子育てをしながら会社で働いている人、特にママは、育児との両立で悩んだり、「この働きかたで本当にいいのかな…?」と自問自答したりすることも多いのではないでしょうか。

 

日本では長年、サラリーマンの夫と専業主婦の妻というモデルケースを想定した働き方がスタンダードとされてきました。

 

しかし、少子化と働き手不足が目の前にせまる現代の日本社会では、昔と同じ働き方を社員に強制していてはもう生き残れない…そう考える企業が増えています。

 

そこで今回は、新しい時代の働き方や人材活用として注目の「ダイバーシティ&インクルージョン」について解説します。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?意味を解説

いきなり「ダイバーシティ」「インクルージョン」と、カタカナを並べられてもピンと来ませんよね。1つずつ意味を解説していきます。

 

ダイバーシティ(Diversity)とは日本語に訳すと「多様性」。

 

東京お台場の施設名にもなっているため聞いたことがある人も多いかと思いますが、「シティ」といっても都市のことではありません。

 

年齢・性別・人種・宗教・趣味嗜好など、心身ともにさまざまな属性の人が集まった状態のことをいいます。

そしてインクルージョン(inclusion)は、直訳すると「包括・受容」などとなります。

 

宝石や天然石では古代の植物や昆虫などを包み込んだものを「インクルージョン」と呼んで珍重しますが、そういった「異なるものを包み込む」状態を表すのですね。

 

そして、上記のダイバーシティとインクルージョンの2つを結びつけ、国や社会・企業などが多種多様な人を受け入れてその個性や才能を生かしている状態を「ダイバーシティ&インクルージョン」といいます。

 

ダイバーシティ&インクルージョンは現在、世界の多くの国で目指している社会の姿でもあります。

ダイバーシティ&インクルージョンはこれからの企業イノベーションに必須

でも、なぜ今、そんなにも多様性が重視されるのでしょうか。

 

小学生くらいのお子さんがいる人は、学校の授業や宿題で子供たちが「SDGs」について学んでいるのを見たことがあるかもしれません。

 

SDGsは、国連が提唱する17種類169個の「持続可能な開発目標」ですが、ゴールに向けて進むにあたっては「世界中の誰一人として取り残さない」という理念があります。

 

男の子でも、女の子でも、身体的にハンディキャップがあっても、貧困地帯に生まれても、みんなが自分らしさを発揮して働ける社会こそが、誰一人取り残されない社会だといえますよね。

 

こういった理由から、ダイバーシティ=多様性が認められる社会を目指そうと各国で国民に呼びかけているわけです。

 

ただし、いま多くの企業でダイバーシティ&インクルージョンが必要だと考えはじめているのは、そういった世界的な目標があるからというだけではないようです。

 

それよりももっと切実な「生き残り」がかかっているから、多様性が受け入れられる会社、職場に改革していかなくてはならない…そんな理由からダイバーシティ経営に取り組む企業が増えているといい、その背景には次のような状況があります。

 

  • 少子高齢化で、国内消費も働き手も消費が減っている
  • 時代の変化により、価値観や働き方のニーズが変化している
  • グローバル化経済により外国向けのビジネスや外国人の雇用の割合が増えている

 

今までと同じことをしていては、良い働き手が集まらず国際社会の中で取り残され、会社も傾いてしまう。

 

イノベーション(新しい価値観やアイデア・技術)を創出するには、ダイバーシティ&インクルージョンの視点が必要だ…と考えられているわけですね。

ママ・パパのこれからと子供の未来の働き方

「でも、うちの会社は相変わらず経営陣は高齢男性しかいないし、部内に外国出身の人もいないけど…?」

 

「うちの会社なんて、妊娠すると退職を遠回しにすすめられるし、男性育休なんてとったら左遷されてしまいそう」

 

など、どう見ても多様性を受け入れているとは言いがたい会社・職場もまだまだたくさんあります。

実は、性別や国籍などの目に見えやすい多様性のほかにも、経験や能力といったダイバーシティのとらえ方もあります。

 

まったくの異業種から転職を希望する人や、いっけん社風に合わない雰囲気の人を幅広く採用し、タイプの違う人同士がチームで働くことでこれまでになかったアイデアが生まれる。

 

そんな状態を「タスク型ダイバーシティ」といいます。

 

ママやパパの今の職場に今は外国出身やLGBTQ+の従業員がいないように見えても、新しい提案や前例のないアイデアを、「空気を読まない」としてつぶしてしまわず受け入れるような職場であれば、近いうちにどんどんダイバーシティ&インクルージョンが実現していく可能性があります。

 

反対に、制度としては必ず取れる男性育休が許されない雰囲気だったり、小さい子のいる従業員が急な子供の熱で早退したときフォロー体制を想定せず周囲に任せきりにしたり…こういった会社は遅かれ早かれ衰退していくかもしれません。

 

今の子供たちが成長し就職する頃には、さらにこのダイバーシティ&インクルージョンが重視される社会になっていることでしょう。

 

ママやパパも、一度ダイバーシティ&インクルージョンの視点を持って職場や会社、働き方を見直してみると、お子さんの将来に向けての新しいヒントが見つかるかもしれませんね。

文/高谷みえこ

参考/経済産業省「価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて 」https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/entry/pdf/h27betten.pdf

日本マーケティング学会「企業のダイバーシティ推進とイノベーション創出の関連性に関する考察」 https://www.j-mac.or.jp/oral/fdwn.php?os_id=12