現在、4歳の女の子と、1歳の男の子を育てながら、ラジオ番組などで活躍中のフリーアナウンサー、吉田明世さん。2人目の産後3か月で、平日朝6時からのラジオ番組「ONE MORNING」(TOKYO FM)を担当することに。朝4時に起きてそっと寝室を出るそうですが、時には子どもを起こしてしまい、ギャン泣きされてしまうことも。そんな中、支えになったのが、夫の変化でした(全4回中の2回目)。

 

吉田明世さんとユージさん
レギュラー出演する「ONE MORNING」(TOKYO FM)では、同じく子育て中のユージさんと共にMCを務める

毎朝4時起きで朝の生放送を担当

── 2020年12月に二人目を出産後、2021年4月から月~金で朝6時からのラジオ番組「ONE MORNING」(TOKYO FM)を担当されています。朝のルーティンはどうこなしているんでしょうか?

 

吉田さん:最近は、ルーティンもだいぶ安定してきました。いろいろ試行錯誤はあったんですけども、今は子育ては基本的に、朝は夫が担当して、夕方から寝かしつけまでは私が担当しています。

 

私は午前4時に起き、こっそり忍者のように寝室を出て(笑)。代わりに夫に寝室に移動してもらい、私はパッと着替えと歯磨きだけして、5時にラジオ局に到着するように家を出ています。

 

── 最初の頃は、家を出る前にお子さんが泣いて大変だったそうですね。

 

吉田さん:大変でした…。私はありがたいことに、実家が家から近いので、母にすごく協力してもらえたんです。番組開始当初は、当時生後3か月の息子を朝方実家の母に預け、3歳の娘はパパと保育園に行く、というルーティンだったんです。

 

ただ、やっぱり娘は、私がいなくなることに加えて、弟もいなくなってしまうということがすごく寂しかったみたいで。私が出かけるとき、ちょっとでも物音がすると、過敏に反応して起きて、大泣きしてしまい…。週に2~3回はそういう日がありました。

 

できるだけ「仕事で寂しい思いをさせてごめんね」という、仕事に対するマイナスの言葉は発さないようにしていたんですが、そういうときは、どうしても「申し訳ない」という気持ちが生まれてしまって…。

 

当時は、毎日出かけるのが苦しかったですね。後ろめたさを抱えながらの日々ではありました。

 

月〜金の午前6時からの放送のため、毎朝朝5時にTOKYO FMに到着するように家を出るそう

「子どもだからわからないだろう」ではなく…

── どんな風に解決したんですか?

 

吉田さん:娘の寂しい思いは消えないので、できるだけ説明するようにしていましたね。「子どもだからわからないだろう」じゃなく、ちゃんと言葉で伝えるようにはしています。

 

「ママはあなたたちが大切。ママがお仕事大好きなこともあるけど、あなたたちに、習い事やいろんな経験をさせてあげたいから、そのためにはお金が必要で、お仕事をする必要がある。それで朝早くお出かけしているんだよ」って。

 

「ママもお仕事頑張るから、あなたも保育園頑張ってくれる?」と説明するようにしています。

 

── 納得してくれるようになりましたか?

 

吉田さん:なってくれましたし、あるとき「将来はママと一緒のお仕事がしたい」って言ってくれたんです。

 

「どうしてママと一緒のお仕事がしたいの?」と聞いたら「ママと一緒にお仕事に行けて、ずっと一緒にいられるでしょ」って言われて。

 

私の仕事に興味を持ってくれたというより「ママと一緒にいたい」と思ってくれたみたいで、また胸がギュッとなったんですけど…。明るく振る舞ってくれているけど、やっぱり心のどこかで寂しさも抱えているのかなとは思います。

 

でも、こういったことがないと、お父さんとの関わりもなくなってしまうので。夫も大変な思いをしているんですが、子どもたちと向き合うきっかけができたので、良かったと言ってくれていますね。

 

吉田明世さん
デニムのリンクコーデをした吉田明世さんと娘さん。仲良く両手を繋いで

ギャン泣きの娘と格闘し、半べそだった夫が…

── サンジャポで「お侍さん」と呼ばれていた旦那さんですよね。育児の戦力的にはいかがでしょうか?

