「ぶりっこしてる」など、多感な時期の中学3年生でクラスの女子たちからいじめに遭ったという歌手・タレントの吉木りささん。心身に支障をきたすほど辛い思いをした吉木さんが今になって語る理由とは──。
いじめた側と再会「久しぶり」
── 吉木さんは、中学3年生のとき、クラスの女子たちから悪口を言われるようになり、そのうち村八分のように仲間外れにされたと伺いました。そのせいで、つらくて食事がとれなくなり、学校も教室に入れず、保健室登校が卒業まで続いたそうですね。
中学を卒業してなんとか立ち直り、高校1年生で芸能界へ。大人になってから、当時いじめをした側の元同級生たちに再会したと伺ったのですが…。

吉木さん:それぞれ別々の時期に会ったんですけど、ひとりは成人式のときにたまたま会いました。そのとき、その人は私に対してすごく冷たくて…私がまるで存在していないかのように、赤の他人のふりをされたのを覚えています。
もうひとりは私が結婚して間もないころ、同窓会で再会しました。その子は逆に「私、いじめてたっけ?」っていうくらい、フレンドリーに話しかけてきたんです。だから私も「昔、私をいじめてたよね」って問い詰めるわけでもなく、「久しぶり」って普通を装って話をしました。
相手からするといじめていた感覚はなかったのかもしれません。「ただ悪口を言っていただけ」「知らない間に不登校になっていた。あの子、たしかに暗かったし、変わってたし」みたいに思っていたんだと思います。
── 再会したとき、吉木さんのなかでモヤモヤした感情はなかったのですか?
吉木さん:恨みとかはなかったですね。ただ、人によるのかなと思うんです。私は悪口や陰口だったけど、体を傷つけられたり、心をえぐられるような事件になったり、そんな重いことになっていたら、私も一生恨んだりするのかもしれません。
もちろん、当時はすごく傷つきました。高い地声をバカにされて声が出せなくなったし、不登校気味にもなり、本当に散々な目に遭ったと今も思います。けれど、そのときの自分があったから、「私は誰かが傷つくことは絶対に言わない」という決意ができたし、自分自身が誰に対しても平等に接しようって思うことができています。だから今は、私をいじめていた人たちに対して「大切なことを教えてくれてありがとう」という感情すらあるんです。
──「ありがとう」と言える境地に達するのはなかなか難しい気もしますが、負の感情にいつまでもとらわれるより、今の自分を大切にできている気がします。
吉木さん:16歳で芸能界に入ったばかりの頃は、まだその子たちを見返してやろうという気持ちもありました。私が出演している番組に人気があったりすると「あの子たちはどう思うだろう」とか。幸せな姿を見せることで復讐する、というのかな。
でも、大好きな人たちに囲まれながら好きな仕事ができて、充実した毎日を過ごしているうちに、過去のつらかった出来事を思い出さなくなり、気にならなくなっていったんです。
さらに、当時を振り返って思ったのが、「本当は私、悪口を言っていた子たちと仲良くしたかったんだろうな」ということでした。もともとお友達だったので。その気持ちに気づいてからは、恨みとかは完全になくなった気がします。今では、また再会することがあったら、普通に会話がしたいなという境地です。
子どもには何度も「相手は自分の鏡だよ」
── 中学時代のいじめの経験が、今、子育てに影響していると思うことはありますか?
吉木さん:すごくあります。子どもたちには「悪口とか言っちゃダメだよ」って口酸っぱく言っていますね。
たとえば小学1年生の娘がお友達から「嫌い」って言われて落ち込んで帰ってきたときがありました。でも私は「あなたは好きなんでしょ?だったら嫌いって言っちゃダメ」「相手とのコミュニケーションは自分の鏡だよ」って。
「自分が嫌いって言ったら相手も嫌いって言うし、自分が好きって言ったら相手も好きって言ってくれる。相手の子の好きなところを好きって言い続けて。そう言われたら、誰だって喜ぶと思うし、振り向いてくれるから」と、子どもに伝わるように言葉を選びながら話しています。
──「もし、この子がいじめられたら…」と不安になったりしませんか?
吉木さん:子どもたちの間で、小学校から高校まで、絶対に何か摩擦は起きると思うんです。だって、あんな狭い教室に30人くらいの子どもたちがこもって、摩擦がないわけがない。むしろ、摩擦が起きたときに自分はどうしたらいいか、どうありたいかを学んでほしいなと思います。そして、私にはすべて話してくれると嬉しいし、全部受け止められる親でありたいですね。
私の母は、私がいじめに遭っていたとき、いつも私の気持ちを尊重して、話しやすい雰囲気をつくりながら、私が話し出すまで根気強く待ってくれました。そんな母にはすごく救われて…。母のようにどんと構えていられる自信はないですけど、母を目標にして、自分ができるだけ娘の居場所になれるように接したいなと思います。