33歳での失恋をきっかけに「星野リゾート全制覇するしかない」と決め、見事、施設を全制覇したOLのミカ。さん。5年間で投じた金額はおよそ400万円。生活を切り詰めてまで何が彼女を星野リゾートに駆り立てたのか。そして、壮大な目標を達成した今の心境とは。
33歳、結婚を意識していた彼氏にフラれて

── OLのミカ。さんは5年間をかけて「星野リゾート全制覇」を実現されました。きっかけは失恋だったそうですね。
OLのミカ。さん:2021年11月、33歳のとき、7歳年下の彼氏にフラれたんです。半年前に付き合い始めたときは、彼氏のほうから「結婚を前提に真剣に考えてる」みたいに言ってくれたので、私の気持ちもすっかり盛り上がって。「もしかしたら、結婚しますって会社の人たちにサプライズ報告できるのかな」なんて妄想までしていたほどでした。
それが、だんだん彼氏の態度がよそよそしくなって。彼氏から言われたのが、「ミカちゃんより面白いコンテンツが世の中にはたくさんあると思った」のひと言。もう、言葉を失いました。「別れたい」じゃなくて、この謎の言い回しをされて、「もうダメなんだ、修復不可能だな」と悟り、お別れすることになりました。
── 結婚を意識しあっていた彼氏との別れがどんなにつらかったか、すごく伝わってきます。
OLのミカ。さん:でも、彼氏にフラれてどんなに落ち込んでも、私がフラれたことは会社には関係ないのだから、仕事はしっかりしないといけないっていう自覚はありました。
と言っても、まわりの30代の友だちは結婚している子も多いから、高校生や大学生のときみたいに、友達に話をたっぷり聞いてもらって、毎日カラオケで歌いたおすなんてこともできないじゃないですか。傷ついた心が癒えないまま働き続けることを考えると、すごくしんどくなって…。
彼氏にフラれた翌朝、1軒目の星野リゾートを予約

── 冷静にちゃんと仕事をするために、どうされたんですか?
OLのミカ。さん:気持ちを切り替えるために「楽しいことをしたい!」と思い立ちました。でも、日常生活は彼氏との思い出で埋め尽くされていて、何をやっても満たされないどころか、彼氏を思い出して悲しくなってしまう。だったら、いっそここからどこか別の場所へ行きたい、遠くへ行きたい、と思ったんです。
そんなとき、以前、転職のご褒美に北海道の星野リゾート「リゾナーレトマム」に行って、贅沢気分に浸ったことをふと思い出して。思い立ったが吉日と思い、彼氏と別れた翌日の月曜日の朝、ホテルを予約しました。おかげで、その後はすっきりした気持ちで仕事に集中できましたね。
週末には、沖縄の石垣島から船で25分の八重山諸島に浮かぶ星野リゾート「リゾナーレ小浜島」に向かっていました。たまたま空きがあって本当によかったです。
── 沖縄の「リゾナーレ小浜島」で30代をクレイジーに生きると決めたことが、星野リゾート全制覇につながったそうですね。
OLのミカ。さん:小浜島に行ったとき、たまたま書店で『5(ファイブ)―5年後、あなたはどこにいるのだろう?』という翻訳本を見つけて、海を眺めながら読んだんです。そこに「TRUST YOUR CRAZY IDEAS」(自分の奇想天外なアイデアを信じる)」という言葉が目に入って、その言葉にすごく共感して。「よし、私も30代をクレイジーに生きる」と決めました。「星野リゾートにもっと行こう、いや、全部行こう!」と、月に1回、5年かけて全部巡る計画を立てたんです。
「メイクより大事」だったネイルをやめて

── 星野リゾート全制覇のための節約生活もSNSで話題になったようですね。
OLのミカ。さん:星野リゾート全制覇では、結局、宿泊費と交通費を含めて400万円かかったんですけど、星野リゾートの宿泊費は、基本的に先にオンライン決済していました。だから、ラグジュアリーブランドの「星のや」が1泊10万円だとすると、飛行機代など含めて、先に10万円以上の高額を決済しているから、決済した瞬間から支払いに追われる日々がスタートするという。「やばい!」って、自分の生活がどんどん追い込まれていくんです(苦笑)。カードの支払日までの1か月に無事引き落とされるように、生活費を切り詰めていくしかなくて。
最初の頃は、いつか結婚や子育てにお金が必要になるかもしれないと思って貯めていたお金を使っていたんですけど、1年間で50万円があっという間になくなって。「全制覇までお金が耐えられないかも」と危機感が生まれて、「どこから節約するか」を考えたとき、無意識的に支出のルーティンになっているもので必要性の低い出費を一つひとつやめていくことにしました。
── 具体的にどんな出費を削っていったのでしょうか。
OLのミカ。さん:最初にやめたのは月1回行っていた1万円のネイルです。私にとって、7年間続けたネイルをやめるのは、かなり苦渋の選択でした。基本的にパソコンを使ったデスクワークなので、キーボードを打つ指先のネイルがかわいければもっと仕事が頑張れると思っていたんです。
「顔をきれいにメイクしたって、鏡を見ない限り自分の目には入らない。それよりも、日常的に目にする爪先をかわいくネイルしたほうが絶対にテンションが上がるよね」って思いながら生きてきたところもあって。それなのにネイルをやめるなんて心にぽっかり穴があくくらいダメージが大きくて、ネイルのない指先に慣れるまでに時間がかかりました。
でも、あんなに大事だったネイルをやめるくらいまで我慢しているんだから、ほかのことも我慢しようという気持ちで乗りきれたと思います。それから、マツエクやひとり外食をやめる、外食の宅配アプリを消す、髪型を黒髪ロングにして前髪だけ伸びたら600円でカット、アクセサリーも時計もやめる、ブランドバッグはメルカリで売って通勤バッグをリュック1つにする、など、思いつく節約はすべて実行しました。
毎回カードの支払いを無事に乗りきったときには、ホッと安心すると同時に、すっきりするというか、気持ちが整うような感覚でした。とはいえ、支払いが終わるやいなや次の旅行を予約するので、その繰り返しで。先にお金を使ってしまっているから、節約せざるを得ないんです。5年で全制覇してからも、新しくオープンした星野リゾートに行くのはもはやライフワークなので、今もその生活は続いています(笑)。
今回の全制覇の経験を通してわかったことがあります。それは、自分の見た目や外食など、周囲からどう見られるかとか、つい楽なほうに流れる無意識のルーティンより、優先すべき大事なものがあったということ。心の底から「やりたい!!」と思うことにお金をかけたほうが結局、後悔しないんですよね。それをしみじみ実感しました。
取材・文:たかなしまき 写真:OLのミカ。