右胸の喪失感を埋めたものは

── その後、抗がん剤治療を終えて手術をされたのでしょうか。
塩崎さん:実は私の場合、結果的に抗がん剤治療による成果があまり出ませんでした。がんが小さくなる確率が高いものから試していくのですが、自分で触ってもがんが小さくなっていないのがわかるんです。むしろ、最後に行った抗がん剤で大きくなったのではと思うほどでした。あんなに副作用のきつい治療をしたのに成果がでないという事実が、闘病生活のなかでなによりつらかったですね。非常にメンタルをやられましたし、自分はもう生きられないかもしれないという気持ちになりました。
それでもう、見える部分のがんだけでも取ろうと手術で右胸を全摘出することに。手術によりその時点で病院でできる最前の治療である標準治療はすべて終わりました。
── 全摘に迷いはなかったのでしょうか?
塩崎さん:実は治療の方針を決めるときに、最初に医師に伝えたことがあります。それが、「0.1%でも助かる可能性が高い治療をしてほしい」ということ。闘病中は治療について、自分で決めなければいけない場面が何回もありました。
そのなかで私が重視したのは「とにかく生きること」。治療により胸がなくなる、子どもが産めるかわからないということよりも、0.1%でも助かる可能性が高い治療をしたい。つらくても生存率が高い治療をしたいと最初に医師に伝えました。そのため全摘についても迷いはありませんでしたが、右胸がなくなるという喪失感はやはりありました。
── 命のためとはいえ胸を摘出するのはつらいですよね。
塩崎さん:髪もない時期だったので右胸までなくなることで、自分に自信が持てなくなりそうでした。特に胸は自分の体の中でも好きな部分だったので…。さすがに少しは落ちこみましたが、ずっと落ちているわけにはいかないので、喪失感を減らすために次にやったのが体の中で胸以外のお気に入りの場所を新たに作ることでした。それで新たなチャームポイントとして決めたのが、ウエスト。
抗がん剤治療の期間にやる人はあまりいないかもしれませんが、くびれ女王になるためにダイエットを始めました。細いウエスト、さらにプリッとしたお尻で自信を取り戻そうと、筋トレもがんばりましたね。そのおかげで喪失感は軽くなったと思うし、闘病中でもなにかをやりとげられたことがとても自信になりました。
取材・文:酒井明子 写真:塩崎良子