現在、アメリカで暮らすダルビッシュ聖子さんは、レスリングでのアスリート経験を活かして、夫でメジャーリーガーのダルビッシュ有選手のサポートを献身的に行っています。3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の「侍ジャパン」のメンバーにも選出された夫を支えながら、5人の母親として、多忙な毎日を送っているそうですが──。クスッと笑える、夫婦間のほほえましいエピソードについて話してくれました(全3回中の1回)。

「5人目にしてやっとわかった」って

── オフシーズン中は、旦那さんは家事や子育てにどのように関わっていますか?

 

ダルビッシュ聖子さん:去年5人目が生まれて、これまでも主人なりにしてくれていましたが、夫からも「もっとママと同じ視点から育児をしていかないとね」と言ってくれました。お互い冗談を交えて「5人目にしてやっと分かったね!」と、笑い合いました。

ユニフォームに身を包んだ夫のダルビッシュ有選手とダルビッシュ聖子さんが肩を寄せ合う爽やかカップルショット

── 逆に言うとこれまで何かを頼んだことはなかったんですか?

 

ダルビッシュ聖子さん:うーん、特には(笑)。

 

── それがまず凄すぎます!

 

ダルビッシュ聖子さん:子どもが3人くらいのときは、自分的には余裕だったんです。きっと、体力があったからですよね。4人目が生まれたころから「あぁもう無理だ」と思うことが増えて、「これがきつい」と伝えるようにしました。

 

それまでは全然言わなかったんです。でも今、思えばきつくもなかったから言わなかったんでしょうね。

 

今は、「これしてくれると助かるな〜」と言うとすぐわかってくれて、夫はどんどんレベルアップしているように思います。それに、一度頼んだことは覚えていてくれますし、自分からももっと出来ることを提案してくれます。

 

── さすがです!

 

ダルビッシュ聖子さん:帰宅後には、お風呂の準備をしてくれていますし、「ご飯、炊いておいたよ」ということも。ご飯を炊くって、ひとつの作業としたら簡単なことかもしれないんですが、しておいてくれたら助かりますよね。

 

── わかります。食事時にご飯が炊けていないときのショックさといったら…。

 

ダルビッシュ聖子さん:そうそう(笑)!私が食事を作っていたら一番下の赤ちゃんを抱っこしてあやしてくれていますし、基本的にいつも子どもとよく遊んでいますね。

手を繋いで仲睦まじく公園を歩くお子さんたち。上の子が下の子の面倒をよくみてくれるそう

夫婦ゲンカをすると「飲みません」

── 旦那さんのいいところはなんでしょうか。

 

ダルビッシュ聖子さん:何をお願いしても嫌がらないことです。嫌な顔をされたら頼みたくなくなりますよね。「今日これしておいてくれる?」と言ったら、なんでも「いいよ〜」って。それに夫は基本的にたくさん考えてくれるんです。

 

一番下の子を妊娠中にも、「どうやったらママがラクになるかな?」と聞いてくれていました。(部屋の電気が急につく)ほら、今もこれ!電気もつけてくれました。

アメリカのナショナルチームの監督時代のダルビッシュ聖子さん

── おぉ〜素晴らしいです!

 

ダルビッシュ聖子さん:電気はアプリで別室からつけられるんですけど、きっと「ママ、また電気つけてないな」って思ったんでしょうね。

 

私が子どもたちのお世話をしていたら、夫はコーヒーを淹れてくれます。コーヒーは切らしたことがないですね。今飲んでいるこのコーヒーも、朝、夫がUber Eatsで頼んでくれていたスタバのなんですが、すっかり忘れていて今ごろ飲んでいます。

 

── もう夕方ですよ!

 

ダルビッシュ聖子さん:喜んでくれることをしてくれるのに、私がすぐ忘れちゃうんですよね(笑)。コーヒーといえば、この間ケンカした時に夫が用意してくれたコーヒーを飲まずにそのまま置いていたんです。あとから申し訳なく思って、「この間のケンカした時、コーヒー飲まなかったの。」と告白して謝ることも。

 

── ケンカ、するんですか?

