ここのところ、世界的な価格高騰と円安による物価高で「生活レベルは変わっていないのに出費が増え、ますます家計に余裕がなくなっている」という声もよく耳にします。
「子供が小さい今はなんとかやっていけてるけど、将来の学費を考えると、ずっとパートじゃなくて正社員になりたい」
「もう少し給与の高い職業に転職したい」
「手に職をつけて独立したい」
そんな計画を思い描く人もいるかもしれません。
今よりも収入アップしたい、長時間打ち込めるよう好きなジャンルで働きたいという希望を実現するのに有効な手段の1つが「資格の取得」です。
今回は、主婦やママに人気&おすすめの資格をジャンル別にピックアップ。取得後にどんな風に働き方が変わったのか、ママたちの体験談も紹介します。
そもそも「資格」とは?主婦やママが取るなら
再就職や転職に役立つ資格(厳密には「免許」「検定」などいろいろな名称が含まれますが、ここではまとめて資格とします)には大きく分けて3種類あり、以下のように分類されます。
- 国家資格
- 技能検定(国家検定)
- 民間資格
国家資格とは国が「この仕事を行えるのは資格を持った人のみ」と法律で定めているもので、医師や弁護士・行政書士・公認会計士・マンション管理士など約300種類があり、一度取得すると生涯有効な資格です。
技能検定(国家検定)も同じく国や都道府県が実施する制度ですが、こちらは資格保持者しかその職に就けないわけではなく、職業能力やレベルを保証するのが目的で、機械や金属から洋服・パンまで、製造加工にかかわる資格が多くみられます。
民間資格は、一般の団体や企業が自由に名称を決めて検定試験を行い、その合格者に与えられる資格です。内容はとても幅広く、TOEIC(英語能力)や医療事務といったメジャーなものから、身近な趣味をより楽しむためのニッチな検定までさまざまな種類があります。
いったいどの資格を取るべきか、何が役立つのか…というおすすめの資格は一人ひとり異なりますが、資格サイトや社会人向けスクールでの資料請求数が多い資格は人気が高いといえます。
以下に、そんな主婦・ママに人気の資格と、実際に取得した人たちの働き方についての体験談もあわせて紹介します。
「好き」を仕事にしたい人向けの資格
主婦・ママの中には、子育てや夫の転勤などで長く専業主婦や短時間のパートで働いている人も多く、「キャリアや特別な能力がない」と感じている人もいるかもしれません。
しかし、家事育児というのは本来、たくさんのスキルが必要とされる立派な仕事です。
それをベースにした資格を取り、関連の企業やお店で働いたり、副業として収入を得たりしている人もたくさんいます。
4年前に、整理収納アドバイザーの資格を取ったというRさん(4歳児のママ)。
「数年前に実家のリフォームを手伝ったときに、大量のモノをどう仕分けて、新しい家の収納はどうするのか…と考えるのが意外と楽しくて。リフォームが落ち着いた後に、整理収納アドバイザーという資格を取りました。
最初は、整理収納アドバイザー資格所有者は時給がアップするという家事代行サービスの会社のパート募集を見つけて採用され、派遣先でお客様に相談を受けてアドバイスをしているうちに、好評だということで正社員にならないかと打診されました。今は、人事部門で新規採用したパートさんに整理収納術を研修する仕事をしています」
月の収入はパート時代の3倍になったとのこと。自分に合った資格を仕事に生かせるのは素敵ですね。
他にも、家事育児の経験や好きなことを生かした仕事には次のようなものがあり、関連の資格や検定試験があります。
- 調理士
- 保育士
- 栄養士/管理栄養士
- 介護福祉士
- 児童発達支援士
- カラーコーディネイター
- ネイリスト
- トリマー
通学や実務経験が必要なものから、独学でオンラインの試験を受けるだけの手軽なものまで様々ですが、「家事の中でも○○が得意」など、今までの暮らしを振り返ってみてつながりの深いものを中心に、どんな資格があるのか調べてみると良いでしょう。
手に職つけて有利に転職したい人向けの資格
転職や再就職、パートからフルタイムの仕事に転職する…といった場合、通勤距離や休日などももちろん重要ですが、給与面でも資格を持っていれば同じ距離・勤務時間でより有利になる可能性があります。
