令和4(2022)年10月に文部科学省が公開した調査報告(※1)によると、令和3(2021)年度の不登校の小学生と中学生は合計で約24万人と、前年度より5万人近く増えていることが分かりました。

 

不登校には複数の要因が重なっていることも多いですが、今回の調査では理由のトップは「無気力・不安」で、約半数の子が該当しています。

 

たとえ成績が良くても、いじめなど明確な理由がなくても、連日のように感染症や戦争・不況などのニュースが流れる今の社会情勢では、いつどの子が不登校になってもおかしくないといえるのではないでしょうか。

 

そんな時代に親や家庭でできることは限られているかもしれません。それでも子供のためになにかできることはないか、考えてみたいと思います。

長期欠席の児童生徒は41万人、うち24万人が不登校

今回の調査では、令和3(2021)年度に年間30日以上休んだ子は小学生で約18万人(全体の1.3%)と中学生で約23万人、あわせて41万人でした。

 

病気やケガ、経済的理由、新型コロナウイルスの感染回避を目的として出席しなかったケースをのぞいた「不登校」の子は、小学生が約8万人と中学生が約16万人、あわせて24万人。

 

前年の令和2(2020)年度と比べても約4.9万人と25%も急増し、過去最多となっています。

 

ちなみに、義務教育ではないものの現在は大半の子が通う高校でも、約5万人(1.7%)が不登校と前年よりも15%ほど増えています。

 

今回の調査で、小中学生の不登校の主な原因として挙げられているのは以下の5つです。

 

  • 無気力・不安...49.7%
  • 生活リズムの乱れ・あそび・非行...11.7%
  • いじめを除く友人関係をめぐる問題...9.7%
  • 親子の関わり方...8.0%
  • 学業の不振...5.2%

 

もちろんこれ以外の原因や、上記が重なっている場合もありますが、実は別の文部科学省の調査(※2)では「きっかけは自分でもわからない」という回答も約25%以上あり、不登校が一部の特殊な子だけに起きるわけではないことが分かります。

あらかじめ不登校を防ぐのは無理なのか

中学生では20人に1人が不登校という現状に対し、文部科学省では「コロナ禍で日常生活が大きく変化し、学校でも行事や交友関係に多くの制限があるなかで、登校する意欲がなくなった子が増えたのではないか」と分析をしているそう(※3)。

 

もちろん、すべてが世の中のせいだとは言えませんが、生まれつきとても繊細なタイプの子や、人との関わりが器用にできない特性を持った子、学習面で課題を抱えている子などにとっては、コロナ禍でさまざまな制約や変化が加わったことで心の負担が大きくなり、学校に行けなくなってしまった可能性もあります。

 

とすれば、子供が不登校にならないようあらかじめ対策するのは、親や家庭では無理なのでしょうか?

不登校?と思ったときの親の対応は

不登校の始まりは、ある日突然起き上がれなくなる子や、自分の意志で「行かない」と言える子もいますが、ちょっとした体調不良や行き渋りが続き、そのうちほとんど行けなくなるパターンがとても多いです。

 

親としては子供が学校に行かないのはとても心配なので、なんとか説得したり、強く叱ったりして登校させようとするかもしれません。

 

しかし、最近では無理に登校させるのは多くの場合で逆効果だと言われています。

 

子供と多く関わっている医療機関・カウンセラー・研究機関などの推奨する対処方法をまとめると、おおむね以下のようになります。

 

  • 「休みたい」と口にしたときは既に負担が限界なので無理せず休ませる
  • 本人の話を否定せずに聞き、明らかな原因があれば解決を試みる
  • ただし自分でも理由がわからない子も一定数いることを念頭に置く
  • 学校・学校以外含め、どこで相談できるのかを把握する
  • 起立性調節障害など、治療が必要な病気ではないかの診察を受ける
  • ゴールは「元通り学校に毎日行く」だけではないと考える
  • その子に合った配慮や支援で学習を続けられる方法がないか検討する

 

他にもその子によってさまざまな理由や背景があり、それに合った対処方法も考えられますが、まずは上記を頭に置いておくといいかもしれません。

今、親にできることとは

増加の一途をたどる、小中(高)生の不登校。

 

ある日わが子が学校に行けなくなってしまったら、最初はどう対処していいのか分からず、無理に行かせようとしたり、「怠けている」と叱ったりして状況を悪化させてしまうかもしれません。

 

そうならないために、まずは「誰でも不登校になる可能性がある」と想定しておくこと、適切な対処方法(学校に行かせる方法ではありません)を調べておくこと…少なくとも、それだけは今すぐにできることではないでしょうか。


文/高谷みえこ

参考/※1 文部科学省|令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_1.pdf

※2 文部科学省|令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要 https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf

※3 NHK NEWS WEB 小中学生の不登校 昨年度24万人で過去最多 コロナ禍が影響か https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221027/k10013872111000.html