ビーチで何時間も遊ぶ3人の子どもたち

テレワークが普及し、地方移住を検討する人が増えました。関東から沖縄の離島に移住して3年たった家族がいます。恵まれた自然で子どもがのびのびと育つ一方で、「え、これも?」と思うような出費がかさんで頭を悩ますことも。離島暮らしで見えてきたリアルを、沖縄県・竹富島に住む片岡由衣さんに聞きました。

街全体がまるでレジャー施設も…

「竹富島は家族旅行で訪れたことがあるだけでした。転勤族の夫が、次の異動願いを竹富島にしようかなと言ったときは、希望が通るかもわからないし、でも“面白いかも”と」

 

異動の希望が叶って実際に住んでみると、竹富島の街並みの美しさに圧倒されたそう。

 

竹富島は1987年に国から『重要伝統的建造物群保存地区』に指定をされていて、街並みが保存されていることがその理由とのこと。

 

ご近所さんから庭で採れたバナナをお裾分けしてもらったり、自宅から自転車で10分のビーチで遊んだり。

 

家の前で天然記念物のカメに遭遇したこともあるとか。絵に描いたような南国生活を送っているそうです。けれども、地方や離島ならではの不便さも。

 

「都心暮らしの時は行っていた遊園地や博物館などへ連れていくことは難しくなりました。

 

でも、子どもたちと海に行けば、何もない砂浜で数時間走り回ったり、海で遊んだり、ヤドカリをずっと追っかけたりして楽しめます。

 

一見なにもないように見えても、子どもたちにとっては最高の環境なのかもしれないと感じています」

 

博物館や美術館、コンサートなど、子どもたちに文化的体験をさせたいと思うと、飛行機で移動する必要があります。

 

交通費も含めてトータルで考えると、レジャー費は関東に住んでいた頃とあまり変わらないそう。

食費や習い事のコストが高い訳

「竹富島にはコンビニ、スーパー、本屋はもちろん、信号すらありません。買い物は週に1回、わたしが船で片道15分の石垣島に行きます。

 

家族5人の1週間分の買い出しはけっこうな量に。悪天候で船が出ないこともあるので、天気予報次第では多めに買い物しておく必要もあります。

 

また、ピアノやプログラミングなど子どもたちの習い事も、船で石垣島へ。船を降りてからバスに乗るため低学年のうちは毎回付き添いが必要で、時間やお金の負担もあります。

 

竹富島に長く暮らしている人のなかには、石垣島にも車を持つ人もいます。石垣島にも駐車場を借りて車を置き、石垣島でも車移動ができるようにしているみたいです」

 

石垣島で購入する食料品には輸送費も含まれているため、食費は関東に住んでいたときの1.5倍ぐらいかかる印象とのこと。

 

また、都市ガスがなくプロパンガスを使うためガス代も高くつきます。

 

「卵は10個で250円前後、牛乳も1リットル250円ぐらい。モヤシは70〜100円もするので買わなくなりました」

 

さらに、竹富島には宿泊施設はありますが、「賃貸住宅がない」ため、住み込みの仕事を決めてからか、知り合いのツテがないと移住は難しいとのこと。

 

お隣の石垣島も賃貸住宅の数は多くなく、家賃も地方都市と変わらないそうです。

年間20回ある祭事の参加は自由

竹富島には年間20回ほどの祭事がありますが、仕事が忙しいなか夫も地域の行事には積極的に関わっているそうです。

 

コロナ禍で縮小傾向にあるものの、子どもたちも楽しんで参加しています。

 

「“1度住んだらみんな島の人だよ”と温かく受け入れてくれる雰囲気です。地域の行事に関わるかどうかは人によりますね。強制するような感じもありません。

 

わたしたち家族はせっかく住むのだったら、その土地ならではのことを楽しもうというタイプなので、どんどん参加しています」

 

海外留学に憧れていた片岡さん。「国内でもそれまでとまったく異なった地域に暮らせば、新しい世界を発見できて異文化体験ができる」と離島生活を謳歌しています。

取材・文/清宮あやこ 写真提供/片岡由衣