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以前から、世界の中で日本人学生の学力低下が問題になっていましたが、2015年、世界72ヶ国約54万人の15歳を対象に行われた「学習到達度調査(PISA)」(国際学力調査)では、日本は数学で世界5位、科学で2位と過去最高の順位を記録しました。 「リケジョ」等も話題になる今、理科が得意な子に育てるには、何が必要なのでしょうか? 実は、ママたちが簡単に実行できそうなことでも、「理科が好き」「理科が得意」な子に育つ可能性がたくさんあるんです。ぜひ参考にして下さいね。

小学校・中学校での理科の授業の実情


最近の研究報告によると、1970年代の小学校の理科の教科書と2010年代の教科書を比較したところ、以前は「はい・いいえ」で答えられるような問題・疑問が多かったのに対し、最近では「どのような仕組みなのか」「なぜこうなるのか」という問題・疑問が増えているといいます。

 

また、国語や英語・算数などの教科では、どんどん新しい知識や現象が生まれてくるということはあまりありませんが、理科の世界では、生物・宇宙・物理などの分野で次々に新しい発見があったり、以前はこうだと思われていたことが新事実としてひっくり返ったり…ということが起こりえます。

 

ただ、現在、理科の先生を養成するカリキュラムでは、いぜん昔の「はい・いいえ」型に基づいた教え方も残っており、これからの時代に向けて教育現場で求められる内容とのギャップが問題になっていると言われています。

 

また、「ゆとり教育」が改善されたとはいえ、特に公立の学校では授業時間数も限られており、本来は実験などをたくさん取り入れて授業を進めたくても、教科書で知識を整理するのが精いっぱい…という実情も伝えられています。

理科好きな子を育てるシンプルな5つの習慣


「理科は知識の教科(学問)」とよく言われますが、実はこれをカン違いしている人がけっこういるそうです。

 

「とにかく暗記・知識を増やす」のではなく、絶対に必要なのは、ベースとなる「体験」。”ホンモノの体験”をたくさんしたうえで、初めて知識が自分のものになるといいます。

 

では、”ホンモノの体験”って?何をやったらいいの?と思ってしまいますが、これは難しい科学実験をするといったことではなく、とてもシンプルなんです。

1.外で思い切り遊ぶ

中学校の理科(物理的内容)で、「坂道を転がる玉の速度は?」という設問があり、正解した生徒たちに聞き取りを行ったところ、小さいころに体を動かして外遊びをよくしていた子が多かったというデータがあります。

 

その理由として、例えばボール遊びをしていて坂道にボールが転がってしまった時、どんな風に転がっていくか、だんだん早くなって捕まえにくくなっていく様子、軽いボールと重いボールではどう違うか…などを実際に体験しているので、数字だけで考えるよりはっきりイメージすることが可能だからではないかと言われています。

 

虫取りや魚とりなども、付き合うのはちょっと大変ですが、道具を用意して思い切り体験させてあげると、小学校で生き物の身体のしくみを習うときには目を輝かせて取り組む可能性大ですね。

2.料理をする

「料理は身近な科学」ともいわれ、ホットケーキなら熱でタンパク質が変化するしくみを学べますし、瓶に牛乳を入れて振り、バターを作る実験では、工場や研究所で行われる「遠心分離」をやっていることになります。

3.手先を使う遊びや工作

工作が好きな子には、あまった段ボールやラップの芯などを大きな箱に集めておき、好きなだけ工作をさせてあげましょう。 ブロックやレゴなどが好きなら、ぜひ親子で色々作ってみて下さい。自由に作るのもいいですし、いちど見本通りに作って法則やテクニックを覚えると、次々応用が効きます。これも理科・理系に欠かせない考え方ですね。

4.科学館や博物館におでかけ

もちろん科学館や博物館、プラネタリウム、水族館などに行くのは王道ですよね。特におすすめなのは、あえて少し遅めの時間を選び、閉館近くの時間帯に見学すること。人が減ってきて、学芸員さんや飼育員さんの手が空いている時は、普段聞けない話が聞けたり、子どもの疑問を尋ねたりできるチャンスですよ。

5.工場見学

冒頭に紹介した15歳の生徒たちへのアンケート結果で、「将来、科学関連の仕事につきたいですか」という質問に対し、日本では約18%が「はい」と答えています。 全体の平均では「科学関連の仕事をしたい」と思っている子は約25%、科学の成績が良かった国々では42%もいるのに比べると、やや低い人数ですね。

 

小学生に「将来何になりたい?」と聞くと、「スポーツ選手」「パティシエ」「保育士」「芸能人(最近ではYoutuberも増えています)」などと答える子がたくさんいます。これらは日頃テレビや日常生活で触れることの多い職業なので、それを目指す子も多くなっていると考えられます。

 

それに対し、科学関連の仕事は、小さい子にはパッとイメージしにくい面がありますよね。 小さい頃から理系の仕事に親しんだり、イメージがわきやすくなる方法の一つとして、「工場見学」があげられます。製造現場はもちろん、商品の研究開発シーンも映像などで紹介している企業や工場がたくさんありますので、夏休みなどに家族で申し込んでみるのはいかがでしょうか?

子どもが理科に興味を持つ体験を


今回は、理科が好きな子・理科が得意な子に育てるために、パパやママが小さい頃にやっておきたいことをまとめて紹介しました。 「理科が得意な子は、小さい頃から○○していた」の、○○に共通するのは、「ほんものの体験」というキーワードでした。 ただ、子どもには一人ひとり好みや性格・向き不向きがありますので、今回紹介したことさえすれば誰でも理科でいい成績が取れる!というわけではありません。 しかし、理科は本来、身の周りの出来事がどうして起こるのか、どういう仕組みになっているのかなどを知り、解き明かしていく学問です。将来、何を専門に勉強しても、どんな仕事についても、理科的な考え方ができることは人生において大きなプラスになるはず。ぜひ親子で楽しみながら実践してみて下さいね。

取材・文/高谷みえこ

参考:NIER国際教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html#PISA2015

日本科学教育学会研究会「近年の小学校理科における疑問の傾向〈2〉」http://www.jsse.jp/~kenkyu/201429/20152905_31-36.pdf