自分のことはもちろん、子供を他の誰かと比べても仕方がないのは十分わかっているけれど、やっぱり他の子の成長が気になり、スパッと「比べない子育て」をするのは難しい…そんな人も多いのではないでしょうか。今回は、育児で「誰かと比べること」がどのような弊害をもたらすのか、子育ての場面でついやってしまいがちな例を挙げて解説します。

なぜ親はわが子を誰かと比べてしまうのか

赤ちゃん時代にはママ友の子や近所の赤ちゃんと、園や学校に通えば同級生とわが子を比べて、成長が遅れているところを心配したり、うちの子のほうがよくできると内心喜んだり…。世の親は、なぜ子供をすぐに他の誰かと比べてしまうのでしょうか?

 

考えられる理由は2つあります。

ママやパパ自身が育ってきた環境

いま育児中の30~40代を育ててきたのは、戦後の競争社会を生き抜いてきた団塊~団塊ジュニアの世代です。当時は、全員が与えられた課題を勤勉にこなし、その中でさらによく働く人が出世していく世の中でした。

 

一方、現在のビジネスの世界では上からの指示をこなすだけの組織では国際社会で生き残ることは難しくなり、新しい発想や答えのないところから課題を解決する力などが必要になりつつあります。

 

しかし、まだ従来の枠組みの中で周囲よりも成績をあげて出世するスタイルの会社はたくさんありますし、学校教育のシステムも根本的な部分は昭和からそれほど変化していません。

 

そうなると、ママやパパにとっては「みんなと同じようにできて」「さらにその中で競争に勝つ」というのがやはり勝ち筋と思えるし、わが子にもそれを期待するでしょう。

「人並みでないこと」への不安

歩くことから始まり、言葉を話す、おむつが外れる、字を読み書きできるなど、まわりの子がみんなできているのにうちの子はまだ…となると、「この子は発達が遅れているのかも」「将来自立してやっていけるのだろうか」と心配になるのは、親であれば誰しも理解できると思います。

 

子供を思うからこそ、幸せな人生を歩ませたい・人並みに苦労せず生きてほしいと考え、平均よりも遅れているとそれが叶わないのでは…と心配になるのですね。

子供を誰かと比べることの3つの弊害

親が子供を誰かと比べてしまうのは、基本的には愛情から出たもの。

 

本来は子供がこの世にいてくれるだけで100点満点なのに、つい他の子はもうあれができるのに…上の子はこの年でとっくにできていたのに…と比べてしまいますよね。

 

しかし、その比較が行き過ぎると、子育てに悪い影響を及ぼしてしまうこともあります。

 

自分自身や親の愛情に自信が持てなくなる

子供の成長発達、得意不得意は個人差がとても大きいもの。

 

しかし、凸凹の凹んだ部分ばかりに目を向けて、いつも兄弟や同級生と比べて「なんであなたはこれができないの?」と言い続けていれば、自分に自信が持てなくなるのは当然ですよね。

 

いくら子供にやる気を出させようという思いや愛情からだとしても、頑張ったことやできるようになったときにはほめてもらえず、できないことを誰かと比べられてばかりだと、子供は「ママやパパは自分が好きじゃないんだ」と感じる可能性すらあります。

比べられた相手に敵意を持つ

クラスメイトやきょうだいでよくできる子がいる場合、つい親としては励ますつもりで「お兄ちゃんみたいにがんばって!」といった声かけをしてしまいがち。

 

しかし、ママやパパが職場で上司から「Aさんはいつも業績がいいね、君も少しはがんばって」「Aさんはあんなに報告書をきちんと仕上げているのになぜ君はこんな出来なのか」と叱責されてばかりだとしたら、Aさんがいくらいい人でも、素直に好きになれるでしょうか?

