2019.05.09

叱らない育児のカン違い「それじゃ子どもがダメになる!」

education201905-1

尾木ママの愛称で知られる教育評論家の尾木直樹さんや、アドラー心理学を応用した「叱らない育児」に関する本が近年多数出版されています。

しかし、中には「叱らない育児」ということばだけが独り歩きして、レストランや病院で子どもが大騒ぎしてもまったく注意しなかったり、指摘されると「うちは叱らない方針ですから!」と言い返したりする親もいて、度々問題になっているといいます。

今回は、本来の「叱らない育児・子育て」の意味と、間違った「叱らない育児」が子どもに与えるかもしれない悪影響について考えてみます。

 

そもそも、親が子どもを「叱る」のは悪いこと?


「叱らない子育て」という言葉が広まりだしたのはこの10年ほど、2010年頃からのことですが、昭和の時代にも「放任主義」「のびのび子育て」などの言葉が流行したことがあります。

 

いつの時代もガミガミ叱らず、子どもらしく育てることは親の願いの1つかもしれません。

 

その反面、周囲に迷惑をかけること、マナーやルールに反することについては、しっかり叱るのも親の役目だとほとんどの人は考えているはず。

 

「叱らない育児」がほんとうに良いのなら、親が子どもを叱るのは悪いことなのでしょうか?

 

間違った「叱らない育児」で起こる事態とは


実は、尾木直樹さんの著書をはじめ「叱らない育児・子育て」というタイトルの本は、いずれも「子どもが何をしてもさせるがままでよい」とは書いていません。

 

今回、幼稚園以上のお子さんを持つ十数人のママたちに、

 

  • 周りに叱らない育児を実践しているママやパパはいますか?
  • そのお子さんはどのような様子ですか?

 

とアンケートを取ってみたところ、実際に「叱らない育児」をしている人が周囲にいたのは1人だけという結果になりました。

 

話を聞いてみると、

 

「当時4歳で幼稚園に通っていたとき、ママが”うちは叱らない育児をしている”と話していた子がいます。ある日、その子が園で飼っていたインコを棒で強くつついているのを見たので止めたのですが、面白がって繰り返すので、真剣にダメ!と言ったところ、泣いてしまったんです。かわいそうだけど、分かってくれたんだな…と思っていたら、ママから抗議されて。やさしく言い聞かせればわかるのに叱るなんてと、こんこんと育児論を述べられましたが、お子さん、何回言い聞かせてもダメだったんですよ」

 

また、別のママは、

「知り合いの中にはいませんが、たまにレストランで子どもたちが注文していないドリンクバーのボタンを押したり駐車場でおいかけっこしたりしても、おしゃべりに夢中になって見向きもしないママ軍団がいますよね。お店の人が見かねて声をかけたら、うちは放任主義なんで!と言い放っていて驚きました」

と話します。

 

もともとの「叱らない育児」で言われているのは、子どもがいけないことをした時に叱るなという意味ではなく、

「生活習慣や苦手なことは、叱るより工夫や励ましで克服しよう」

「できていないことばかり叱るのではなく、できていることにも目を向けよう」

というもの。

 

それを「何をしても叱らなくていい」と勘違いしてしまうと、目先はラクかもしれませんが、将来的に善悪の判断やルールを守ることが身につかず一番困るのは子ども自身。そして、親も「ちゃんと必要な時に叱っていれば…」と悔やむのではないでしょうか。

 

education201905-2

 

叱ると怒るは違う。また「叱らない=教えない」ではない


何がよくて何がよくないかを子どもに伝えるには、まずは親の姿を見せることが一番大切です。

 

でも、子どもの毎日はそれだけでは間に合わないほど、初めて出会うモノや人・状況の連続。いいのか悪いのか分からないままやってしまうことや、悪いと知っていてもついやってしまうことがきっとたくさんあるはずです。

 

たとえば、よその家の庭に咲く花を勝手に摘んでしまったり、初めて友だちとケンカして思わずモノを投げつけてしまったり。

 

そんなときに、「これはいけないことだった」と分からせて、「いけないことをしたら謝り、自分がしたことの責任を取る」という行動をくりかえし教えることがしつけであり、叱ることですよね。

 

ただしその時は、大声で怒鳴ったり親の感情をぶつけたりしない…というのが本来の「叱らない子育て」の考え方。

 

「この子のせいでやっかいな状況に対処しなきゃいけない」という腹立ちや、他人から「しつけのなっていない親だ」と思われたくないという焦り、何回言わせるのというイライラといった感情を子どもにぶつけてしまうと「叱っている」のではなく「怒っている」状態になってしまいます。

 

また、まったく叱らないままでは、子どもに「何がいけないことか」「いけないことをしたらどうするか」を教えないことになり、貴重な学びのチャンスを奪ってしまいかねません。

 

「叱らない」が「教えない」になってしまわないように…ということですね。

 

まとめ


筆者個人的には、「発展途上で、まだできないことに対して怒る」「気持ちを考えず頭ごなしに叱る」「叩いていうことを聞かせる」「叱りすぎ」などは良くないけれど、普段の生活でいけないことをしたら叱るのはもちろん、たまには「お母さん、本当にそれはイヤ!」と感情を出して怒ってもいいと思っています。

 

子どもの気持ちに寄り添わず、結果だけ見て叱ってばかりでは親子ともに安らげないですし、しっかり考えて叱るのはエネルギーも使うので、いっそ叱らずに済ませたい日もあります。

 

それでも「叱らない育児」という言葉で思考停止してしまい、子どもに大切なことを教えそびれることのないようにだけは気をつけていきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考:書籍『叱らない子育て』尾木直樹 著 主婦と生活社

書籍『叱らない子育て: アドラーが教える親子の関係が子どもを勇気づける!だからやる気が育つ!』岸見 一郎 著 学研パブリッシング

 

 

高谷 みえこ

ライター歴15年。大手企業サイトなどで執筆を行う。得意分野は女性・主婦向けの記事。育児ポータルサイトでは新米ママのお悩み相談コーナーで回答者を務めた実績を持つ。