仕事・家事・育児など、どんなことでも、「ちゃんと」と聞けば「私はやるべきことをやっている」という達成感や誇りが感じられますよね。
子育ての場面でも、「ちゃんとお片づけしなさい!」「先生のいうことをちゃんと聞くんだよ」のように頻繁に使うのではないでしょうか。
しかし、実は、「ちゃんとしなさい」と親に言われたとき、具体的にどうすればいいのか子供はまったく理解できていないとしたら…!?
今回は子供が「ちゃんと」を理解できない理由や、どうすれば伝わるのか、おすすめの言い方を考えてみます。
親はどんなときに「ちゃんとしなさい」と言うのか
まずは、私たち親がどんな時に子供に向かって「ちゃんと~しなさい」と言うのか、幼稚園(3歳)から小学6年生までのお子さんを育てているママ・パパ20人を対象にアンケートをとってみました。
そのうちで多かったシチュエーションをいくつか紹介します。
「お片づけの時間だよと言うと、2~3個片づけるだけであとはほったらかし。ちゃんと片付けなさい!と毎日のように言ってます」(Uさん・5歳の男の子のママ)
「好き嫌いが多いので、炒め物のニンジンだけ残してあったり、トーストの耳を食べなかったりで、ちゃんと食べなさい!とよく叱ります」(Tさん・1年生の女の子のママ)
「サッカーを習っているのですが、解散前に親子で集合してコーチの話を聞くときにクネクネしたり、隣の子とふざけたり。後ろから、こら!ちゃんとしなさい!と怒ってます」(Gさん・2年生の男の子のパパ)
などなど、皆さんも同じようなシチュエーションで、知らず知らずのうちに口にしているのではないでしょうか。
子供が「ちゃんと」で動かないのには理由がある
ところで、親が「ちゃんとしなさい」と注意すればお子さんは言われたとおりに「ちゃんと」できるのでしょうか。
上記のアンケートで「ちゃんとしなさいと言ったあと、お子さんはどの程度ちゃんとできますか」という質問は、以下のような結果となりました。
- 必ずちゃんとできる…0人
- ほとんどちゃんとできる…3人
- 半々くらい…9人
- ほとんどちゃんとできない…7人
- ちゃんとできたことがない…1人
小学生以下では親が「ちゃんとしなさい」と言って完全にいうことを聞く子は1人もおらず、ほとんどできるという子が3人しかいないという状況です。
実は、これには理由があります。
子供の発達において、「形式的演繹」つまり、目の前で実際に起きたことではなく頭の中で想像して結論を出せるのは、11歳(小学校高学年)頃になってやっとできる子が多いと言われています。
個人差もありますが、おおむね小学生までの子は、「ちゃんとしなさい」と言われても、どの状態が「ちゃんとできている」のか思い浮かべることができません。
親からすれば当たり前のことでもなかなかその通りにはできないのは、こういった発達上の理由からなんです。
してほしいことは具体的に伝えよう
では「ちゃんとしなさい」のかわりに、どう言えば子供に伝わるのでしょうか?
やはり「ちゃんと」という漠然とした言葉よりも、1つ1つ具体的に伝えるのが効果的です。
今回の例でいうと、
- 「ちゃんと片づけなさい」→「おもちゃを全部箱に戻そうね」
- 「ちゃんと食べなさい」→「お肉もにんじんも一緒に食べようね」
- 「ちゃんとしなさい」→「まっすぐ立ってお話を聞こうね」
など、子供が自分がどういう行動をすればいいのか思い浮かべられる言い方がおすすめ。
言う側としては一手間かかりますが、少なくとも1回は、この場において「ちゃんとする」とはどういう状態を指すのかを伝えてあげましょう。
子供はもしかして子供なりにちゃんとしているつもりかもしれないのに、いつも「ちゃんとしなさい」と言われたらだんだん傷ついたり、「自分はちゃんとできない子なんだ」という自己イメージを持ったりしてしまうかもしれません。
また、成長にともなって「今はどうする時かな?」と子供自身に考えさせてみるのも良い方法です。
ついつい出てしまう「ちゃんと」に頼りすぎず、じょうずにゴールを伝えていってあげたいですね。
文/高谷みえこ
参考/書籍『発達心理学ガイドブック――子どもの発達理解のために』マーガレット・ハリス ガート・ウェスターマン著/明石書店
アンケート時期:2022年6月 アンケート方法:インターネット アンケート人数:20人