子供は腹を立てたとき、いろいろな形で怒りを表現しますが、そのうちのひとつとして「物を投げる」「物を壊す」など、物に当たることがあります。

 

親の立場としては、やはり物を大切に扱う子に育ってほしいですよね。

 

そこで今回は、赤ちゃん時代・幼児期・小学生と、年代別に「物に当たる子供」へのおすすめの対処法を紹介します。

1歳~2歳の子が物に当たったらどう対処する?

赤ちゃんは、心のままに嬉しいときには笑い、怖いときには泣きますが、それを大人に伝えようとはまだ考えていません。

 

それが1歳を過ぎると、だんだん喜怒哀楽の感情を「他人に伝える」という意図を持って表現し始めます。

 

すると、例えばまだ砂場で遊びたいのに帰ろうとしたときなどに、怒ってスコップを地面に投げつける…という行動を取ったりします。

 

親は、そんな場面を見ると「物を粗末にする子に育っては大変」と思い、強めに叱ってしまうのではないででしょうか?

 

でも「何するの!」ときつく叱るのではなく、まずは冷静に首を振るなどして「投げないよ」ということを伝えるのがおすすめです。

 

人に向かって物を投げようとするなど、危険が伴う場合は手を持って止めるなどの対処が必要ですが、その場合も大声や激しいリアクションはせず、できるだけ落ち着いて。

 

特につわりや下の子が生まれた後などでかまってあげられないことが多い時期は、反応を求めてよけいに物を投げるようになる可能性があります。

 

この年代の子が、怒ったときに物を投げる心理でもっとも多いのは、やはり「思いを言葉にできないから物に当たる」というもの。

 

できるだけ、「もっと遊びたかったよね」のように言語化を手伝ってあげるといいですね。

3歳・4歳・5歳・6歳の園児が物に当たる心理と対応

次に、言葉は話せるもののまだまだ感情のコントロールはできない幼児の場合を考えてみます。

 

思い通りにならないときや叱られたときに、手近な物を放り投げたり蹴ったりする子供の心理は、「物が投げたい」のではなく、ほかに気持ちのやり場がないだけ…と考えられます。

 

 

気持ちのやり場がないときには、他にも、ひっくり返って大泣きしたり、ママやきょうだいを叩いたり、なかには自分のまつげを抜いてしまうなどの行為に出てしまう子もいますが、物を投げるというのは、「腹が立っても人(自分を含め)を傷つけてはいけない」ということをある程度理解している証拠。

 

ほめてあげてもいいくらいですが、やはり物も大事にしてほしいですよね。

 

怒りの表現方法として理想的なのは、自分の今の気持ちを言葉で言い表して、誰かに共感してもらうことです。この年頃の子にも、引き続き言語化をサポートしてあげたいですね。

 

注意したいのは、せっかく子供が「なぜ怒ったのか」を話し始めたのに、途中で「だったらこうしたらいいのよ」など口を挟んでしまうこと。

 

大人ならすぐ分かる話かもしれませんが、できるだけ「そうか、こうしたいのにうまくできなかったんだね」「嫌だったね」と共感してあげられるようにしましょう。

 

他にも、幼児期に子供が物に当たって困った経験のあるママたちから、改善したときの方法を聞かせてもらいました。

 

「子供がかんしゃくを起こしておもちゃを投げつけたときは、離れた場所から大声で叱ってもあまり効果がなかったです。面倒だけど家事を止めて、抱きしめたり膝の上に座らせたりして、おでこがくっつくほどの距離で”物を投げたら危ないし壊れちゃうかもしれないからママは悲しいな。お話で聞かせてほしい”と目を見て伝えるのが、結局早かったです。100%やめるとはいかないけど、ずいぶん減りましたよ」(Iさん・当時3歳時のママ)

 

「大事にしている三輪車なのに、貸し借りで揉めたり機嫌が悪いときに何度も蹴ってひっくりかえすので、1回隠しちゃったことがあります。けっとばして痛いから逃げちゃったって。すごくしょんぼりしてたので、一緒にごめんねとお手紙を書いて、数日後に帰ってきてくれたことにしました。何回もやると、どうせまた帰ってくると思ってしまうし、それでもまったくこたえない子もいると思いますが、ウチの子はそれでほぼやめたので、一度試してみては」(Mさん・当時4歳のママ)

物に当たる小学生の子、どう話すのが正解?

小学生になると、外では「やってはいけないこと」を守れるようになりますが、家ではなかなかそうはいかないこともまだ多いもの。

 

低学年、特に新一年生は環境の変化でストレスがかかり、学校でがんばった分、家で荒れる子も多いといわれます。

 

宿題が分からなくて鉛筆を噛んだり投げたりする、きょうだいげんかで負けると悔しくて壁を叩くなど、「ウチの子おかしくなっちゃったの!?」と焦ることがあるかもしれません。

 

でも、これまでどおり家では子供に温かく接していて、学校や学童・登下校などで大きなトラブルが確認できないのであれば、ある程度は「よくあること」とゆったり構えて大丈夫です。

 

また、「腹を立てる」「怒る」そのこと自体は自然な感情なので、「怒っちゃダメでしょう」という叱り方は避け、物を投げたり乱暴に扱うことだけを注意したいですね。

 

実際に小学生ママたちのやっていた対処方法をいくつか紹介します。

 

「息子は感情のコントロールが苦手だったので、小学校の先生にも相談し、1階の和室をクールダウンする部屋として整えました。物を置かずカーテンを閉めて、タオルケットにくるまって落ち着けるようにしよう、と子供に話し、興奮して物を投げそうになったらまずそっちに移動するようにしました」(Kさん・小学2年生のママ)

 

高学年になってくると、男子では力が強くなり、場合によっては壁やドアに穴があくことも。

 

思春期には、ホルモンの急激な変化で感情が高ぶったり攻撃的になったりして、自分でも制御できないことがあります。

 

「壊れてもいい物(100円ショップのお皿など)を用意してあえて壊すという方法を時々見かけますが、私はどうしても抵抗があってできませんでした。新聞紙をビリビリに破く、固い粘土をこぶしで押したりこねたり…は、罪悪感が少なくうまくいけばそのまま遊びに転換できておすすめです」(Aさん・小学5年生のママ)

おわりに

最後に、どの年齢のお子さんにも共通の注意点が1つあります。

 

それは「親が物に当たる姿をむやみに見せない」という点。

 

もちろん、育児中に「このままでは暴言や暴力が出てしまうかも」という時に、個室でクッションなどを殴って怒りが静まるのを待つ方法は広く知られており、実際に有効とされています。

 

ただ、その場合、子供の目の前でドアをバタン!と思い切り閉めるのではなく、普通に閉めるようにしましょう。(追ってきた子供が指をはさむなどの危険性もあります。)

 

親だからといって24時間365日平静でいられるわけではありませんが、迷ったら「子供が同じことをしても許せるか」と考えて判断していけると良いですね。

文/高谷みえこ