母への愛情はなかったけれど

── 7年の介護生活を振り返って、どう思われますか?

 

秋川さん:母との人生でいいことって思い出せなくて。何もなかったといえばそうかもしれません。子どもにも親を選ぶ権利があればいいですよね。「確執のある親の面倒をよく長年みることができましたね」って言われるけれど、母への愛情はなかったと思います。だけど、長く一緒に暮らしてきたから。いいときも悪いときも。結局、私が母と離れて暮らしたのって、人生でたった10年くらいなんです。母は常に私について来たから。結婚したときも同じ敷地内に家を建てたりして。離れたくても離れられなかったんです。

 

「親子なんだから仲がよくて当然でしょう」と人から言われたり、ドラマなどでもそう描かれることが多いけど、そんなのきれいごと。親の認知症がきっかけで「ひどいことを言われるから、もう耐えられない」という方もいますし、心の底ではいろいろな思いがあると思います。

 

私は、介護も「きれいごとにする必要はない」と伝えたいです。本当に心身を削られるような大変な行為ですし、「何のためにこんなつらいことを…」と感じても不思議じゃない。もう誰にもあんな思いをさせたくないですよ。これから家族を介護する方には「家族だから自分が頑張らなきゃ」なんて思わないでほしい。行政や支援サービスをフルに活用して、なんとか乗りきってほしいです。

 

── 最後に、もし人生を終えるときがきたら、どんなひと言を言いたいですか?

 

秋川さん:「行ってきます」ですね。だって、天国って、生きている間に行ったことがある人、誰もないじゃないですか。


 
死ぬことはすごく怖いです。やっぱり経験したことがないから、何が起きるんだろうって思うけど、でも、そのときがきたら、「行ってきます」って未知の世界を楽しむ気持ちで言いたいですね。

 

取材・文:たかなしまき 写真:秋川リサ