学校の勉強が難しくてついていけない「落ちこぼれ」という言葉はよく知られていますが、「浮きこぼれ」という言葉を聞いたことはありますか?

 

知らない、聞いたことはあるけど意味は分からない…という人も多いのではないでしょうか。

 

今回は、「浮きこぼれ」の意味や特徴、似た状況で使われる「ギフテッド」との違い、小学校で子供が浮きこぼれになってしまった時の対処法などを解説します。

浮きこぼれ(吹きこぼれ)とは

「浮きこぼれ」は、おもに小中学校の子供に対して使われる言葉で、特定の分野、あるいは勉強全般の能力が同じ年齢のクラスメイトと比べて高すぎる子がなりやすい状態です。

学校の授業がかんたんすぎて苦痛だったり、まわりが「この子は変」といった目で見始めて集団の中で浮いてしまうなど、その子にとっては、ふつうに学校に通って授業を受ける…という行為がとても辛いものになります。

 

同じ意味で「吹きこぼれ」と呼ばれることもあります。

「ギフテッド」と浮きこぼれの違い

同じく、同年齢の子と比べて飛び抜けて知的能力が高い子供のことを「ギフテッド」「才能児」ということもあります。

 

「浮きこぼれ」の子も同じように高い能力を持っているのですが、本人が苦痛や困り感を抱えているかどうか…という点が、浮きこぼれのポイントとなります。

 

アメリカをはじめとした欧米の多くの国では、ギフテッドと認定されると、飛び級制度が適用されたり、その子の個性・特性に合った専門の学校に通えたりします。

 

本人に適した学びの環境にいられるのであれば苦痛や困り感はなくなるため「浮きこぼれ」の子はいなくなるのですが、日本では義務教育での飛び級制度は基本的に認められていません。

「頭が良いんでしょ?何が困るの?」と言われるも

「うちの子が落ちこぼれて困っているの...」

 

落ちこぼれという言葉のよしあしはともかく、上のような悩みは誰にでも「それは心配だね」と理解してもらえると思います。

 

でも、「うちの子、小学校の授業がかんたんすぎて苦しんでいるの」と話しても、すぐには何が問題なのか分かってもらえないかもしれません。下手をすると「自慢?」ととられてしまいかねないですよね。

 

しかし、子供自身にとっては、もっと色々な知識を得たい、深掘りして探求したい…という欲求があるのにも関わらず、わかりきった内容を毎日何時間も座って聞き続けるのはたいへんな苦痛だといえます。

 

子供時代に浮きこぼれを経験した人の中には、「まわりに変な目で見られるので、わざと分からないふりをした」「先生に嫌われるので100点ばかり取らないようにしていた」と話す人もいます。

 

そして、そのストレスから不登校になったり、心身に不調をきたしてしまったりする子も少なくありません。

 

その結果、フリースクールや塾、興味関心のある分野で個人的に学ぶなど、学校の外にしか安心して勉強できる場所がないという状況も起きています。

わが子が浮きこぼれになったら

もし、わが子が上記のような状態になってしまったら、どうすればいいでしょうか?

 

残念ながら、日本の公立小中学校では浮きこぼれの子が思いっきり学べる環境を用意するのは難しいのが現状だといえます。

それは一概に学校や先生が悪いのではなく、現在の学校教育の仕組みそのものが「家庭の経済状況にかかわらずどんな子も平等に学べる環境を」という理念に基づいて作られてきたからです。

 

みんなが同じ進度で進んでいくことを前提としたカリキュラムをもっと柔軟にして、教室で友だちと関わりつつも学習は1人ずつに最適化する…現在、国が進めているICT教育によってそんな学校教育が実現すると良いのですが、実際にはまだまだ時間がかかりそうです。

 

ごく一部の公立の小中学校や、独自のカリキュラムを持つ私立の学校では、そういった能力の突出した子供のための学習環境をととのえているところも出始めています。

 

しかし、地域にそういった学校がなかったり、私立学校の学費が出せなかったりすることも当然あります。

 

そんな場合は、せめて次のような工夫で、せっかくの知的好奇心を生かし、子供の心を守ってあげてほしいと思います。

 

  • 子供の好きなことは、家庭で本や資料を取り寄せる、博物館に連れて行く、専門家に質問の手紙を書くのをサポートするなど、質のよい情報に触れる機会を作る
  • 「簡単すぎてつまらない、辛い」という子供の声を否定せず、可能なかぎり苦痛を軽減できるよう先生や学校に相談してみる(まわりの何倍も早くプリントが解けたら本を読んでも良いなど)
  • 夏休みを利用して、大学などで実施されている講座に参加する
  • 周辺のギフテッド教育が充実している学校の情報を調べておく
  • 勉強以外に苦手なことがあって困っていないかにも気を配り、あればサポートする

おわりに

筆者は小学生時代、国語だけが飛び抜けて得意で、毎年新学期に教科書が配られるとすぐに全部読んでしまい、各単元についている問題も全部解けて、テストも勉強なしで100点という状態でした。

 

他の教科はいたって普通だったので「浮きこぼれ」ではなかったですが、国語の授業はかんたんすぎて退屈で、もしこれが全教科だったら…と思うと、浮きこぼれの子たちの困り感は想像に余りあります。

 

すぐに解決できない問題かもしれませんが、まずは困難な状況にある子たちの現状を理解し、みんなが最適な学びができるよう考えていきたいと思います。

文/高谷みえこ