 

ダルビッシュ聖子さん:最近はそんなにしないんですけど、ケンカの原因はだいたい決まっていて、私が子どもたちばかりになってしまったときに夫が「もうこちらを気にかけていないんじゃないか」って。

 

逆も然りで、私が「大切に思ってくれていないのかな」と寂しくなるときも。いつも同じ理由でケンカになるんですが、お互いに伝え合って、落ち着いてから「またこの原因だったね」となります。

ダルビッシュ聖子さんのウェディングフォト。純白のドレスに身を包んだご夫婦の手繋ぎショットがおしゃれ!

── ケンカの理由でさえほほえましいです!

 

ダルビッシュ聖子さん:どうなんでしょう。「私たち、もう何年一緒にいるの」って、2人で爆笑ですよ。

 

── 夫婦の時間はどのように過ごしていますか。

 

ダルビッシュ聖子さん:昨日、ゴルフに行ったんです。ちょっとお互い、今までと違う趣味を持ってみようかと。

 

朝、子どもたちを送ってから打ちっぱなしに行ったんですが、到着して「授乳を済ませてから行くから、先に打っていていいよ〜」と言ったら、夫は「今日はママがするんだよ。赤ちゃんのめんどうは見ているから大丈夫」って。

 

そのあと、子どもたちのコンサートがある日だったんですが、私は時間を全然見ないので、しばらくしたら「はい、ママ。時間です」って。マネージャーみたいですよね。それも今すぐ出なきゃいけない時間じゃなくて、赤ちゃんの授乳時間を逆算していて。

 

「車で1回授乳してから行けるよね」って。もう、「ありがとう〜!」でしかないです。

ビーチで愛犬の散歩をするダルビッシュ聖子さん

── 気遣いが素晴らしいですね。

 

ダルビッシュ聖子さん:オフシーズン中には、「ホテルを取ってゆっくりしてきていいよ」と言ってくれるので、先日、ホテルステイを満喫しました。

 

一番下の子は授乳があるので一緒に行きましたが、チェックインして、部屋で映画を見て。食事は部屋で食べて、次の日も目覚ましをかけずに寝て。赤ちゃんはちょくちょく起きますけど、1泊だけでも頭がスッキリしました。

 

家にいると誰かから「ママ〜!ママ〜!」と言われる毎日ですが、それが数時間なかっただけでこんなに違うんですね。

 

私の場合は、海外にいて実家も近くにないのですが、日本に住んでいる方でご実家など頼れる場所がある方は、少し見ていただけるだけでもリフレッシュになるかもしれません。

 

── 素敵です!朝頼んでくれていたというコーヒーを見る目も変わります。

 

ダルビッシュ聖子さん:あはは(笑)。意地を張らないようにします!

 

── 夫婦仲を保つために大切なことはなんですか。

 

ダルビッシュ聖子さん:たくさんあるとは思いますが、お互いに違和感を感じたときに、そのままにしないことです。うちは逐一話すようにしています。話し合うことで相手がどんな人かより知ることもできますしね。

 

私の人生でもありますし、彼の人生でもあるので、お互いの人生を尊重し、嫌な事を我慢するよりも何かあれば話し合い、お互いを幸せにして生きていきたいなと思います。今、こうして、話し合う事ができる関係に感謝しています。

 

PROFILE ダルビッシュ聖子さん

1980年生まれ、神奈川県出身。姉・美憂、兄・徳郁の影響でレスリングを始め、1999年の世界女子レスリング選手権で初優勝を果たす。以降、同大会で00年、01年、03年と4度制覇。カナダカップ、アジア女子選手権、全日本女子オープンレスリング選手権大会などで多数優勝。アメリカのナショナルチームのコーチも務め、現在はアメリカ・サンディエゴ在住、4男1女の母。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/ダルビッシュ聖子