 

吉田さん:はい(笑)。上から目線で申し訳ないですけど、夫は目に見えて成長をしているんですよね。

 

先日、夫とも思い出話をしていたんですが、娘が生後3~4か月くらいのとき、夫の両親の会いに宮崎に行き、温泉つきのホテルに泊まったんです。

 

私は産後ゆっくり湯船につかることがなかったので、夫が気をきかせて「たまにはゆっくり湯船につかってきていいよ」って言ってくれたんです。娘もご機嫌だったし、大丈夫かな、と思って、40分間くらい部屋を空けたんですね。

 

ただ、部屋に戻ったら、もう大惨事で。部屋のお風呂場は水浸しで、娘のうんちまみれの洋服が散乱していて。娘はギャン泣きで、呼吸困難になりかけていて、そんな娘を抱っこしながら半べそかいている夫がいて…。

 

── 地獄絵図ですね…。

 

吉田さん:私が部屋を出て10分後にはすでにダメだったらしく、夫は30分以上、ギャン泣きの娘と格闘していたそうです。

 

当時の夫は、それで自信を失ってしまったそうですが、今となっては、息子のうんちも替え、娘と息子の朝ごはんも作り、着替えもして、保育園に時間までに送り届けるということを卒なくこなしているので、夫も「人間って成長するんだね」って言っていました(笑)。

 

── すごい変化ですね!

 

吉田さん:子どもにとっては、安心感とかそういった意味で、「お母さん」「お父さん」の役割はあると思うんです。

 

でも、「ママじゃなきゃダメ」っていうことはないんだなと、お互いに実感しました。関わったら関わった分だけ、かけた時間だけ、子どもとの信頼関係が築かれる。

 

もしかしたら、娘が思春期になったら、「パパ嫌、あっちに行って」って時期が来るかもしれないんですけど(笑)。でも、今パパと過ごした時間は、子どもたちの心の中に刻まれると思うんです。仕事をするのは罪悪感もあるんですけど、励みになっていることのひとつですね。

1歳の息子が「バイバイ」と送り出してくれた

── 今は「パパ、嫌」というのはなくなりましたか?

 

吉田さん:そうですね。昨日も朝、出がけに二人とも起きちゃって、シクシク泣いちゃったんですが「ママ、お仕事行ってくるから、またねんねしてくれる?」って言ったら、気持ちが落ち着いたタイミングで娘は「わかった」って言ってくれました。

 

いつも二人の気持ちが安定するまでトントンしたりするんですけど、1歳の息子はまださすがに気持ちが切り替えられないだろうなと思っていたんですね。でも息子にも「これからお仕事行ってくるから、パパと姉ねと、一緒にねんねしてくれる?」って説明したら、「うん」って言ってくれて。

 

「行ってくるね」と言ったら、息子は「バイバイ」と言ってくれたんです。1歳にして状況を飲みこんで、自分の気持ちをコントロールして、送り出してくれた息子が頼もしく思いました。

 

子どもたちとパパとの信頼関係があるからこそだと思いますし、子どもの精神面での成長を感じられましたね。

 

── 素敵ですね。朝や夕方の帯番組を担当されて、毎日ハードスケジュールだと思いますが、子どもと過ごす時間はどう確保しているんですか?

 

吉田さん:そこはフリーランスのありがたいところでもあるんですけど、土日は基本的には子どもとの時間と決めているんです。

 

もし土日に仕事が入ったら、平日朝ラジオだけな日は、日中子どもたちと過ごす時間に充てたり。1週間とか2週間の中でのバランスを見て、子どもとの時間をつくるようにしています。

 

PROFILE 吉田明世さん

1988年生まれ。2011年TBSにアナウンサーとして入社。2019年にフリーに転向。二児の母であり、保育士、絵本専門士の資格を持つ。「ONE MORNING」「THE TRAD」(いずれもTOKYO FM)にレギュラー出演中


取材・文/市岡ひかり 写真提供/吉田明世さん