大ヒット作『幽幻道士』で一世を風靡したシャドウ・リュウさん。華やかなブームの陰で、幼少期は学費にすら苦しみ、近所の人に食事を分けてもらうほど生活に困窮していました。その過酷な原体験が、なぜ今の「台湾での福祉活動」へとつながったのか。彼女が辿った知られざる歩みを明かします。
ヒット作の裏で貧しかった幼少期

── 今から40年前に公開された映画『幽幻道士(キョンシーズ)』や、ドラマ『来来!キョンシーズ』のテンテン役が日本でも大人気だったリュウさん。ヒット作に出演されている裏で、お金に苦労する生活を送っていたそうですね。
リュウさん:私が生まれる前に父と母が離婚したのですが、私は母とは暮らしたことがなく、祖父や祖母と暮らしていました。7歳のときに父が再婚することになり、新しい母とスイカ頭を演じた俳優の兄と一緒に、台北で暮らすことになったんです。
父は台湾の俳優なのですがあまり仕事が安定しておらず、学費が払えない、ご飯が十分に食べられないことがよくありました。
── リュウさんとお兄さんは大ヒット映画やドラマに出演されましたが、それでも厳しい生活が続いたのですか?
リュウさん:私たちのお金を管理してたのは父です。父はだまされることが多く、知り合いから事業、いわゆるもうけ話を持ちかけられ、お金をだましとられることがよくあって。芸能界以外の安定した仕事を得たいと思う気持ちからだったとは思うのですが、私たちが映画やドラマに出ても、生活が豊かになることはありませんでした。
── ヒット作の俳優として脚光を浴びるなかで、かなり苦労なさったんですね。
リュウさん:私たちがあまりご飯を食べられていないことを知ってか、近所の人がよく助けてくれました。「ご飯まだ食べていないでしょう?」と自宅に招いて食べさせてくれることもあって、今でも感謝しています。ただ、学校ではそうはいきませんでした。先生や同級生の対応は、かなり厳しいものでした。
「有名なのにどうして学費が払えないんだ」と
── 学校ではどのようなことがあったのでしょうか?
リュウさん:学費が払えていなかったのですが、父は俳優で有名人だったので、先生から「有名人の子どもなのにどうして学費が払えないんだ」と言われて、みんなの前に立たされました。「父が有名で、自分もテレビに出ているからといっていい気になるな」「宿題ができていなくても、特別扱いされると思うな」と言われたこともあります。今では考えられないことですが、まぶた、耳たぶ、鼻、くちびるにヒモのついた洗濯バサミをつけられて、それをみんなが見ている前で引っぱられたこともあったと思います。
── それは今では考えられない出来事ですね。クラスメイトはどうでしたか?
リュウさん:ほとんど話してもらえませんでした。たとえば宿題の提出日に学校に行っても、私はそれまで休んでいたため宿題が出ていたことさえ知りません。そうすると次に来るときに持ってくるように言われるのですが、クラスメイトにとってはそれが面白くないわけです。
一度、隣のクラスの生徒のお金が盗まれたことがあったのですが、それを私のせいにされて、男の子に殴られたことがありました。そのときは上級生だった兄がクラスメイトと一緒に助けにきてくれて。『幽幻道士』でスイカ頭を演じていた兄は体格が大きいため、いじめられるようなことはなかったみたいです。
── 先生とクラスメイトからのいじめでは、学校に拠り所がなくつらかったですよね。
リュウさん:でも気持ちはなんとなくわかります。映画やドラマに出て有名になり、仕事が忙しいときはテスト以外、学校に行かないのに特別扱いされているわけですから。周りからしたら面白くないのは当たり前ですよね。
幼少期の恩を福祉で返していきたい

── 現在は福祉関係のお仕事をされているそうですが、きっかけは幼少期の体験からだそうですね。
リュウさん:お金がないときに近所の方が助けてくれたことが嬉しくて、以前から被災した人や生活が苦しい人に向けてのボランティア活動を行っていました。必要な食品や物資を集めて送るなどの活動をしていたのですが、いつからか「魚をあげるよりも釣竿をあげたり、釣竿の作り方を教えたりするほうがいいのではないか」という考えに変わっていって。それで台北市の議員オフィスで福祉に関わる仕事をするようになりました。
── どのようなお仕事をされているのでしょうか?
リュウさん:生活が苦しい人だけでなく家庭内暴力、いじめなどの社会問題は一時的な解決だけでなく、法律から変えていかないと根本的には解決しません。それを叶えるために今は社会福祉士の資格取得の学校に通いながら、問題解決のためのサポートをしています。
── 今後の目標を教えてください。
リュウさん:資格を取っただけではまだ足りない部分もあるため、台北議員になることが今の目標です。しっかりと問題解決のために法律を変えて、ちゃんと生きたいと思う人がきちんと暮らせるような世の中を作っていきたいです。
取材・文:酒井明子 写真:シャドウ・リュウ、アット エンタテインメント(「幽幻道士&来来!キョンシーズ BDコンプリートBOX」)