何度も親子の縁を切りたいと思った
── 結局、介護施設はどうなったのでしょうか?
秋川さん:もう入会金から費用が高額で、安くても数百万円が必要。それに月々20万円ほどの費用がかかります。当時、パンフレットを見ると、渋谷区では2000万円、5000万円、1億円という数字が並んで驚きました。
子どもの教育費だったら、大学進学までいくらかかるか計算できますよね?でも、介護は終わりが見えないし、誰にもそれがわからないんです。母は、2年間の在宅介護の後、特別養護老人ホームに3年、介護付き高齢者専用賃貸住宅に2年、お世話になりましたが、母の年金だけで収まる金額ではないので、できるだけ自宅で一緒に暮らそうと頑張っていました。
でも…2年が限界でした。限界を感じ始めた頃から「介護施設に行ってもらうしかないのかな」と申し込みをして。当然、すぐ入所できたわけではなかったのですが、2年間、在宅で介護をしたのはお金の問題が大きかったと思います。未来のある子どもにお金をかけるのとは違って、気持ち的にも経済的にも厳しいです。地方都市にいい施設がたくさんあると聞いたんですけど、地方都市に認知症の母をひとり行かせるわけにもいかないと思って。できるだけ私と子どもたちが足を運べるところの施設を選んでいました。
── 介護が始まってからお母さんの最期を見送るまでの7年間、本当によく頑張られたのではないでしょうか。なかには、親子の縁を切るという選択をされる方もいるかと思います。
秋川さん:今でも「ずっと昔に縁を切っておけば、人生変わっていたかな」と思うことがあります。何度もあったんです、「親子の縁を切りたい」と思ったことが。実際にはそうしなかったけれど。
みなさんに言いたいのは、親子だから仲がいいとか、わかりあえるとか、そんなことはないということ。親子でも、相性の悪い親子もいるし、とんでもない親も子もいます。もし、縁を切りたいと頭によぎったら、縁を切ることが何を意味するかはよくよく考えたほうがいいけれど、それでも切りたいと思うなら、縁を切ってもいいと私は思うんです。
そういうとき、もしかしたら「自分って冷たい人間なのだろうか」と思うかもしれません。でも、私は「その勇気を讃えます」と声をかけたい。今後の長い人生を考えたら、その決断をできたこと自体が進歩だし、頑張ったと思うんです。親子は言ってみれば、所属や肩書を表した1枚の名刺みたいなもの。「親子だから愛情が深い」とか、他人が言うのは、余計なお世話でしかない。気にする必要はないと思います。
取材・文:たかなしまき 写真:秋川リサ