「私は持病があり、立ち仕事や肉体労働に不安がありました。結婚・出産で退職するまで一般事務しかやったことがなく、事務系のパートや派遣の仕事を探したのですが、応募者が多すぎてなかなか決まらず…。
友人に相談したら、経理はどう?とすすめてくれたため、簿記の資格を取ったところ、官公庁の求人に応募して採用が決まりました」(Tさん・小学校1年生のママ)
「スーパーのレジでパートをしていましたが、敷地内のドラッグストアでみた求人の貼り紙をみると時給が今よりも高かったので、応募条件のところにあった登録販売者の資格を取りました。
勉強中に求人は埋まってしまったのですが、近隣のドラッグストアでもけっこうな頻度で募集があるので、受けてみたところ時給200円アップで採用になりました」(Kさん・小学校2年生と6歳児のママ)
調剤薬局事務の資格は難易度別にいくつかありますが、難易度の高いものを取得するほど正社員として働ける可能性が高まり、残業少なめで働けるとして人気の資格です。
そのほか、転職のタイミングで取得しておくと収入アップが期待できる資格には以下のようなものがあります。
- 医療事務
- IT系資格(MOS、ITパスポートなど)
- CADオペレーター
- 宅建
- 司書
これからも需要が増すことが予想される介護系の資格は十数種類あり、複数を組み合わせて取得する人も増えています。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
- ケアマネージャー(介護支援専門員)ほか
国家資格の介護福祉士や、ケアマネジャーは実務経験が必要で難易度も高いですが、専門家として就職先も数多く安定して働ける可能性が高まります。
「いつかは独立!」を目指せる資格
正社員やパートとして雇用されるだけでなく、ゆくゆくは独立して働きたい人向けの資格もたくさんあります。
上記の「好きを仕事に」で紹介したネイリストやアロマセラピスト・カウンセラーなどの資格を取得して自宅でサロンを開業する人も。
「年子のワンオペ育児で腰痛や肩こりが年々悪化し、お世話になった整体師さんがすごく良かったので、どこで学んだのか話を聞いているうちに、私も整体師を目指そうと決心しました。
リフレクソロジーやカイロプラクティックなどの資格も取り、今は別の整体院で非常勤で働いていますが、いずれは自分のお店を持ちたいです」(Mさん・小学校3年生と2年生のママ)
そのほか、行政書士・社労士などのいわゆる「士業」は試験の難易度は高いですが、取得できれば就職にも有利で、将来的に自分の事務所を開業できる可能性も。
人気のFP(ファイナンシャルプランナー)は国家資格ですが、3級は難易度があまり高くないため、まずは3級を受けてみて、向いていると思ったら2級を目指すのもおすすめです。
おわりに
今回は主婦・ママが収入をアップしたり好きなことで働くためにおすすめの資格と、それを生かして働いている人の体験談を紹介しましたが、他にも資格や検定は数え切れないほどたくさんあります。
もちろん、転職や再就職には資格さえ取ればOKというわけではないですし、興味・関心のある仕事にはどんな資格が必要なのか、その資格は本当に有効なのかしっかりと見極めて選ぶ必要もあります。
しかし、資格取得について考えることで、毎日の家事育児で忙しい毎日の中でも、将来のキャリア設計(どんな風に働いてどのくらい収入を得たいのか)を考える良い機会となるのではないでしょうか。
※今回紹介した資格の呼び方は、正式名称のほか一般的になじみのある名称や略称も含まれています。詳細や正確な資格名は各団体のホームページ等からご確認下さい。
文/高谷みえこ ※画像はイメージです。
参考/総務省「資格制度一覧(303制度)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000096556.pdf
厚生労働省「技能検定職種及び等級区分 (都道府県知事の実施する職種)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/ability_skill/ginoukentei/syokusyu.html