コロナ禍でさまざまなイベントが制限されるなか、女性を中心に人気を集めているアフタヌーンティーが話題となっています。「ヌン活」とも呼ばれ、綺麗にお皿に盛られたスイーツなどがSNS映えするとあってファンも多いアフタヌーンティーの人気の理由に迫ります。

アフタヌーンティーにも昭和レトロブームの波が

昭和レトロをテーマにした「レトロアフタヌーンティー」 写真提供/ハイアット リージェンシー 東京

 

ハイアット リージェンシー 東京では415日から6月30日までの間、昭和レトロをテーマにした「レトロアフタヌーンティー」を提供しています。

 

アフタヌーンティー巡りが趣味の若手スタッフがSNS映えするメニューを提供したいと考えたのがきっかけだそうです。

 

昔ながらの喫茶店をイメージし、足つきのデザートカップを使用するなど食器にもこだわっています。プリン・ア・ラ・モードをはじめミニチョコサンデーにホットケーキ。セイボリーにはナポリタンやオムライスなどが提供されます。

アフタヌーンティーで提供されるカラフルなドリンク(左から生姜檸檬サワー、いちごみるく、青い珊瑚礁、クリームソーダ、すみれビアー) 写真提供/ハイアット リージェンシー 東京

 

クリームソーダやいちごみるくなど、色鮮やかな「映え」ドリンクも登場し、昭和レトロの世界観を表現しています。

 

「創業42年のホテルということもあり、長年利用しているお客様のなかには、ホテル内でアフタヌーンティーを提供する「カフェ」を喫茶店と呼ぶ方もいらっしゃいます。レトロブームを牽引する若い世代だけではなく、色々な世代の方にも喜んでいただけるのではと思い、テーマを設定しました」(ハイアット リージェンシー 東京「カフェ」スタッフ)

 

一方、グランド ハイアット 東京では、SDGsへの関心を高めるアフタヌーンティーが登場。

SDGsを意識したアフタヌーンティー「森のグリーンアフタヌーンティー」 写真提供/グランド ハイアット 東京

 

4月16日から6月末まで提供される「森のグリーンアフタヌーンティー」は、SDGs達成に貢献しようと、サステナブルな食材を取り入れています。

 

ケーキには規格に満たない大きさで収穫された規格外のフルーツを使い、チョコレートムースなどには、これまでチョコレートを製造する過程で廃棄されてきたカカオの実を捨てずに、カカオ豆と一緒に作られたチョコレートを使用。

規格外のフルーツやカカオの実を廃棄せず製造されたチョコレートを使ったスイーツ 写真提供/グランド ハイアット 東京

 

ドリンクには、環境や人権など持続可能な農業を実現する「レインフォレスト・アライアンス」認証を受けたコーヒーや、農薬や化学肥料に頼らないオーガニックブランドの紅茶を提供しています。また、売上の一部を森づくりに貢献する緑の募金に寄付するそうです。

 

「新緑の季節ということもあって、森とエコのイメージがあるグリーンを採用しました。サステナブルな食材を積極的に使ったメニューを提供するとともに、環境への意識も高めていただけたらと思っています」(グランド ハイアット 東京 広報部)

コロナ禍でも人気の理由を専門家に聞く

「アフタヌーンティーは5年ほど前から若い世代を中心に再ブームが起きています。それまではマダムの優雅なティータイムというイメージを持たれる方が多かったのですが、SNS、特にInstagramが流行してからは日本だけではなく、イギリスでもアフタヌーンティーを投稿する若者が増えています」

 

そう話すのは本場イギリスでアフタヌーンティーを学び、研究家として自宅サロンでの英国式紅茶教室の運営や執筆活動を行なっている藤枝理子さん。

 

「イギリスは特にマナーに厳しい国なので、以前はホテルなどで写真を撮ることは控えるべきという風潮がありました。SNSが広まってからはスマホでの撮影が解禁ムードになり、若い世代にもアフタヌーンティーの人気が広がっていきました。

