映画『ALIVEHOON アライブフーン』(公開中)に出演している青柳翔さん。テクニックや情熱、勇気に覚醒していく主人公のように、役者として「覚醒」を感じた経験はあるのでしょうか。
ハードな進行は時代にそぐわない部分も
── 「覚醒」もしくはご自身の演技がひとつ変わったと感じた経験はありますか?
青柳さん:
すべての作品で変化は感じているかもしれません。
でも、一つの作品が終わると「ハイ、次」となるタイプなので、覚醒したとか変わったとかじっくり振り返ることはあまりないです。
もちろん、役柄によっては感傷に浸ることもあります。でも、長くて2、3日です。器用ではないので、一つの作品に集中したいというのかな。やっている作品で頭がいっぱいになるけれど、終わってからも引きずるということはあまりありません。
── 今年は監督デビューも果たしましたが、新たなジャンルに挑戦したことで見えたことはありましたか?
青柳さん:
働き方について改めて考えることはありました。
作品によっては、スケジュールがとてもハードで、今の時代にそぐわないと感じる部分もあります。
作品にかける思いはどの現場でも強く感じて、例えば、撮影中に子供が生まれそうというスタッフさんがいても、責任感とプライドで現場に残り仕事をし続ける人がいます。そういう人を見ると、「仕事も大切だけど、家族も大事だよ。奥さんのそばにいてあげなよ」という気持ちになります。
責任感もプライドも大事ですが、家族の大事な瞬間には「選択」ができるような働き方、体制になるといいなと思っています。
僕が語ることでもないですが、そういう光景を見るとそんなことを考えることはあります。昔ながらのやり方ではなく、柔軟にすべきところがあってもいいかなと思っています。
「撮影中には携帯はオフです」
── スケジュールや進行状況で、「選択」が難しい場面に直面することは、どんな仕事でもありますよね。
青柳さん:
そうですよね。人には「もう帰った方がいいよ」「そばにいてあげなよ」と思うのですが、僕自身は、仕事中は携帯を見ないようにしています。
もし、なにかあったとき、仕事にも集中できなくなるからです。祖母も両親も歳なので、いつなにが起きるか分かりません。頑なにどんな状況でも仕事を選びますという意味ではなく、この仕事をしている限り、家族の大切な瞬間に立ち合えないことはあると腹をくくっているので、撮影中には携帯はオフです。
不器用でキャパが狭いから、ひとつのことに集中したいというのも理由かもしれません。撮影中ずっとオフにしているから、撮影が終わって電源を入れると、マネージャーからの連絡でいっぱいになっていて驚くこともよくあります(笑)。
「たかが2時間」で周囲を奮い立たせる
── 作品中の「限界を決めるな、自分を超えろ」というフレーズにちなみ、自分自身を奮い立たせる言葉や存在についてお話ください。
青柳さん:
限界を決めるな、自分を超えろとは思っているけれど、奮い立たせるような言葉は特にありません。
何公演も続いている舞台の本番前に、みんなが疲れているなと感じたら、「たかが2時間ですよ」と言います(笑)。
── 奮い立たせる言葉ですね。
青柳さん:
ちょっと怖いですか(笑)。笑顔で「たかが2時間ですよ。2時間集中すればいいだけですよ」と言うことはたまにあります。人を奮い立たせる言葉でもあり、口に出すことで自分にも言い聞かせているのかもしれません。
PROFILE 青柳翔さん
俳優。1985年生まれ、北海道出身。2009年、舞台「あたっくNo.1」で俳優デビュー。その後、劇団 EXILEのメンバーとして活動する。2022年はWOWOW「アクターズ・ショート・フィルム2」で短編映画初監督を務め、12月にNetflix「今際の国のアリス シーズン2」が配信予定。
取材・文/タナカシノブ