外出時、ほんの一瞬、目を離したすきに子どもの姿が見えなくなる──。親なら一度は経験したことがある、心臓が凍りつくような体験。タレントの鈴木ちなみさんも、スーパーで当時2歳のわが子を見失い、パニック寸前になった経験が。ふだんどんな声かけをするか、どうすれば見失っても探しやすいか。鈴木さんの工夫の数々を聞きました。

スーパーでの買い物中「一瞬で姿が見えなくなって」

保育園の母の日イベントで第1子が作ってくれた手作りのお花

── 20代のころは『めざましどようび』(フジテレビ)のレポーターなどとして活躍していたタレントの鈴木ちなみさん。結婚・出産を経て、現在はシンガポールで3人の子どもを育てながら現地情報を発信しています。子連れでの外出はどれだけ気をつけていても予期せぬトラブルが起こりがちですが、鈴木さんも日本へ一時帰国された際、ヒヤッとする迷子事件を経験されたそうですね。

 

鈴木さん:帰国中、初めて訪れたスーパーで買い物をしていたときのことです。当時、一番上の子は2歳くらいで、とにかく自分で歩き回りたくてしかたがない活発な時期でした。親の手を振り払って小走りになる上の子を、夫が追いかける形で見ていたはずなんです。ですが、店内の陳列棚の角を曲がって、また次の角を曲がった…と思ったら、もう姿が見えなくなってしまっていて。

 

──「いない」と思った瞬間、焦りますよね。

 

鈴木さん:最初は「名前を呼べばすぐに見つかるだろう」くらいに思っていたんです。でも、夫と手分けして、名前を呼びながら店内をいくら探しても姿が見えない。5分、10分と経つうちに「やっぱりいない」「おかしい」と血の気が引いていって…。いつもおおらかに構えている夫も焦っていましたね。「どこいっちゃったんだろう」と、店内を探している時間がすごく長く感じました。そうこうするうちに、店内放送で迷子のお知らせがかかったんです。

 

── 近年は迷子の放送では名前などは出さず、子どもの年齢や服装の特長などを放送しますよね。

 

鈴木さん:はい。内容を聞いて「うちの子だ!」と。それで夫が迎えに行きました。

きつくは叱らない「本人も自覚があるから」

── 迎えに行ったときはどんな様子だったのでしょうか。

 

鈴木さん:夫が慌ててサービスカウンターに駆けつけると、本人は泣くこともなく、ケロッとした顔で座っていたそうです。親としては、何事もなく無事に保護していただけて、本当にホッとして涙が出そうになりました。

 

── 見知らぬ場所で、見知らぬ大人に囲まれて不安だったでしょうに、すごいですね。

 

鈴木さん:一時帰国前に、大人の人にあいさつする練習をしていたのが功を奏したのかもしれません。日本にいる祖父母と日頃からビデオ通話で「お名前は?」「何歳?」と、自己紹介する練習をしていたんです。そうしたやり取りに慣れていたことが、知らない大人に保護された場面での落ち着きにつながったのかなと思います。

 

それから、どうも本人には「悪いことをしちゃった」という自覚があったみたいで、子どもなりに緊張して冷静さを保っていたようです。

 

── 迷子になった本人を叱ったりは?

 

鈴木さん:見失った大人にも責任はありますし、きつく叱ることはせず、「こうなると危ないよ。今回は優しい人が見つけてくれたけど、知らない大人に連れて行かれちゃうかもしれないから」と言い聞かせました。

目立つ色の服を着せることも迷子対策に

鈴木ちなみ
クリスマスの時期に見られるシンガポールのキラキラなイルミレーションを堪能

── 現在は上のお子さんが4歳になり、真ん中のお子さんが2歳、そして一番下のお子さんが0歳だそうですね。小さな子ども3人を連れて買い物するときはどうしているのですか。

 

鈴木さん:ベビーカーの後ろに立ち乗りできるステップボードを取り付け、ベビーカーには真ん中の子を座らせ、ステップボードに上の子を立たせ、一番下の子は抱っこして移動しています。ショッピングモールに入る前には、「お母さんの目の届く範囲にいてね」「ここから離れたら迷子になるよ」と、子どもたちには必ず釘を刺すようにしています。ただ、「あれはダメ」「これはダメ」と頭ごなしに禁止する言い方だと、反発心がわくのか、こちらの思いがうまく伝わりません。

 

そこで、子どもが自発的に協力したくなるよう、正義感をくすぐる表現にしています。「お母さんは今、赤ちゃんを抱っこしていて手が離せない。家族みんなチームだからね。チームが無事にお買い物できるよう、そばにいてお買い物を手伝ってくれると嬉しいな。チームワークで協力しよう!」みたいな。すると、「自分も家族を守るチームの一員なんだ」とやる気が高まるのか、積極的に協力してくれます。

 

ただ、言い聞かせにも限界はあります。真ん中の子はそれで離れずにいてくれるのですが、上の子はエネルギーがあり余っているようで、見失いかけたことが何度かあって。子どもによってこんなに違うんだ、という思いはあります。

 

── 子どもの年齢や性格によってはどんなに気をつけて言い聞かせても迷子になってしまうことがある…。それをふまえて対策していることはありますか。

 

鈴木さん:まず徹底しているのは「目立つ色の服を着せること」です。子ども服って、大人っぽいモノトーンや迷彩柄もおしゃれでかわいいのですが、迷子防止の観点ではNGだなと痛感しました。そこで外出時は、遠くからでもひと目でわかる鮮やかな色の服を着せています。とくに黄色やオレンジ色は、混雑した場所でも視界の端にパッと色が飛び込んでくるので、見失うリスクを大きく減らせます。

 

── ハード、ソフト、両面で対策しているわけですね。

 

鈴木さん:少しでも子どもが安心して暮らせる環境を作ることが自分にできることだと思っています。住んでいるコンドミニアムでも、ご近所の方や管理スタッフの方々にはふだんから積極的に挨拶をして、子どもにも挨拶させて、家族の顔を覚えてもらうようにしています。

 

そうすると、もし子どもが走って行ってしまっても「あっちに行ったよ」「転んでいたから、起こしたよ」と、声をかけてもらいやすくなって。親の目だけでなく、地域や周囲の「見守りの目」を増やしておくことが、いざという時の最大のセーフティネットになると感じています。

 

取材・文:鷺島鈴香 写真:鈴木ちなみ