 

それと同じように、比較して競わせることで子供の力を引き出そうというやり方は、子供同士の関係を悪くしてしまう可能性があります。

シンプルに、幸せを感じにくくなる

「Bちゃんのほうが早く歯が生えた」「うちの子は運動会でかけっこがビリだった」「Dくんが名門の学校に合格した」など、たとえ子供自身がなにも感じていなくても、親としてはつい比べてしまって焦ったり、落ち込んだりすることもあります。

 

でも、もしそこで他の子と比べていなかったら、かわりにもっと幸せな時間を過ごせたかもしれません。

 

歯が生える前のかわいい笑顔のわが子とニコニコ遊んだり、去年よりしっかり腕を振って走る姿に成長を感じたり、受験勉強のかわりにのんびり親子で雲の形を眺めたりできたのではないでしょうか。

 

あらゆる場面でまわりと比べ「優れている」という状態を目指してしまうと、究極には世界一でないと幸せではない…ということになってしまいます。

 

一度しかない子供時代なのに、目の前の幸せを見ずに過ぎてしまうのはとてももったいないですよね。

比較してはいけない場面、比べても良い場面

子供をつい比べてしまうのは次のような相手・場面が多く、ほとんどは避けたい場面や相手ですが、ひとつだけ問題がない比較もあります。

きょうだい、親戚

きょうだいはいつも近くにいて似ている部分も多いだけについ比べてしまいそうになりますが、同じように育てても生まれつきの気質や得意分野はかなり違うことも珍しくありません。

 

また、イトコ同士は年が近いとつい比べられがちですが、お互いの関係を悪くしないためにも、親はもちろん、祖父母や親戚からも「Aくんのほうが年上なのに背が低いねえ」といった比較は避けたいですね。

ママ友の子

よく一緒に出かけたり遊んだりするママ友同士は、子供の成長を相談できる心強い相手である反面、ふとライバル心が芽生えてしまうことも。

 

関係性が近く年も近いと、ちょっとした発達の差がとても大きなものに思えることもありますが、乳幼児検診等で何も言われていないのであれば、人生の中ではわずかな差。そんな俯瞰的な視点を持てるとよいですね。

自分の子供時代

子供が小学生・中学生になってくると、ママやパパも自分が同じ年の頃を覚えているかと思います。

 

もし、ママやパパがとても几帳面な子供だったのにお子さんがおおらかなタイプであれば、「私はこの年の頃にはもっとしっかり色々できていた」という思いから「なんでこんなことができないの?」という口調になってしまいがち。

 

親子でも性格は違うので、自分だけを基準にしないようにしたいですね。

SNS

学生時代の友人のSNSを見ると、サッカーのキャプテンになった、バレエ・ピアノの発表会に出たなど、キラキラ活躍する姿がアップされていて、「この差はなに?」と焦ってしまう…といったことはないでしょうか。

 

しかし、その子だって、SNSに出てこない部分では悩みを抱えているかもしれません。

 

SNSは基本的に良い部分だけを切り取ったもので、それと目の前のわが子を比べても仕方がないと思っておくのが良いですね。

 

過去の子供自身

最後に「過去のその子自身」とは、どんどん比べてもいいと考えます。

 

たまには、小さいときはプールへ飛び込んでいたのに、身長が伸びて視点が高くなったら怖くてできなくなった…といったパターンもありますが、多くの場合は、去年の今頃は届かなかった鉄棒に手が届いたり、1年生の最初と最後では見違えるようなしっかりとした字を書けるようになったりと、成長を感じる瞬間がたくさんあるはず。

 

毎日子供と一緒にいると、今できていることが当たり前に感じてしまいますが、意識的に「先月はこれできたっけ?半年前は?去年は?」と思い返してみると、「こんなこともできるようになったんだ!」と声をかけやすくなりますよ。

おわりに

子供は、たとえ赤ちゃんでもママやパパなど身近な大人の表情をすごくよく観察していて、その人が残念そうな顔で自分を見ていると傷ついたり自信を失ったりします。

 

また保育園や幼稚園から小学校へと進むにつれ、子供自身もいやおうなく勉強や運動などで競争する機会や比べられる体験が増えていきます。

 

将来のことを案ずるあまり、親はついついわが子をまわりと比べて心配してしまうものですが、できるだけ、家では誰とも比べずに、そのままでほっとひと息つける環境をつくってあげたいですね。


文/高谷みえこ ※画像はイメージです。