2022年6月に発表された国の「出生に関する統計」によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」いわゆる出生率は、最新のデータとなる2021年には1.30となりました。

 

これは日本で過去4番目に低い出生率で、2021年に生まれた赤ちゃんの人数(出生数)も約81万人と過去最少でした。

コロナ禍が影響している可能性もありますが、実は海外の先進国ではコロナ禍にもかかわらず出生率がプラスに転じている国も多く、日本で出生率が下がり続けているのには他にも多くの原因が重なっていると考えられます。

 

読者には子育て中の人が多いですが、このまま少子化が続くと、子供たちはどんな未来を生きることになるのか予想してみました。

日本でどんどん出生率が下がっているのはなぜ?

日本ではこれまで何度か出生率や出生数が増減していますが、全体的にみると、団塊ジュニアといわれる今の40~50代の人たちが生まれた1970年代前半とくらべ、赤ちゃんの人数は200万人から81万人と半分以下に減り、出生率も1974年の2.05→1.30まで下がっています。

 

これには以下のような理由があると考えられています。

 

  • 価値観の多様化により、結婚しなければいけない・子供を持たなくてはならないと考える人が減った
  • 結婚したいと思っているが、収入が少ないなどの理由で結婚できない人が増えた
  • 女性のライフスタイルの変化で初産年齢が上がり、何人も産み育てるのが難しくなった
  • 教育費をはじめ、子育てにお金がかかりすぎる
  • 子育て支援に関する予算の割合が欧米先進国と比べると少ない
  • 海外と比べて婚外子(結婚していない男女の間に生まれた子供)への理解や支援が少ない
  • 女性の家事育児負担時間が長く、仕事との両立が難しい
  • 男性の長時間労働や育休が取りづらい職場が多く、子育てに参加できない
  • 子供や子育て世帯が暮らしにくい社会の空気がある

このまま子供が減るとなにが起きるのか

「子供が減ってるとはいえ、まだ近所にはたくさん同級生がいるけど…」

 

「受験戦争や就活も競争率が下がって楽になりそうだし、別に気にしなくてよいのでは」

 

現在お子さんを育てている人は、そんな風に感じるかもしれません。

 

ただ、地域によって差はあるものの、すでに少しずつ色々な変化が起こっており、将来、お子さんやママ・パパが次のような事態に直面する可能性も。

 

  • 今後10年で小中学生が今より100万人も減り、行事が成立しなくなったり、学校が統廃合されて通学しにくくなったりする
  • 高校大学の学生数も減り、縮小や統廃合で進路選択の幅が狭くなる
  • 若い働き手が減ることで企業の生産性や収益が下がり、収入(給料)も下がる
  • 税収が減り、最低限の生活を維持するための公共福祉を受けにくくなる
  • お店や病院などがなくなり、慣れ親しんだ土地に住めなくなる

 

特に、人口の少ない地方を中心にこれらが起きていくと予想されています。

ママ・パパに聞く「いちばん望んでいること」

これからの子供たちの未来を考えたとき、いちばん「こうなってほしい」と思うのはどのようなことか、現在0~18歳のお子さんがいるママ・パパに聞いてみました。

 

「幼保無償化ももちろん良いんですが、本当にお金がかかるのは大学の学費や、そこに至るまでの受験に必要な塾通いなどの教育費です。子供のために塾代を稼ごうと一生懸命働いたら、待っているのは、所得制限で児童手当や奨学金を利用できないという事実。国からの補助などで大学の学費そのものを下げるか、所得制限をなくしてほしいです」(Yさん・17歳と13歳と10歳のママ)

 

「共働きがこれだけ多いなか、一方的な転勤命令は時代に合っていないと思います。会社の都合だけを最優先するのではなく、従業員と家族のライフプランも考えてまずは相談してほしいですね」(Kさん・3歳児と0歳児のパパ)

 

「フルタイムで働いていますが、熱を出したら当然のように母親が迎えに行くのってなんなんだろうと思います。子供は大切なのでもちろん早退は仕方ないですが、子供1人でもけっこう頻繁なので、これじゃ仕事の評価が上がるわけないですよね。こんなとき、両親が同じように迎えに行けて、それを低評価しないような職場や社会だったらもう1人産みたいですが」(Yさん・1歳児のママ)

 

「いまってどこにいても子供の声がうるさいと言われるし、迷惑な存在として扱われるばかり。子供って最初から完璧な存在ではないですよね。自分も迷惑をかけてきたのだから他人にも寛容になろうと教える国もあるのに、日本ではどんどん親子の居場所がなくなっていくので、まずはこの空気が変わってほしいです」(Jさん・4歳児と2歳児のママ)

おわりに

結婚するかしないか・子供を産み育てたいか、それ自体は個人の自由です。

 

ただ、「本当はもう1人子供が欲しいけど、お金やいまの社会を考えるとやっぱり無理」「この社会の中で幸せに子育てできる未来が描けない」といった理由であきらめている人がいるのは放っておけない状態ではないでしょうか。

 

このまま少子化が進むと、子育てをしている人だけではなく全世代が困ることも予想されます。国や会社だけでなく1人1人の個人がより子供を育てやすい社会へと方向転換することを心から願います。

 

文/高谷みえこ

参考/令和3年度 出生に関する統計の概況|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/index.html

出生数の減少と出生率の低下: 子ども・子育て本部 - 内閣府 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2004/html_h/html/g1120010.html