平成時代に話題のドラマや映画に次々と出演し、人気を集めた元俳優の五十嵐隼士さん。結婚後の現在は奥さんの故郷の宮城県仙台市で結婚相談所を開いています。「努力でモテを手に入れた」と語る俳優時代の経験が現在の仕事に活きていると実感しているそうです。

俳優時代は「幸せを感じる暇もなかった」

── 結婚して幸せを感じるようになったと伺っていますが、27歳で引退するまでの芸能界時代はいかがでしたか。

 

五十嵐さん:そうですね。芸能界にいて「幸せだ」と感じたことはなかったように思います。CMの仕事が入ったときや、ウルトラマンになれたことはもちろん嬉しかったんですけど、結婚して一生の味方ができた今感じている幸せとは別物ですね。それに、俳優時代は幸せを感じる暇もなかったんです。毎日、必死で余裕がありませんでしたから。芝居もわかんないし、セリフは覚えなきゃいけないし、監督からもカメラマンからも怒られて。

 

五十嵐隼士さん
映画の舞台挨拶で笑顔を見せる20代の五十嵐隼士さん 撮影:下宮信敏

── それでも、大ヒットドラマ『ROOKIES』『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』などに出演し、人気を博していました。

 

五十嵐さん:ただ、何が演技の正解かは、わかっていませんでした。このまま年齢を重ねて、もっと技術的なことを求められていくようになったら、やっていけないんじゃないかという不安もあって。自分でもたいしてお芝居が上手いと思っていませんでしたし、プロデューサーや監督、事務所からも「小手先だけは上手い」と言われて。それっぽい感じはできるけど、ハートがないと。

 

役所広司さん主演の映画、『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』では、内面的な芝居が素晴らしかったと周りから褒められたんですが、自分ではしっくりきていませんでした。「何が内面的で、何が小手先の演技なのか」は結局わからないまま辞めてしまいましたね。

「ボウリングにカラオケ」努力でモテを手に入れ

── 俳優を辞めて、そのあと具体的にしたいことはあったんですか。

 

五十嵐さん:飲みに行くのが好きで、俳優をしながら夜の街で遊んでいたんですけど、経営者の方と会う機会が増えて話を聞くうちに、「いつ売れなくなるかわからない芸能界に居続けるのではなく、自分で起業してみたい」と思い始めました。今の年ならまだ、新しいことを始めるのも遅くはないんじゃないかなって。それが25歳くらいでしたね。

 

── 芸能界を引退後、飲食店の経営などをされていたそうですが、体重が増えるとともにモテなくなったとおっしゃっていました。

 

五十嵐さん:太ってからびっくりするくらいモテなくなったんですよ(笑)。モテとダイエットは似ているところがあると感じていました。若いときは「まだ痩せられる」と思っていても、年齢を重ねていくうちにだんだん難しくなってきて、今の僕はもう痩せられません。

 

モテているときは「20代で結婚して若いパパになりたい」という願望があったものの、遊ぶのも楽しいし、「別に結婚しなくてもいいかな」と。「まだまだモテる」と思っていたのに、いつの間にかモテなくなっていました。でも、モテなくても人生のパートナーは探せると伝えたいですね。

 

── 芸能界にいたころはさぞかしモテていたんでしょうね。

 

五十嵐さん:僕は黙っていたらモテると言われたんですけど、おしゃべりなので、しゃべっちゃうとモテないんです(笑)。「うるさいやつ」って思われてしまって…。顔がカッコよくて、クールな人は何もしなくてもモテると思うんですけどね。自分は「どうしたらモテるか」を一生懸命考えて、努力でモテを手に入れたタイプです。男女の距離を縮めるためにボディタッチが大事だと聞けば、どうしたら自然とできるか考えて。急なボディタッチで気持ち悪がられるのは嫌なので、「そうだ、ボウリングならいける!」と思い必死に練習しました。

 

── なぜボウリングなんですか。

 

五十嵐さん:ストライクを取れば、ハイタッチができると思ったんです。これこそ自然なボディタッチですね。友達と一緒にボウリングに通い詰め、スコア180以上が取れるようになりました。

 

あとはカラオケです。うるさくても、「気の利くやつはモテるんじゃないか」という仮説を立てた時期があって、その頃はカラオケボックスに入ったら必ずドアの近くをキープしていました。ドア近くにフロントにかける内線電話の受話器があることが多いですよね。みんなのドリンクを聞いて積極的にオーダーする係を請け負っていました。

 

── 五十嵐さんのように、モテるために積極的になれない方も多いと思います。

 

