアップデートして中学受験に臨むことが肝心です。

 

この価値観のアップデートは、中学受験のみならず、子どもの教育全般、進路においても言えることだと思います。

 

一人っ子は、保護者の関心を独占でき、きょうだいがいたら分配される教育費もすべて自分に注がれます。

 

お金があるのも、保護者と濃密な時間を過ごせることも一人っ子の特権。保護者は古い価値観で、子どもを潰さないこと、もっと言えば価値観をアップデートすることで、より良い選択肢を子どもに示してあげられるといいですね。