スイーツを撮影する女性/PIXTA

 

日本は異文化を取り入れつつ、日本らしさを加えながらアレンジし、独自のカルチャーとすることが上手です。ホテルなどでは見た目にも工夫を凝らしたメニューを考案していまして、まさに「インスタ映え」として人気に火がつきました」

コロナ禍で人気を集める理由 男性人気も

「コロナ禍で人気の理由は、プチ贅沢と癒しがキーワードになっているかと思います。2年前、飲食店への時短営業が要請されていた頃も、実は多くの場所でアフタヌーンティーは継続して提供されていました。夜ではなく、昼の時間帯だということが大きかったと思います」

 

藤枝さんは、アフタヌーンティーが提供される場所にも人気の理由があると分析しています。

 

「ホテルなどですと、ソーシャルディスタンスを取れるという安心感がありますので、感染対策をしながら癒しを求めてお客様が多く入っていました。また、基本的には2時間と時間が制限されていて、24人ほどで楽しむものですので、少人数の信頼できるメンバーで行えるというのも時流とマッチしていると思います。

3段スタンドで提供されるアフタヌーンティー/PIXTA

 

変わらず女性の人気が根強いのですが、夜の時間に接待ができないこともあって、2年前の夏頃からは昼間に商談を兼ねてビジネスマンも見かけるようになりました」

 

また、コロナ禍で進んだテイクアウトの波は、アフタヌーンティーにも波及しているそうです。

 

「店内では、席数も制限されてしまうこともあり、ホテルがテイクアウトのアフタヌーンティーを始めてから一気に広まりました。

 

イギリスでも同じような現象が起きていて、自宅のお庭やコンサバトリー(庭に面したガラス張りのサンルーム)でゆっくりとティータイムを愉しむために、お取り寄せアフタヌーンティーもトレンドになっています」

女性人気の理由は「お姫様願望をくすぐる要素」

「ヌン活」として、アフタヌーンティー巡りをする人もいるなか、藤枝さんはアフタヌーンティーの魅力をこう話します。

 

「アフタヌーンティーにはお姫様願望をくすぐる要素が詰め込まれています。テーブルに並ぶ真っ白いリネン、銀器や陶磁器、小さくて可愛らしいお菓子の数々、キラキラとした宝石箱のような世界観があります。

藤枝さんが自宅で開催している英国式紅茶教室「エルミタージュ」/本人提供

 

イギリスの伝統菓子は素朴なものが多く、紅茶とは合うのですが華やかなイメージとは違います。一方、貴族のサロン文化として発展したアフタヌーンティーは、フランス人シェフを雇い、繊細なお菓子を作らせるのがステイタスシンボルでした。そうして目にも鮮やかなティーフーズが並ぶようになったという経緯があります。

 

サービスを提供する「バトラー」は執事とも訳されますが、ビシッと身なりを整えた方からアテンドされるというシチュエーションも、お姫様願望がくすぐられる要因のひとつです。

 

また、さまざまな種類のセイボリーやペイストリーを少しずつ食べたいという女性の希望も叶えてくれます。優雅にサービスを受けながら大切な人と時間を過ごすひとときが、コロナ禍で癒しの時間を与えてくれるのが人気の理由だと考えています」

 

PROFILE 藤枝理子さん

アフタヌーンティー研究家。大学卒業後、イギリスに紅茶留学。東京初サロン形式の紅茶教室「エルミタージュ」を主宰。テレビや雑誌、大学の講演会や企業コンサルタントとしても活躍中。著書『英国式アフタヌーンティーの世界』(誠文堂新光社)など多数。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/ハイアットリージェンシー東京、グランドハイアット東京、「もしも、エリザベス女王のお茶会に招かれたら?」藤枝理子(清流出版)撮影/南都礼子、PIXTA