「医師が兄に『万が一のことも覚悟してください』と」。今年6月に大腸憩室出血で緊急手術をした俳優の柏原収史さん。なんの前触れもなく大量の下血があり、判断に迷った柏原さんが相談したのがAIでした。しかし、その判断を後々、後悔することになります。
便器が真っ赤に染まるほどの下血

── 2026年6月に大腸憩室出血で緊急手術をされ、一時はご家族も覚悟するくらいかなり危ない状況だったそうですね。
柏原さん:そうなんです。実をいうともっと早くに病院に行っていればここまでひどくはならなかったのかもしれませんが、初期段階でAIに惑わされてしまったのがよくなかったのかもしれません。
異変が起きたのは5月31日の朝で、トイレの便器が真っ赤に染まるくらいの下血が突然起きました。便座の裏が真っ赤に汚れてしまうほどの血の量でしたが、お腹が痛いなどの予兆はまったくなくて。ふつうにトイレに行っただけだったので、予想外のことにとても驚きました。
── それはさぞかしびっくりされたでしょうね。腹痛もなかったのは意外です。
柏原さん:まったくありませんでした。ただ、その量の血を見たらやはり不安になってしまい、とりあえず横になりながらAIに相談することにしました。僕は病気に限らず日常からAIにいろいろ聞くことが多く、このときも軽い気持ちでいつものように聞いてみたんです。
── AIの回答はどうでしたか?
柏原さん:実は3月に下血というほどではないですが、トイレットペーパーに血がついたことがあり、4月に大腸カメラ検査をしたばかりだったんです。そのときの診断結果は異常なし。大腸の外側に憩室と呼ばれる袋のようなポケットがあることがあとでわかりました。ただ、憩室は加齢や生活習慣でできるため、あること自体は特に珍しいことではなく、炎症を起こしていたわけではなかったため、異常なしという診断結果は正しく、おそらく痔などで血が出たのではないかということでした。
それで、そのことを踏まえてAIに伝えたところ「1か月前に大腸カメラ検査で異常がなかったのであれば、大きな病気の可能性は少ない。おそらく痔ではないか」という回答があり、一度は安心したんです。
「AI相談」で軽傷だと自己判断してしまった
── AIの結果もですが、そんなに直近で検査をされていたら安心してしまいますよね。そこからも下血は続いたのでしょうか?
柏原さん:最初の下血から40分くらいして再び下血して、それが3〜4回続きました。それも都度、トイレを掃除しなければいけないほどの血の量です。それで、これはちょっとまずいのではと思い、もう一度AIに相談しました。
すると、字面の血相が変わるというか、「そこまで下血するのであればちょっと話が違います」と、AIが焦り出したのが感じとれました。そのときに大腸憩室出血の可能性をAIが提示してくれたので調べてみたんです。すると、軽ければ自然に出血は止まるか内視鏡で止血できると書いてあったので、緊急性はなさそうだと自己判断してしまったんです。
── 大腸憩室出血とはそもそもどのような病気なのでしょうか?
柏原さん:大腸にある憩室がふくらみすぎて憩室内の血管が破れ、大腸内に出血を起こす病気です。腹痛などの症状はなく突然、下血するようですね。軽度であれば自然に血が止まることもあるし、出血が続くようであれば症状の重さによって止血のための治療が行われます。
僕自身、そのときはそんなにひどいと思っていなかったし、4月の大腸検査で異常なしだったので大腸がんの可能性も低そうだと勝手に思い込んでしまって。最終的に7回下血しましたが、仕事が忙しかったし、夕方には落ち着いてきたため、そのまま病院には行きませんでした。
── 下血は落ち着いたんですね。
柏原さん:その日の夕方から翌日にかけては下血はなかったです。体質的に貧血になりづらかったのか、かなり出血したのに立ちくらみもありませんでした。ただ、AIの助言に従い晩酌はやめ、なるべくものを食べずに消化のいい食生活を心がけました。
あと1時間遅かったら本当に危なかった

── 一度は落ち着いた体調ですが、そこから異変がまた起きたのですか?
柏原さん:翌々日の6月2日に自宅のスタジオで歌手の天野なつさんとレコーディングをしていたのですが、19時半ころにまた下血してしまいました。それでもまだ体は元気だったのですが、念のために少し横になり事情を話すと、天野さんが「救急車を呼びましょう」と。最初は僕もおおげさだと思ったのですが、10分後に再び下血をした際に初めて立ちくらみを感じました。ちょっと立っていると危ない感じというか。
── 前回よりも症状がひどくなっていますね。
柏原さん:それを見た天野さんが「今ここで救急車を呼ばずに何かあったら、私は絶対後悔するので呼びましょう」と力強く説得してくれました。そこまでいうならと念のためAIに聞くと、「病院に行くか悩んでいるなら、消防庁救急相談センターに連絡をしたほうがいい」と。連絡をしてみたところ、「すぐに救急車を向かわせる」と言われたんです。
でも実は、この時点でもまだ僕は救急車を呼ぶなんて大げさだと思っていました。立ちくらみはするものの歩くことはできたので、救急車が来るまでの間に入院することになった場合に備えて念のための着替えなどの準備をしていたくらいです。でも、そこから急激に具合が悪くなり、救急車が来るころには立っていられなくなってしまい、玄関で横たわっていました。
── 天野さんの説得がなかったら本当に危なかったですね。
柏原さん:命の恩人ですね、天野さんは。その後、病院で手術をすることになりましたが、駆けつけてくれた兄は医師から「万が一のことも覚悟してください」と言われたそうです。腸は出血場所が探せないほど血がパンパンで、輸血も3600ccを超えました。あと1時間本当に遅かったら危なかったそうです。
今でもこんなことならばもっと早く病院に行くべきだったと後悔しています。AIは便利なので今でもよく使いますが、今回はそれにより判断を誤ってしまいました。説得して救急車を呼んでくれた天野さんには、本当に感謝しています。
取材・文:酒井明子 写真:柏原収史