もうすぐ夏休みも終わりですね。なかにはすでに2学期がスタートしている地域・学校もあるかもしれません。お子さんは夏休みの宿題はスムーズにできたでしょうか?夏休みの宿題以外にも、日頃の宿題や自主学習など、子供は毎日長い時間を勉強にあてなければなりませんが、いつでも楽しんで取り組める子はそんなに多くはないでしょう。

 

「なんでこんな勉強しないといけないの?将来絶対に使わないのに」。学年が上がるにつれて、ママやパパにそんな不満をぶつけてくる子もいるかと思います。

今回は、そんなときのさまざまな回答例を紹介します。お子さんの性格やママ・パパの価値観に合うものがあればぜひ使ってみて下さいね。

回答例その①模範回答系

子供から「なんでこんな勉強しないといけないの」とはじめて言われたときには、まずは標準的な説明をしてみてもよいかもしれません。

 

「いまやってる勉強ってね、家やお城の土台みたいなもので、ただの石のかたまりに見えるかもしれないけど、将来その上にそれぞれのやりたいことを積み上げると、お店や野球場や病院、好きな仕事場になるんだよ。もし、土台がぐらぐらだと、なりたい仕事になれないかも」

 

と基礎固めの時期の大切さを教えたり、

 

「大きくなったらどんな仕事をしたいかもう決まってる?仕事によっては、そのための学校を卒業しないとなれない仕事があるんだ。たくさんの種類の仕事が君を待ってるのに、今から選択肢を減らしちゃったせいで選べなかったら残念だよね」

 

「大昔の子供たちは学校なんてなかったけど、そのかわり、親の職業をそのまま引き継がないといけなかったんだ。今は違うよね?好きなことを勉強して好きな仕事が選べるよ。どっちがいい?」

 

と、将来やりたい仕事が決まるまでは選択肢を広く持っておこうという考え方を伝えてみましょう。

回答例②メリット提示系

「こんな計算や知識、大人になったら使わないしムダ~」と言う子には、「いや、実はこんなときに役に立つんだよ」とメリットを示してみては。

 

「勉強の内容は使わないかもしれないけど、勉強のやり方も将来役に立つよ。例えば英語をマスターできた人は、そのときの手順を使って、フランス語や中国語、プログラミング言語など、別の言語を覚えるのがずっと早くなるんだって」

 

と、勉強のやり方が応用できることを教えたり、

 

「有名な画家のゴッホ、知ってるよね?以前、ゴッホを知らない…というか覚える気のなかった人が、亡くなったお父さんが持っていた高価な絵を、”ゴッホ?知らないや”と捨ててしまったんだって。知ってたら、売って大金が手に入ったかもしれないのにね」

 

と、逆に勉強しないとソンをするという例え話も有効かもしれません。

ちなみに、一昔前によくいわれていた「嫌なことでも我慢して最後までやりきる力が身につく」というメリットは、高度経済成長期に忠実で勤勉な人材を育成するには都合が良かったのですが、これからの社会ではそこまで重要視されなくなると予想されています。

回答例③「勉強とは」見直し系

「なんでこんな将来使わないようなことを勉強しないといけないの?」

 

「スマホで調べたら分かるじゃん」

 

という子供の問いをよくよく考えてみると、そもそも「勉強」とは?という疑問がわいてくるかもしれません。

 

「世の中、正解があるものとないものがあるよね。正解があるものはたしかに調べれば分かるかもしれない。でも、大人になって、例えば1000万円の貯金で自分のお店を開くかどうか迷った時には、スマホでは正解なんて分からない。だから、お金のことや商品のこと、法律のこと、お客さんの心理なんかをたくさん勉強しないといけないよね。今学校でやっているのはその始まりの部分なんだよ」

 

日本では、他の国と比べて、考え方や視点を評価するのではなく、用意された正解を答えられるかどうかで採点するテスト問題が非常に多いといわれています。だから子供から上のような不満がでてくるのかもしれませんね。

 

「”勉強”って本来はゴールや目的にたどりつくための手段なんだよね。あなたたちがやるべきは、知らなかったことを教わったり調べたり考えたりして喜べる”学習”のほうだよね。大人になっても教科書の内容をどんどん詳しくつきつめていくのは”学問”や”研究”で、歴史や文化などをきちんと知って会話や生活の中で使いこなすのは”教養”だね」

と、勉強と学習・学問・教養の違いについて子供と一緒に見直してみるのも良いかもしれません。

おわりに

福沢諭吉の『学問のすゝめ』では、「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」が有名ですが、続きも含めて現代語に訳すと以下のようになります。

 

「人はもともとみんな平等で同じだといわれるが、世の中を見れば賢い人も愚かな人もいて、貧富の差や身分の高低もずいぶんある。生まれた時は同じでも、しっかり学問に取り組んだかどうかで、賢く金持ちにも卑しく貧乏にも人生は変わるのだ」

 

ここでの”学問”は仕事に役立つ実用的な知識や技能を指していますが、時代背景は違えど、勉強や学習は自分の未来のために色々なことを身につけていく充実した時間であるべき。

 

とはいえ、大人が納得できないことを言い聞かせても子供はすぐ分かってしまいます。

 

もし、今回の記事でうなずける回答例があれば、ぜひママやパパの体験もまじえて話してあげて下さいね。それがきっとお子さんにとっての「神回答」になるのではないでしょうか。

文/高谷みえこ

参考/内閣府|創造的な未来を切り拓く子供・若者の応援(第1節)グローバル社会で活躍する人材の育成 https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r02honpen/s6_1.html

書籍『学問のすゝめ』福沢諭吉・著/岩波文庫