6月に大腸憩室出血で救急搬送され、緊急手術を行っていた俳優の柏原収史さん。まだ40代、これまで特に異常もなかったし大丈夫だろうと思っていた柏原さんが手術の間際に聞いたのは、「万が一の覚悟をしてください」という耳を疑う言葉でした。
兄が告げられた「万が一の覚悟をしてください」

── 2026年6月に大腸憩室出血で緊急手術をされたそうですね。今はお仕事にも復帰されていますが、当時はかなり危険な状態だったそうで…。
柏原さん:今まで俳優としてドラマなどで、「万が一の場合の覚悟をしてください」というセリフを言ったり言われたりしてきましたが、まさか兄が僕のことでそのセリフを言われているのを聞くとは思いませんでした。もしかしたら次の日のネットニュースで「柏原収史47歳の訃報」が流れるのかもしれないと覚悟しましたよ。
── いったい何があったのでしょうか?
柏原さん:大腸にある憩室がふくらみすぎて憩室内の血管が破れ、大腸内に出血を起こす大腸憩室出血という病気になりました。救急車で運ばれる2日前に大量に下血をしたのですが、大腸カメラ検査をしたばかりということもあり、きっと大丈夫だと思い放置していました。しかし、大腸の中では出血が続いていたようで、2日後の仕事中に再び下血して起き上がれなくなってしまい救急車で運ばれたんです。
具合の悪さを自覚したのはそのときで、それまでは腹痛も貧血のような症状もほとんどありませんでした。でも、病院について検査をしてみると、腸のなかで医師も驚くほどの量、2リットル近い出血をしていたそう。出血箇所が特定できないくらい、腸のなかが血でパンパンでした。
── そのような状態でも、ギリギリまで症状が乏しかったんですね。
柏原さん:なので僕もそんなに深刻だと、そのときまで気がつきませんでした。命に関わるなんて、夢にも思っていなかったです。検査結果を見た医師たちが輸血の準備をバタバタと始めたのを見て、「もしかしてヤバいのかも…」と思うのと同時に意識がぼんやりして、手足が冷たくなってきて…。
視界も徐々に狭まっていくなかで耳だけはしっかりと聞こえていて、そのときにさっきの「万が一の場合の覚悟をしてください」というセリフが聞こえました。おそらく医師や駆けつけてくれた兄は僕が意識を失っていると思っていて、聞こえているとは気づいていなかったと思います。
下血が止まらず輸血は3600ccにも及んだ
── それはかなり怖かったですよね。
柏原さん:「もしかしたら僕は今日ここで死ぬのかもしれない」と思いましたね。兄が妹や母が来るまでの間、ずっと手を握ってくれたりおでこに手を当てたりしてくれて、とても安心したのを覚えています。家族が到着してすぐに手術室に移動したのですが、妹は手術中ずっと「収史が死んでしまうかもしれない」と泣いていたようです。
── 手術は止血のための手術だったのでしょうか?
柏原さん:そうです。部分麻酔だったため意識があるなか、輸血をしながら手術が行われました。医師がカテーテルを腸に入れて止血をしてくださるのですが、とにかく出血がひどく、血の海のなかで治療をされていたそうです。輸血は全部で3600ccだったと後で聞きました。
実は病院に着いてからも下血は止まっておらず、手術前に大きなオムツを履かされたんです。オムツに慣れていないので、最初はオムツに出すのは抵抗があって我慢していたのですが、医師たちから「とにかく血を出してください」と言われて。手術前から腹痛がひどくなり、オムツに出すと痛さが軽減したので、途中からは羞恥心がなくなりました。
── 手術は無事に終わったのでしょうか?
柏原さん:90分ほどかかりましたが成功しました。難しい手術だったそうですが、運よく救急にベテランの医師がいたのがよかったと。運ばれるのがあと1時間遅かったら本当に危なかったと言われ、下血から2日間も放置したことを後悔しました。
「まだ若い」と思いこまず異常があったら病院へ

── とりあえず命の危機は脱してよかったです。
柏原さん:手術が終わったのは夜中の24時半くらいだったのですが、朝まではかなりしんどかったです。止血はできたものの、腸に溜まっていた血がまだ出続けていて、すぐにオムツがひたひたになってしまって。そのたびに交換してもらうのですが、朝までの間に10回くらいナースコールをしたと思います。
痛みもまだありましたし、変な汗もかいて、「ここで寝たら死んでしまうのでは…」と、夜中は不安な気持ちが強かったです。手術から3日間は高度治療室にいたのですが、トイレに行けるようになってからも血がまだどのくらい出ているかを看護師に毎回報告していました。
── その後、一般病棟に移ってからは順調でしたか?
柏原さん:手術から8日後に退院することができましたが、止血ができれば予後がいい病気なので回復は順調でした。退院してから一度病院に行きましたが、医師からも「もう大丈夫」と言ってもらえました。
大腸憩室出血をした明確な原因はわかっていませんが、医師からはストレス、お酒、運動不足などを指摘されました。血圧が高いため動脈が劣化していて、傷ついて出血した可能性もあるそうです。そのため退院後は生活習慣を改めていますが、どうしても毎日飲んでいるほど大好きなお酒だけは簡単にやめられず…。1杯目をノンアルコールビールに変える、強いお酒はやめて焼酎を飲むときはロックにせず水割りにするなど、胃腸に負担が少ない飲み方を心がけています。
── いきなり断酒は難しいですが、工夫をされているのですね。今回の経験をご自身のなかでどのように受け止めていますか?
柏原さん:今回は持病などで通院しているなかで起きたことではなく、突然の出来事でした。大腸憩室出血という病気も知らなかったし痛みもなかったのに、あと1時間遅ければ本当に危なかったなんて…。人はこんなに簡単に亡くなってしまうかもしれないのだと思い知らされました。47歳はまだまだ若いと思っていましたが、安心しすぎはよくないなと。
せっかく助けていただいた命なので今後も大切にしていきたいと思いましたし、みなさんにも下血など体に異常があったときは、年齢関係なくすぐに病院に行ってほしいと今回のことで思いました。
取材・文:酒井明子 写真:柏原収史