映画『ALIVEHOON アライブフーン』(公開中)で、主人公のライバルでトップレーサーの柴崎快を演じている福山翔大さん。勝つためにはどんな手も使うという柴崎の気持ちは「理解できる部分もある」そうです。
「どんな手も使う」かつての自分と重ねて
── 柴崎のキャラクターをどう感じましたか?
福山さん:
勝つためにはどんな手も使う。僕も20代前半の頃は、お仕事をいただくきっかけを掴むためにオーディションを受けまくっていて、あの手この手で目立ってやろうという時期がありました。
当時の自分を振り返ると「どんな手を使っても…」という柴崎の思考回路は理解できます。それは、純粋に勝ちたいというピュアな気持ち。ただし、彼の場合は方法だけがよろしくないかなと感じました。
── 間違ったことをやったとしても、そこから学ぶこともありますよね。
福山さん:
あります。
僕もオーディションのときに奇をてらうといいますか。例えば、10人1組のオーディションで、自己アピールの順番が最後のときには、前の9人がやってない芝居を見せて、しかも笑わせれば勝ちと思っている時期がありました。
目立てばいい、単純にそれだけを考えていて。
酔っ払っている芝居を求められ、いきなりでんぐり返しをプラスしたこともあります。とにかく目立ち、審査員の目に留まり、役を勝ち取りたいという思いだけで突っ走っていました。
そのときは、無事に役をゲットしたのですが、この感覚で次のオーディションに臨んでも、まあ、落ちますよね。劇薬を使えたのは1度だけでした(笑)。
── 成功体験は大事ですし、良い経験になったかと思います。
福山さん:
そうですね。今はもう笑い話でしかないですが。
頑張ることに夢中で余裕がなかった
── ライバル関係が描かれる物語です。福山さんにとってのライバルとは?
福山さん:
オーディションをたくさん受けていた時期は全員がライバルという気持ちでした。本質的な部分では今も変わっていない気がします。
今「ライバルは誰?」と訊かれたら、「自分」と答えると思います。
── ライバルである自分に勝つためにやっていることはありますか?
福山さん:
ちゃんと気分転換を図ること。鞭を打ち続けても、ガソリンが切れることってあるじゃないですか。
人によって度合いが違うから「自分に厳しくやっています」とはなかなか言いにくいけれど、仕事を頑張ったあとは、たっぷり寝たり、山に行って自然に触れたり、温泉に入って浄化して、ビールを飲んでリフレッシュ。
そんなことを25歳超えた頃から意識してやるようにしています。たとえ日帰りでも十分に効果を感じています。
── そう考えるようになったきっかけがあるのでしょうか?
福山さん:
夜、あまり眠れなかったり、精神的にもちょっと不安定になることがあったりもして。
多分、頑張ることに夢中で、余裕がなかったのだと思います。ちゃんと力を抜くことの大切さを感じ、意識的に力を抜ける場所に行くように心がけています。
── リフレッシュに出かけるときは車で?
福山さん:
今回はレーサー役ですが、実は僕、あまり運転しないんです(笑)。
というのも、いつも一緒に出かける友達が大の運転好きで。「運転させて!」と言われるので「どうぞ、どうぞ」って。いつも助手席でのんびりさせてもらっています。
緊張感を楽しめるタイプではないけれど
── ライバル関係だけでなくチームワークもテーマになっています。福山さんは個人競技と団体競技、どちらが好きですか?
福山さん:
空手と剣道をやっていたので個人競技は得意です。
でも、剣道には団体戦もあるのでチームワークも必要です。ボクシングや格闘技を観るのも大好きだし、野球やサッカーも好き。
個人競技もチームワークが大切な団体競技もそれぞれ面白さがあると思います。団体戦では自分が負けても勝てる可能性がある一方で、自分が負けたら終わりという緊張感もあってたまりません。
── 緊張感を楽しめるタイプですか?
福山さん:
気分が悪くなるくらいナイーブになるけれど(笑)、達成したときの爽快感に病みつきになります。
緊張感を味わえる場所にいられることは、自分が頑張ってきた証拠だと思うし、緊張感を味わえる場所にいること自体、ひとつの到達点だと考えています。
その後の勝敗に関しては、結果を受け入れるしかないというスタンスです。
<作品情報>
映画『ALIVEHOON アライブフーン』
公開中
配給:イオンエンターテイメント
©︎2022「アライブフーン」製作委員会
取材・文/タナカシノブ