夢は「親子3人で川の字で寝ること」

── 現在は、妊娠何週目ですか。
黒岩さん:16週目です。ようやく安定期に入ってホッとしています。初期のころはつわりがひどくて、2回入院しました。そのとき卵巣嚢腫が大きくなっていることがわかって、妊娠中でしたが手術を受けました。
赤ちゃんがお腹にいる状態で手術を受けることは本当に不安でしたが、放っておくとひどくなってしまうと言われて。でも、無事にここまで来ることができてありがたいです。命を授かるということは、本当に奇跡なんだと実感しています。
── ステージ4の乳がんに不妊治療とつらい出来事が続いたことかと思いますが、黒岩さんのお話を聞いていると、どん底に立っても常に前を向いている印象を受けます。
黒岩さん:「なんで私が…」と思ったことは何度もあります。でも、その問いには答えがないんですよね。それなら、今の自分にできることを精いっぱい頑張ろうと思うようになりました。
家族の支えも大きいですし、SNSで病気や妊活のことを発信していることも励みになっています。私自身も病気がわかったとき、同じ病気と闘っている方たちの発信に勇気づけられたので、「私の経験や情報が誰かのためになれば」と思って発信を始めました。
SNSでつながっている方たちは私の闘病や妊活をずっと応援してくれていて。「みんなが私を信じてくれているのに、私が私を信じなくてどうするんだろう」と思って、「今できることを頑張ろう」と思えるようになりました。
将来は今の積み重ねです。未来は見えないからこそ、目の前の1日を大切にしたいと思っています。
── SNSでの発信が、黒岩さんの支えになっているのですね。
黒岩さん:「同じ病気の方が「一緒に頑張りましょう」と声をかけてくださったり、「私もステージ4だけど元気に暮らしているよ」と励ましてくださったり、本当に支えられてきました。だから今度は私が、「ステージ4でも妊娠して、こうして生活しています」ということを伝えたいんです。
がんと告げられたときはショックだと思うし、治療はつらいし、めげそうになることばかり。だから、泣いてしまう日があってもいいと思います。でも「今のつらさが一生続くわけではない」ということだけは伝えたいです。
── お子さんが生まれたら、一緒にしたいことや伝えたいことはありますか。
黒岩さん:家族3人で川の字になって寝たいな、と思っています。病気になってから、毎日何げなく過ごせることのありがたさを知りました。その時間って当たり前のものではなくて、いつか必ず終わりが来る。だからこそ「今、目の前にあるものを大事にしたいな」という気持ちがあります。
横を向いたときに、夫がいて、その隣に子どもがいる。それだけで、私は「生きていてよかった」「生まれてきてよかった」と胸を張って言えます。
そしていつか子どもには、「病気になったときは悲しかったけれど、もし病気になっていなかったら、不妊治療をすることはなく、あなたにも会えなかったかもしれない。今は病気になったことを悲しいとは思っていないよ。あなたに出会わせてくれて、本当にありがとうと思っているんだよ」と伝えたいです。
取材・文:林優子 写真:黒岩雅