老後に交通費や交際費が増えてしまうカラクリ

老後の生活費の中で予想外にかかる費目のひとつが交通費です。

 

現役時代は会社へ通勤する交通機関の移動には、会社支給の通勤定期券を使っていたでしょう。だから、交通費を意識したことはあまりないかもしれません。

 

しかし、定年した老後は当然ながらそうはいかないですよね。外出したときの移動の費用はすべて実費となり、交通費はふくらんでいきます。

 

交際費や教養娯楽の支出もふくらみやすい費目といえます。理由は「毎日が日曜日」だから。

 

老後は週5日通勤の日々から解放され、毎日が日曜日の感覚で趣味や遊びに時間をついやせます。その分、お金がかかるわけです。

 

加えて、現役時代なら会社の仲間と集まることができましたが、定年後は疎遠になってしまうもの。

 

そこで新たなコミュニティ作りを目的にダンスサークルなどに通えば、そのための衣装や備品を揃えるなど出費はかさんでいきます。

 

さらに、予期せぬお金もかかります。高齢になるにつれて病気やケガのリスクが高まり、比例して医療費は右肩上がりです。

 

骨折などしたら、治療や費用負担の長期化も懸念されます。介護などとなれば、負担はもっと増えるでしょう。

 

衰えは自身の身体だけではありません。マイホームを持つ人は建物や室内設備の老朽化に伴い、リフォームなどの費用が必要になっていきます。

定年前に絶対にやっておかないといけないこと

一方、老後の収入はいくらなのか。先の2021年の家計調査年報によると、65歳以上で夫婦のみ、無職世帯の月の実収入は23万6575円でした。

 

収入の内訳は次の通りです。

 

社会保障給付……21万6519円 

その他……2万56円

 

非消費支出を含めたトータルの支出25万5100円に対し、実収入は23万6575円。つまり、毎月1万8525円が不足することになります。

 

ただしこの赤字は、住宅ローンがない状態での話です。

 

前述した支出の項目で住居は1万6498円でした。この安い金額は住宅ローンが終わり、維持費だけですんでいる数字です。

 

仮に住宅ローンが終わっていなかったら、赤字はもっとふくらみます。

 

私はライフプランニングを行うお客様に、定年までに住宅ローンを完済することを強くおススメしています。

 

そうしないと年金収入から住宅ローンを返済し、残るわずかなお金で老後の生活を送らないといけなくなるからです。

 

老後の収入は年金が柱となるのは言うまでもありません。頼みの綱の年金を確保し、自身でもiDeCoなどで老後資金を蓄えておく。

 

一方で日々の支出を管理し、節約・倹約を心掛ける。同時に、お金をかけずに人生を楽しむ術を心得ておく。こういった意識が明るい老後につながるのだと思います。

 

PROFILE 竹下さくらさん

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科(MBA課程)客員教授。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。卒業後、損保・生保会社勤務を経て、1998年に独立。「なごみFP事務所」を共同運営する。

取材・文/百瀬康司