中学3年生が1年間無料で通える足立はばたき塾の授業の様子

「家庭の事情で塾に通えない子どもを救う」。足立区が独自に始めた高校受験のための塾革命がネットでも話題です。ある中学生や校長の話に耳を傾けたことから始まった取り組みは、10年を迎えました。塾の現在について、足立区役所の学力定着推進課・田巻正義さんに話を聞きました。

塾の卒業生から早慶など有名私大合格者も輩出

足立区役所による同区のイメージ調査によると、65.8%が「治安が悪い」と回答。2022年の総務省のデータをもとにした23区の平均年収ランキングでは、足立区は22位。

 

「足立区はマイナスな印象を持たれがちですが、生まれ育った環境に左右されることなく、子ども一人ひとりの夢や希望を持てる地域社会の実現を目指しています」

 

その一環として、家庭の事情で塾に通えない中学3年生が高いレベルの高校進学を目指して、1年間無料で通える「足立はばたき塾」という区独自の取り組みがTwitterでバズり、注目を集めています。

 

じつはこの塾は、2012年から既に10年以上行われています。東京都教育委員会が進学対策に組織的・計画的に取り組む学校を指定した進学指導重点校とよばれる、日比谷や西などの都立難関高校の合格を、開始当初は目指しました。

 

2018年度から始まった「私立高等学校等授業料軽減助成金」により、難関私立や大学附属高に進む生徒も増え、そこも視野に入れているそうです。

 

世帯の所得審査と入塾テストを通過した100名のなかには、それまで自分の偏差値すら知らなかった生徒もいます。

 

「足立はばたき塾」に在籍した1〜5期生が、高校3年生のときに答えたアンケート(回収率56%)によると、筑波・千葉・お茶の水などの国公立大学へ13.4%、早稲田・慶応・上智などの私立大学へ64.9%が進学しています。