「授業中でもすぐにウロウロしたり気が散ってしまって、叱られてばかり…」「ちょっとまわりとズレていて、友達が少ない…」お子さんのそんな悩みを抱えているママ・パパはいませんか生まれつきこういった特性を持ったお子さんは、一般的な学校にうまくなじめず、本人も親も苦労することがあります。その特性が一定以上になると「発達障がい」や「グレーゾーン」、つまり脳の発達に偏りがあると診断されることも。

 

しかし今、すべての人の脳には違いがあり「ふつうの子」「発達障がいのある子」と2つに分けられるようなモノではない…という考え方が広まっています。

 

それが「ニューロダイバーシティ」であり、これからは1人1人異なる脳の特性に合わせた教育や働き方を用意することで、学校や会社で「みんなと違う」とはじかれてしまうことのない社会が訪れるかもしれません。


国も注目「ニューロダイバーシティ」の意味は

ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)を日本語に訳すと「神経の多様性」といった言葉になります。

 

でも、それだけでは具体的にどういう意味なのかちょっと分かりづらいですよね。

 

経済産業省のホームページには、ニューロダイバーシティについて


「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方
 

と書かれています。

 

ここでいう「個人レベルでの様々な違い」は、一般的に「発達障がい」に分類されるものを含んでいます。

 

たとえば小学校のあるクラスを見たときに、おとなしい子・活発な子・人との関わりが好きな子・モノでじっくり遊ぶのが好きな子…といろいろなタイプの子がいるのは当然なのですが、中には集団生活を送るうえで大きくまわりと違っている子がいます。

 

授業中にじっと座っていられない、当てられていないのに勝手に発言する、忘れ物がとても多い…。

 

こういった特性のある子は「ADHD」と診断されることがあります。

 

また「それ変な髪型だね」など思ったことをズバズバ言ってしまう、自分の趣味について一方的にまくしたてる、班活動などで臨機応変に動けない…。

 

「ASD」と診断される子たちは、上記のような言動から周囲ともめたり、浮いてしまうこともあります。

教科書や黒板の文字を読むのにものすごく時間がかかったり、頻繁に間違えたりしてしまう…。

 

この子たちは「ディスレクシア」という脳の特性を持っているため、他の子と同じ形では授業が進められません。

 

現在の公教育のカリキュラムの中では、こういった子たちはしばしば「能力がたりない」「ふつうの子より劣っている」と捉えられがちです。

 

しかしニューロダイバーシティの考え方では、これらの違いは能力の欠如や優劣ではなく、『人間のゲノムの自然で正常な変異』だとされます。

 

大昔、まだ人間が原野で暮らしていた頃には、ふつうは思いつかないような方法で狩りを行うADHDの人の発想のおかげで食料がたくさん獲れるようになってきたのかもしれません。

 

人との交流に興味関心が薄く、ひたすら星の動きばかり見続けてきたASDの誰かが暦や高度な天文学を発明したのかもしれません。

 

もし全員が「ふつう」だったら人間社会や文明はここまで発展しなかった可能性が高く、多様性は人類にとって欠かせないものだった…という見方が最近では主流となっています。

 

こういった特性のある人たちを「ふつうの人と同じにできない劣った人」として排除してしまうのは、本人にとってはもちろんのこと、社会にとっても大きな損失ではないでしょうか。

 

ニューロダイバーシティのこういった考えのもと、すべての人が活躍できる社会や、最適な働き方を見つけるべく研究が進んでいます。


「みんなと違う」うちの子も活躍できる社会

社会での受け入れが進むのと同時に、いま、子供の教育も少しずつニューロダイバーシティの観点で見直されようとしています。

 

明治から昭和にかけて、欧米にならい日本経済は急速に成長してきました。

 

人口増加による大量消費・大量生産の社会では、協調性があり勤勉で指示をよく聞き、同じ品質のものを作り続けられる人材が重宝されました。

 

そういう働き手を育てるために、教室にみんなが並んでまじめに授業を受け、受験で一定の成績を取った子を合格させるというシステムは便利だったのです。

 

しかしその時代は終わり、今や変化の激しいグローバル社会の中でオリジナリティのある発想やものづくりをしていかなくては生き残れない時代がきています。

 

しかし、学校ではいまだに昔のまま「言われたことをきちんとやれてみんなと仲良くできる子」ばかり評価されることが多いのではないでしょうか。

 

もちろん、生まれつきそういう子はそれを個性として活躍できるでしょう。

 

しかし、そうでない子も別の部分ですばらしい才能を持っていたり、その子に合った分野で活躍することもできるはず。

 

「ニューロダイバーシティ教育」は、いまの学校のシステムのよさはそのまま生かしつつ、その枠組みでは良さが発揮できない子も最適な形で学べるさまざまな授業が増えていく予定だと言います。

 

文/高谷みえこ

参考/ニューロダイバーシティの推進について (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html#:~:text=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%EF%BC%88Neurodiversity%E3%80%81%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%A4%9A%E6%A7%98,%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8A%E3%80%81%E7%89%B9%E3%81%AB%E3%80%81%E8%87%AA

ディスレクシア | 国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/007.html