五十嵐さん:無理にしなくていいですよ。寡黙な人が好きって人もいますから。物静かで優しい口調な人がいいという方も多いので、みんながみんな同じことしなくていいんです。僕も俳優時代に「家にいたらうるさくて、疲れそう」と言われたこともありました(笑)。話の内容も、自分の趣味など、あることに特化して話すことが好きな方もいれば、精神的な面で話すことが好きな人もいますから。

 

── 努力と分析を絶えずされてきたんですね。

 

五十嵐さん:芸能界にいた頃に思っていたのは、どんなにイケメンや美女であっても、家と職場の往復だけの人はモテないということです。寄ってくる隙がなさすぎます。外に出ている人ほど出会いの数が多く、その結果モテているなって。それがわかってから、とにかく外に出ることが多かったです。仲間を誘って「富士急行こうぜ!」と声をかけて。出会いの数は多いほうがいいというのも実践を通して学びました。

「過去の成果」を支えてくれた特撮ファンに還元したい

── 現在は結婚相談所を開いています。仕事で過去の経験が活きているそうですね。

 

五十嵐さん:僕の強みは「どうしたらその人の強みを活かせるか」ということです。若いときからどうやったらモテるかを死ぬほど考えてきたんで、それを活かすときが来たと思っています。

 

結婚相談所は、僕が主演を演じた『ウルトラマンメビウス』のファンで、今も応援してくださっている特撮オタの方を幸せにしたいという思いで始めたのですが、オタのみなさんの強みはフットワークの軽さで、旅好き女子とマッチすると思っています。

 

インドア派だと思われていますが、イベントやフェスがあれば全国どこにでも行くし、目的地までの移動手段や宿の確保など、旅の手配も素晴らしい。「そんなのあるの」といつもびっくりするんですけど、新幹線や列車を安く乗る方法やお得な切符の買い方などの情報にも詳しいです。写真を撮るのも上手いので、特撮が好きじゃない子も、一緒に旅行を楽しめると思うんですよね。なにより「特撮ファン」とひと括りにするのではなく、一人ひとりのよさを引き出したいです。

 

五十嵐隼士さん
愛犬とおしゃれカフェで過ごすひととき

── 独身者の4人に1人がマッチングアプリを利用しているとも言われる現在、なぜ結婚相談所なんですか。

 

五十嵐さん:結婚相談所も、出会いのきっかけという意味ではマッチングアプリと似ています。ただ、大きく違うのは、「結婚したい」という目的がはっきりした人同士が出会えることです。マッチングアプリの場合、恋人探しや友達探しなど、利用する目的は人それぞれですよね。一方で結婚相談所は、結婚を真剣に考えている方が、時間もお金もかけて活動しています。だからこそ、最初から結婚を前提とした出会いができる。これは非常に大きなメリットだと思います。

 

さらに、プロフィールの信頼性も大きな違いです。たとえば年収などは自己申告ではなく、必要な証明書を提出していただいたうえで登録します。つまり、プロフィールを見た段階で「この情報は本当なのかな」と疑う必要が少ないんです。ただ出会いの場を提供するだけではなく、婚活の進め方やお相手との関係づくりについて相談できるのも結婚相談所ならではです。結婚相談所は「結婚したい人が、安心して、効率よく結婚相手を探すための場所」だと思っています。たくさんの人と出会うことだけを目的にするのではなく、結婚というゴールから逆算して活動ができます。

 

── 具体的にはどのような仕事をしているんですか。

 

五十嵐さん:相談に乗ったり、アドバイスをしたりして婚活をサポートしています。僕が演じたウルトラマンファンの方もいらっしゃいますが、やっぱりみなさん真剣に結婚を考えている方ですので、仕事ではまったく僕個人のことは話さず、恋愛、結婚の話だけに集中しています。

 

話を聞いていると、いまだに結婚相談所で知り合ったことを周りに言いにくいという人が多くて。マッチングアプリで出会っていたら言えるんですって。結婚相談所は、いまだに「最終手段」とか「結婚できない人の集まり」だと思っている人も多いです。きちんとした情報を元にプロフィールを開示しているのに、まだまだ知られていないのだと感じます。

 

──「結婚したい」と素直に言えないのはなぜだと思いますか。

 

五十嵐さん:恋愛や結婚が上手くいかない人が、嫌われたくないし、傷つきたくないことへの言い訳をしているからだと思います。「自分は恋愛や結婚はいいや」と言ってごまかすのではなく、真剣に結婚を考えていることを、胸を張って言える世の中になることを願っていますし、その人の持つ良さを最大限に発揮するお手伝いができたらいいなと思います。「人生のパートナーを探したいという思いは素晴らしいこと」だと社会に伝えていきたいです。

 

取材・文:内橋明日香 写真:五十嵐隼士