兼業が終わっても企業とのつながりは続く

3か月の兼業終了後も、田中さんと2社のつながりは続いています。

 

「佐太屋(株)からは、兼業終了後に正式にロゴデザインを仕事として発注いただきました。

 

(株)ディーグリーンと一緒に開発した薬膳スープは、今ベトナムに持ち込んで周囲に感想を聞いています。これは私がやりたいからやっているので無償です。

 

兼業が終了して1年後、日本に帰国した際には、直接お会いしたくて三重県まで2社に挨拶に行きました。

 

私以外にも、現地を訪ねる兼業者はけっこういるそうです。原則3か月期間限定の案件が多いのですが、終了後に案件を延長、または私のように個別に仕事として契約するケースもあります。

 

ふるさと兼業を通した募集には、地方や企業が抱える課題解決に共感し、一緒に取り組みたい想いを持つ人が集まります。

 

終了後も企業の悩みに共に真摯に向き合った仲間として、企業・兼業者双方がこの縁を大切にしようと考えるようです。

 

こんなふうに“プロジェクト終了でさようなら”、にならない関係っていいですね。定期的に、今どうしているか、手伝えることはないかと、互いに聞きたくなる関係が続いています。

 

仕事だけのつながりではなく、もう少し友達に近い(でも友達とは違う)仲間や同志みたいな関係ですね」

 

田中さんに、今後も他の兼業プロジェクトに応募する可能性についてきいてみました。

 

「興味のある案件なら応募するかもしれません。でも、すでに2社と濃いつながりがあるのであまり手を広げすぎるのもどうかな。

 

これまでの2つのプロジェクトで得た関係にとても満足していますから」

「好きだな」「いいな」と思える人たちと働きたい

兼業経験を語るときに、田中さんが何度も口にした言葉は“つながり”。

 

「『ふるさと兼業』を立ち上げた南田さんの“意味的報酬”という考え方にすごく共感します。

 

兼業を経験して“想いでつながる”“やりがい・共感ベースで働く”は自分に合っていると感じます。

 

これからも長く働き続けるうえで、やりがいは欲しいです。『ふるさと兼業』を経験してみて、私の場合はそれが好きな人たち、いいなと思える人と働くことだと気づきました。

 

実際の経験としては、各社ともに月2~4回の打ち合わせを3か月間。やりがいがあるから、そのために週3~4時間を調査や準備に充てました。

 

副業をしてみたいというのが最初の動機ですが、兼業者を募集する企業からの呼びかけに心動かされ自分の力を活かしてなんとかしたい、と応募しました。

 

悩みに共感して集まり一緒に課題に取り組んだ仲間として、その後の経過を知りたいですし、何かできることはないかとずっと気にかけています。

 

一般的な副業や在宅ワークでは、ここまでの思い入れやつながりは生まれないでしょう」

取材・文/岡本聡子 写真提供/株式会社ディーグリーン、田中綾子さん