今、小中学生くらいまでのお子さんのいるママ・パパの皆さんは「アクティブラーニング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
今回は「アクティブラーニング」の意味や、近年の学校教育に取り入れられるまでの背景、具体的にどんな学び方なのか…などを解説します。
いまの小学校の授業は昔と違う?
現在小学生のお子さんがいる方は、授業参観に行くと「なんだか昔と違うな」と感じることはありませんか?
ひと昔前の映画やアニメでは、ほぼ100%、教室では全員が前を向いて先生の話を聞き、当てられたら立って教科書を読んだり答えを言ったりします。
しかし最近では、授業の最初にいきなり隣同士で机を向かい合わせたり、数人でグループを作って授業がスタートすることが多いのではないでしょうか。
上記はコロナ禍でやや減ったとはいえ、現在の小学校の学習ではこういった「意見を出し合う」「話し合う」「推測する」「仮説を立てる」「まとめる」という形の授業が、20~30年前と比べて増えています。
アクティブラーニング導入の背景とは
昭和の高度経済成長期、日本では「モノづくり」、つまり製造業が経済の重要な役割を果たしていました。
製造業の現場では決められた作業を正確に早く仕上げる勤勉な人材が求められましたが、その役割は年々ロボットやAIが担うようになり、今後必要とされるのは、枠組みのない状況でも自分の知見と発想で解決方法を生み出せる創造的な人材だといわれています。
こういった人材の育成に有効な学び方として提案されたのが「アクティブラーニング」です。
アクティブというと元気で活発といったイメージが浮かびますが、本来は「アクティブ=能動的な」というニュアンス。アクティブラーニングの反対語は「パッシブラーニング=受動的な学び」となります。
いまから10年前の2012年に、より社会人に近い大学生向けに以下の提案が行われ、その後の2014年には小・中・高にも広まっていったとされています。
「障害にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を作り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」(中央教育審議会・2012年)
「アクティブラーニングはもう古い」とは?
ところが、実は小中学校でいつ/何を/どう学ぶかという計画を立てるのに使われる文部科学省の「学習指導要領」の最新版には「アクティブラーニング」という項目は見当たりません。
このことから「アクティブラーニングはもう古い用語だ」と言われることも。
しかしよく見てみると、アクティブラーニング的な学習が否定されているわけではなく、最新の学習指導要領(2017年)には「主体的・対話的で深い学び」という日本語でほぼ同じ内容が記載されています。
そもそも大学等と比べて、小学校では理科の観察実験、社会での班学習など、アクティブラーニング型の授業は以前から比較的多くみられていました。
ペアやグループで意見を共有していく「Think Pair Share」という授業のスタイルは、1人では思いつかない視点が生まれる、「みんなの意見」だから普段は自分の意見に自信がない子でも発表のハードルが下がる…といったメリットがあります。
また個人的な意見にかかわらず賛成派と反対派のグループにあえて分けて議論を行う「ディベート」では、社会生活では知識があるだけではダメで、それを応用して判断することではじめて成果が得られることを体感できます。
こういった学びの環境を整えるには、より入念な準備や円滑な進行のスキルが求められます。また、形だけアクティブラーニング的な授業を行えばいいわけではなく、あくまでもゴールは子供たちが主体的に学んだかどうか、知識を習得しただけでなくそれを使いこなせるようになったかという点です。
そのため、小学校でのアクティブラーニングはこれからも時代に合わせて変化していくと考えられます。そんなことをふまえつつ、授業参観に足を運んでみると興味深いのではないでしょうか。
おわりに
これからの時代に最適化した人材育成をめざして導入された「アクティブラーニング」。
「教育って企業や社会にとって役立つ人材を育成するためにやり方を変えているの?」と少し複雑な思いもありますが、正解がないところから自分の力で答えを見つけ出すスキルは、子供たちにとって、先行きの見えない社会を生きる上で持っておいて損はないといえるでしょう。
文/高谷みえこ
参考/新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申):文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm
平成29年度 小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文部科学省説明資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1396716.htm