芸能人に囲まれて気づいた、息苦しさの正体

岸田健作
ブレイク当時、心の中では「自分には人より勝る芸や能力が何もない」現実に苦しんでいた岸田さん

── どういうことでしょうか。

 

岸田さん:その俳優さんには「演じる」という芸がある。だから舞台に立てるし、人を魅了できる。演じるという芸事や能力に秀でた人だから「芸能人」なわけです。芸能人はカメラが回っていなくても、舞台やステージに立てば、演技をしたり、人を楽しませたりすることができますよね。だから、生放送のカメラが止まっても「告知する何か」があるわけなんです。僕は、芸や能力があるわけでもなく、周りのすごい方においしくしてもらってここにいる。だから、カメラが止まってしまえば普通の一般人です。

 

── なるほど。

 

岸田さん:ゲストの方が毎日来て、新しい作品や活動の告知をするたびに、自分には何もないという現実をつきつけられていることに気づき、毎日がさらに苦しくなっていきました。

 

ものすごい才能のある方たちでさえ、人知れず努力や下積みを重ねてここまできて、さらにこの先も努力をして何かをつかみ取ろうとしていました。僕にはそういうのがいっさいなかったんです。他の人のように、今まで積み上げてきたものが自分には何もないという事実もつらかったですが、なによりもショックだったのは、その現実をつきつけられてもなお、僕には「芸能界でこの先成し遂げたいこと」が見つからなかったことです。それこそが、ずっと感じていた息苦しさの正体だったんです。

 

デビュー当時のように、何も考えずに楽しいことだけしていれば、そんな気づきもなかったと思うんです。でも、『笑っていいとも!』という、芸能界で何かを成し遂げたトップの人たちが集まる場所にい続けたことで、現実と向き合わざるを得なくなってしまいました。

 

だから意外かもしれませんが、テレビに出ていた時代を振り返ると、後半は楽しかった思い出よりも苦しかった記憶のほうが多いですね。


取材・文:大夏えい 写真:岸田健作